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【解説】データ資本主義

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「データ資本主義」とは、データを資本として利益を生み出す経済活動および経済システムを意味する。『日経ビジネス』の特集記事内に初めて登場したキーワードであり、データを核とした新たなビジネスモデルの台頭として、「データ資本主義」は以下のように紹介されている(*1)。

「IoT(モノのインターネット)の進展によって、あらゆるデータが手に入るようになった。株式や通貨のように、取引所を介して流通させる構想も進んでいる。ヒト、モノ、カネに並び、データが企業の資本になる時代がやってきたのだ」

データをヒト・モノ・カネに次ぐ第4の資本とする考え方は、企業のIT活用が進んだ2000年前後からいわれはじめてきた。ただし当時は、データのことを「インサイトを発見し、次の戦略に生かすための材料」と捉えていたのに対し、データ資本主義では「データ自体が商材や投資対象として機能する」としている。

たとえば、2016年3月21日にMIT Technology Reviewに発表された"The Rise of Data Capital"では、データ資本の原則として次の3つを挙げている(*2)。

図 データ資本の3つの原則(編集部作成)

データ資本の3つの原則(MIT Technology Review "The Rise of Data Capital")をもとに編集部にて作成

このようにデータを中心とする経済活動は始まったばかりであり、「データ資本主義」はまだ新しい概念といえる。データが資本となる新しい経済システムの実現には、データを取得するデバイスやセンサーなど機器の開発が必要だが、それ以上に重要なことは、データの売買をスムーズに行うためのルールや場の整備、それにデータを活用できる人材育成などの仕組みづくりだ。データを収集するための機械がいくら進化しても、収集した大量のデータを実際に「資本」として経済活動が展開できなければ、“無駄なログ”で終わってしまう懸念もある。

データ資本主義の経済活動
図 データ資本主義の経済活動

矢印がデータの流れ

以下本稿では、データ資本主義の旗手といわれている企業群と、その実現に向けた課題にフォーカスを当て、データ資本主義の現況について解説する。

データ資本主義にシフトする企業たち

データ資本主義の中心プレーヤーとなる企業・組織は、大きく6つのカテゴリーに分けることができる。

データ資本主義を構成する6つの事業形態
表 データ資本主義を構成する6つの事業形態

(1)自社で膨大な顧客データを持つ企業
これらの企業の多くは、蓄積された膨大なデータを加工し、個人を特定しない形の第三者データを商材とする新たなビジネスを展開している。

(2)ハードウエアやセンサーなどの開発企業
データを収集・格納するハードウエアやセンサーなどを扱うこれらの企業は、ドイツで進められている「インダストリー 4.0」構想(*3)の担い手でもある。日本でも産業用ロボットメーカーのファナックが、米シスコシステムズらと共同で、ものづくり現場におけるシステムのオープン化に取り組んでいる。

(3)IoTによるデータ収集で付加価値向上を目指す企業
センサーなどで収集したデータを活用して、既存ビジネスに新たな付加価値を提供している企業がこのカテゴリーに属す。この分野は、自社製品のメンテナンスにセンサーデータを活用している、建設機器大手のコマツの事例が有名だ。また大阪ガスも、ガスの需要予測のほか、ガスメーター機器の保守点検や修理スピード向上にデータを活用し、顧客満足度向上を実現している。

(4)スマートフォンのアプリやサービスを提供する企業
たとえば、リクルートマーケティングパートナーズが提供する「スタディサプリ」は、受講生のデータをもとに、効率的な学習プログラムの立案や離脱せずにモチベーションを向上させるサポートを実現している。また、一部の学校では授業カリキュラムにも利用されており、将来的には同社の持つ「学習ビッグデータ」を活用した教育プログラムの策定を目指している。

(5)データサイエンティストの育成を支援する企業や事業者
この分野では、データ分析に特化した専門企業やコンサルティングファームのほか、総務省統計局などもデータサイエンス・オンライン講座を展開し、データ活用人材の育成を支援している。

(6)企業間のデータ取引を支援する官庁や企業
来るべきデータ資本主義本格化時代に備え、2016年より政府が主導する情報銀行や、民間企業による日本データ取引所など、官民の両方からデータ取引を行う、新たな取り組みが生まれている。

公正なデータ取引を担保するために

このようにデータを核とした経済活動が活発化するなか、法整備やルールづくりも急ピッチで進められている。

まず、2017年6月6日に公正取引委員会が「巨大企業が市場での支配的な立場を使ってデータを集めていたり、不当にデータを囲い込んだりした場合、独占禁止法を適用する」という指針を発表した(*4)。オンラインサービスの乗り換え時、消費者に不利益をもたらすような契約や、本人の同意なく必要以上の個人情報収集を進める施策を防止することが目的だ。

技術的な課題も指摘されている。2017年1月、Financial Timesに掲載された記事(*5)では、「消費者が企業に自分のデータの活用を委ねるのではなく、自身でデータを更新・管理する仕組みづくりが必要」という提言がされている。「資本となるデータの使用権利は、誰に帰属するのか?」と、データ活用のあり方そのものを問うものであり、今後データ資本主義を推進するうえで大きな議論となりそうだ。

データ資本主義を推進する上での課題とは

2017年5月30日、経済産業省がまとめた「新産業構造ビジョン」では、AIやIoT分野での成長を加速させ、またビッグデータを活用することで労働生産性を2%向上させるという案をまとめている(*6)。少子高齢化で労働人口が減少に向かう日本では、生産性と経済成長に向け、データ活用が大きな鍵を握っているといえるだろう。

その一方で、急激な技術革新に伴い、データ資本主義における経済活動の公正さの担保や、個人情報の権利帰属、データを悪用されないための仕組みづくりなど、法的・技術的に解決すべき課題も多い。新たな経済原則にのっとり、データ利活用の挑戦を続ける企業・組織の事例を通じ、これらの課題が解決されることが望まれている。

【参考記事】
「インダストリー4.0」を日本でも実現する!? データ取引市場の構築を目指すJ-DEXの挑戦

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