データ分析

ユーザーローカル伊藤氏が語る、分析への視点[前編]――データは組織の共通言語

記事内容の要約

  • 変化を続けるインターネット環境のもとで、常にユーザー視点でのデータ分析ツールを開発
  • 分析によって可視化されたデータは、組織の共通言語となりうる
  • サービスの開発者は、思い込みを排して、実際のユーザーのニーズがどこにあるのか知ることが必要
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「データで世界を進化させる」という企業理念のもと、ウェブサイトやソーシャルメディアなどのデータ分析ツールを法人向けに開発・提供している株式会社ユーザーローカル(*1)。誰にとっても使いやすいUIや、ひと目で重要なポイントが把握できるビジュアル表現など、そのクオリティーは業界内でも定評がある。

2017年3月には東証マザーズ上場を果たし、ますます勢いに乗る同社を率いるのは、学生のころからウェブサービスやデータ分析ツールを開発してきた伊藤将雄氏だ。現在のようなデータ重視の時代にさきがけ、いち早くデータ分析ツールの開発を進めてきた伊藤氏に、ユーザーローカル設立の経緯や、データが組織にもたらす価値、そして分析ツール開発者の視点から見た、企業のマーケターがおさえておくべきデータ分析の秘訣(ひけつ)について話を聞いた。

学生時代から取り組んでいた、ユーザーデータ分析ツールの開発

――まず、伊藤さんがデータ分析ツールを開発しようと思ったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

伊藤:実は、データ分析ツールの前に、いろいろなサービスの開発を手がけてきたのですが、それがデータの重要性を認識するきっかけでした。初めてサービスをつくったのは大学4年のときです。「みんなの就職活動日記」(*2)というクチコミサイトを立ち上げました。卒業後は出版社を経て、楽天に転職し、モバイルサービスやコミュニティーサービスの開発に関わりました。

これらのサービス開発を通じて、ユーザー視点を持つことと、データに基づいて意思決定することの重要性を実感したんです。そこで大学院に進んで、一から研究することにしました。

――大学院時代にツールの開発も行われていたのですか。

伊藤:そうです。研究のために実験的に開発したのが、「なかのひと」・「うごくひと」(*3)というツールでした。「なかのひと」はウェブサイトでのユーザー分析ツール、「うごくひと」はそのケータイ版で、どちらも無料で提供しました。機能としては、サイトを訪問したユーザーの属する組織名を、IPアドレスを使って示すことができるというものでした。こういうツールがあれば、サイト運営者がユーザーのペルソナをイメージしやすくなって、コンテンツ制作やサービス設計に役立つのではないか、と考えまして。

「なかのひと」「うごくひと2」の画面
「なかのひと」はアクセス元がテキストで表示され、「うごくひと2」はそれらの情報に加え、PVなどもわかるようになっている

――「サービス提供者が、ユーザーを理解するためにツールをつくる」という発想は、現在のビジネスのベースといえそうですね。

伊藤:そのとおりです。それで大学院を修了した後にユーザーローカルを設立して、現在のビジネスにつながる有料のアクセス解析ツール「User Insight」(*4)を開発しました。User Insightは、コンテンツがどのようにユーザーに見られているかをヒートマップ(*5)で可視化するツールです。コンテンツページの閲覧に関して、ユーザーの動きや反応を視覚的にとらえることができるので、よりよいコンテンツ制作やサービス設計の参考にしてもらえると思います。

「User Insight」の画面
「User Insight」を利用すると、どのコンテンツがよく見られているか、ヒートマップで分析できる

――そして、ウェブサイトの解析だけでなく、SNSの分析にも着目されるわけですよね。

伊藤:SNSの分析を始めたそもそものきっかけは、2011年3月11日の震災です。このとき若い世代以外にもSNSが注目され、一般の人々にどんどん利用されていく状況を目の当たりにし、これはやはり、分析の必要があるだろうな、と。それで、SNSマーケティング分析・管理ツールの「Social Insight」(*6)を開発しました。ちょうど日本で「ビッグデータ」という言葉が使われ出したころですね。自分たちがやってきたことはまさに“ビッグデータのビジネス”なんだと再認識したのを覚えています。

その後、企業におけるデジタルマーケティングの重要性がより注目されるようになり、オウンドメディアが増えてきました。その状況を受けて、メディア運営者向けに開発したのが、記事コンテンツ分析ツール「Media Insight」(*7)です。

可視化されたデータは組織の共通言語になる

――時代の流れに合わせて、B2Cサービス・メディア運営者に向けてさまざまな分析ツールを開発してきたわけですが、企業/組織にとって、データ分析にはどのような価値があるとお考えですか。

伊藤:私がデータ分析で特に重視しているのは「データが可視化されること」です。企業では、直接のウェブ担当者以外にも、コンテンツの制作者、システム部門、営業担当者など、さまざまな立場の人がウェブサイトの運営に関わっていますよね。そのように、立場の異なる人たちにとって、“可視化されたデータ”は共通言語となりうるものだと思います。

――だからこそ、データ分析ツールは、専門家ではない人でも理解できる“使いやすさ”や“わかりやすさ”が重要であると?

伊藤:そうです。組織のなかでは、各々が自分の役割や得意な領域で、サービスを成長させようとしています。そのとき、“可視化されたデータ”という共通言語があると、同じ目線で話ができるじゃないですか。特に、ヒートマップのようなグラフィカルなデータは、誰でも直感的にデータが語っていることが理解できるので効果的です。

組織というのは、往々にして個人の力関係などで物事が決まりがちですが、そのときに“可視化されたデータ”という客観的な物差しがあれば、データドリブンな意思決定が可能です。


株式会社ユーザーローカル 代表取締役社長 伊藤将雄氏

自社のサービス改善にも、ツールを分析

――ところで、御社ではツール提供を通じて得たデータをどのように活用しているのでしょうか。

伊藤:ツールのどんな機能がどれだけ使われているか、どんなお客さまがどのように機能を使っているか、また何人で使っているかなどのデータを、細かく分析して機能改善の判断材料にしています。

ただ、解析の画面上にあるデジタルデータだけを判断材料にしているわけではありません。定期的にアンケートも行いますし、今後どのような機能を望んでいるか、どの機能を使う目的で契約しているのかなどのヒアリングもしています。あとは、「なぜユーザーローカルのツールを使わないのか」という理由を知ることも必要なので、ツール利用をやめてしまった方、ほかの分析ツールをメインで使っている方の声などとも組み合わせて、総合的に判断しています。

――定量、定性両方の観点からツールを改善しているということですが、最終的に、機能の追加や削除の判断はどうされているのでしょうか。利用者からはさまざまな要望があると思うのですが。

伊藤:ユーザーの要望は、初心者と長期利用者とで二極化しているんです。使い慣れている方からは「もっと機能がほしい」という要望をいただくものの、それを素直に実現してしまったら、初心者からの「使いにくい」というクレームにつながりかねません。利用データを調べ、使われている機能を確認したうえで、初心者があまり使わない機能はトップ画面に出さないなどのUIの工夫で対応していますね。

――UIの工夫は重要ですね。それ以外で、ツールを設計・開発するうえで心がけていることはありますか。

伊藤:社内で私がよく言うのが、「つくっている側の人間には、見えていないものが多い」ということ。私自身にも言い聞かせています。

人間って、やはり自分の手がけたものに対して甘くなりがちなんです。「きっと受け入れられるはずだ」とか「はやって当然」とか、つい思い込んでしまう。でも実際は、よかれと思って加えた機能なのに、あまり使われないというケースなど、ざらにあります。なので「自分が開発者であるがゆえに、見えていないものがある」と、常に心がけています。そして、自分も含めて、新たなサービスや機能を開発するときには、スタッフ間でレビューし合ったり、ベータ版のチェックを重ねたりしています。

後編では、長年インターネットユーザーの行動データを見てきた立場から、生活者の行動はどう変化してきたか、そしてそれらのデータを自分たちが分析をする際におさえておくべきことについて話を聞く。

この記事の後編を読む

注釈:
(*1)株式会社ユーザーローカル(外部サイト)
(*2)「みんなの就職活動日記」(外部サイト)
(*3)「うごくひと」(外部サイト)
(*4)「User Insight」(外部サイト)
(*5)「ヒートマップ」ユーザーのマウスの動きやクリックなどをウェブページ上で可視化し、ユーザーの興味関心を解析するツール
(*6)「Social Insight」(外部サイト)
(*7)「Media Insight」(外部サイト)

プロフィール

株式会社ユーザーローカル 代表取締役社長 伊藤 将雄氏

新卒で雑誌記者となったのち、楽天で新規事業開発を担当。2002年には「みんなの就職活動日記」を運営する、みんなの就職株式会社代表取締役に就任。その後、早稲田大学大学院でのデータ分析に関する研究をもとに、ユーザーローカルを設立。2008年末からデータ分析事業を行う。

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