データ分析

顧客の“モーメント”をつかむ資生堂の戦略とは[後編]

記事内容の要約

  • それぞれの顧客がタッチポイントにおいて「その瞬間」何を考えているかを捉えることに注力
  • 約30のブランドのキャンペーンを横断的に管理し、顧客との最適なコミュニケーションを実現
  • 今後はドラッグストアの顧客データの統合も視野に
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この記事の前編を読む

ブランド横断型の総合美容サイト「ワタシプラス」を運営する資生堂。同社は、ブランドごとに断片的な顧客体験を提供するのではなく、美容や健康という大きな視点で、顧客や生活者一人ひとりのライフスタイルに応じた体験を提供するしくみを構築している。前編に続き、同社のプライベートDMP導入後の顧客体験向上に向けた取り組みと今後の方向性について、資生堂ジャパン EC事業推進部 EC戦略グループの吉本健二氏と小林篤史氏に話を聞いた。

顧客アプローチの基本は「モーメント」

「ワタシプラス」というオンラインの接点を介した顧客アプローチにおいて大事にしているのは、『モーメント』を捉えることだと吉本氏は語る。

そのモーメントとは「消費者があるページを見ているその瞬間に、何を考えているのかを明らかにすること」だ。これは、「サイトでの行動履歴と過去の購買データをかけ合わせて分析することで、顧客が何を考えているのか推測できるようになる」と吉本氏は語る。

「当社には、ワンランク上の美しさを提案するトータルメイクアップブランド『MAQuillAGE(マキアージュ)』という化粧品ブランドがありますが、たとえばそのブランドサイトを訪れた人がいるとします。その際、ブランドにこだわらずにメイク商品を探しているのか、それともMAQuillAGEのファンとして新製品に関心があるのか、サイト訪問の理由は複数考えられますよね。そこで分析した結果、『MAQuillAGEのファンで、新色の口紅に興味がある』というモーメントが推測できたとしましょう。であれば、その人に喜んでもらえるようなキャンペーン情報を提供するべきですよね」(吉本氏)


資生堂ジャパン EC事業推進部 EC戦略グループ 吉本健二氏

モーメントをつかんだら、一呼吸置いた翌日にメールでアクションを起こす。企業からのアクションは早すぎると監視されているようで気味悪がられ、遅すぎると機会損失につながるからだ。反応がなかったとしても、また別のモーメントをつかんだ時に別のアクションを展開すればよい。「PDCAサイクルを回しながら、常にお客さまに喜んでもらえるアプローチを探しています」と吉本氏と小林氏は口をそろえた。

大規模データ分析で顧客に最適なキャンペーン管理を実現

「ワタシプラス」で、マーケティングを実施しているブランドは30程度あり、顧客の属性や趣味嗜好もそれぞれ異なる。顧客一人ひとりに適したアプローチはどのようになっているのか。

小林氏は「お客さまの好みに関するステータス情報をしっかり管理するようにしています。主に、ブランド別、そしてスキンケアやベースメイク、ポイントメイクといった種類別、ほかにもデバイス別、属性別というようなステータス情報があります」と話す。このデータの総量は膨大なものだが、常に最新の状態にすべく毎日データを更新しているという。

また、吉本氏と小林氏が従事するEC事業はブランドを横断して顧客にアプローチしているが、約30ある各ブランドも独自にキャンペーンを展開している。そのため、EC事業側が顧客とコミュニケーションを行う際には注意が必要だ。


資生堂ジャパン EC事業推進部 EC戦略グループ 小林篤史氏

吉本氏は、「各ブランドが展開しているキャンペーン情報をきちんと管理していないと、期限が過ぎてしまったキャンペーンや、在庫が切れてしまった商品に関するメールを送ってしまうなど、ちぐはぐな顧客対応になりかねません。ですから、商品在庫、サンプル在庫、キャンペーン期限などの制約条件に合致したものを判断した上で、情報を自動配信できる仕組みを整備しました」と話す。

こうしたことから資生堂は、各ブランドが行っているキャンペーン情報と、プライベートDMPで管理しているウェブサイト行動データと顧客データを連動させた施策が展開できるようになった。

ウェブコンテンツのパーソナライゼーションで狙う顧客体験の向上

さらなる顧客体験の向上を目指して現在着手しているのが、ウェブサイト上でのパーソナライズしたコンテンツの出し分けだ。

「DMP内に蓄積された各種データと、リアルタイムのサイト内行動に応じて、適切なコンテンツを提示します」(吉本氏)とのことで、サイトに来た顧客がさまざまなコンテンツを見れば見るほど、その好みや行動に応じて最適なコンテンツが提供されるという。

コンテンツのパーソナライゼーションは「ワタシプラス」と各ブランドサイトを対象としており、来年には一人ひとりに対して、適切なコンテンツを適切なタイミングで提供できるようにする見通しだ。

このようなパーソナライゼーションをさらに進めていくために、データの統合は着々と進んでいるが、オフラインチャネルのデータを完全に統合するにはまだ時間を要する。実際、百貨店内の店舗などのデータは管理できるようになったが、ドラッグストアの購入データの統合はこれからの課題だ。小林氏は、「さらなる顧客体験向上を図るためにも、この問題は解決していきます」と、力強く語った。

データ活用によって、顧客一人ひとりにデジタル・リアルを問わないシームレスな体験を届ける資生堂。多岐に展開されるブランドの価値は、さらなる向上が期待される。

プロフィール

資生堂ジャパン EC事業推進部 EC戦略グループ 小林篤史氏

システム開発会社を経て、大手ポータルサイト運営会社に入社し、レコメンドやデータ可視化システムの企画、データ活用推進業務に従事した後、2015年資生堂ジャパン株式会社入社。DMPを活用した分析や広告配信などに従事。

資生堂ジャパン EC事業推進部 EC戦略グループ 吉本健二氏

英ランカスター大学大学院卒。調査会社、Webコンサルティング会社を経て、2012年株式会社資生堂入社。ワタシプラスのデータ分析、CRM戦略立案/実行、分析環境整備などに従事。

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