マーケティング戦略

パ・リーグを盛り上げるデジタル戦術[後編]――データでファンを獲得せよ

記事内容の要約

  • パ・リーグ6球団のウェブサイトはパシフィックリーグマーケティング株式会社が一括して管理運用し、デジタルマーケティングを推進
  • データ分析により、動画配信メディア「パ・リーグTV」と地上波放送は競合せず、補完関係にあることがわかった
  • データに基づいてファンの可視化をさらに進め、パ・リーグの人気向上のための施策を展開していく

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この記事の前編を読む

プロ野球のパ・リーグ6球団のマーケティングを包括支援するパシフィックリーグマーケティング株式会社。同社は、リーグ主催の全公式戦をインターネット配信する「パ・リーグTV」や、野球ファンの健康増進に向けた歩数計アプリ「パ・リーグウォーク」などのデジタル施策を展開している。

ファンの獲得に向けて、今後どのような取り組みを進めようとしているのか、また、さまざまな施策を進めるなかで取得した顧客データをどのように活用しようとしているのか。同社の展望について話を聞く。

データ活用で見えてきたもの

前編で述べたとおり、パシフィックリーグマーケティング株式会社(以下、PLM)が展開するデジタル施策は大きく3つある。1つ目はパシフィック・リーグ(以下、パ・リーグ)各球団の熱心なファンに向けた「パ・リーグTV」、2つ目は、新たなファン層の開拓に向けた「パ・リーグウォーク」などのアプリ企画・開発、そして3つ目が、パ・リーグ6球団のウェブサイト構築と運用管理だ。

これらの施策から、6球団のウェブサイト運用管理を通じて見えてきたことがあると話すのが、同社のマーケティング室室長、荒井勇気氏だ。

「われわれは、6球団のウェブサイトのアクセスログを収集・分析しています。それを通じて、各球団のウェブマーケティング施策の課題が明確に見えるようになってきました」(荒井氏)

たとえば、ウェブによるキャンペーンを実施した場合で考えてみよう。各球団とも、サイトのレイアウトはほぼ共通しているため、キャンペーンページまでの導線には大差はない。それにもかかわらず、ある球団のキャンペーンのコンバージョンレートが他球団に比べて圧倒的に高ければ、キャンペーンの内容、訴求の仕方が他よりも優れていると判断できる。

パ・リーグ各球団のウェブサイト

提供:パシフィックリーグマーケティング

「このようなデータ分析に基づいてキャンペーンの良否を判定し、ノウハウを6球団で共有することで、全体の施策レベルを底上げできるのです」と、荒井氏は説明を加える。

地上波とインターネット動画配信の相互活用

PLMは、パ・リーグTVで収集したデータの分析を通じて、さまざまな知見を導き出そうとしている。そのなかで判明したことのひとつが、地上波のテレビとパ・リーグTVのようなインターネットの動画配信は、スポーツのライブ中継に関しては視聴者を奪い合う関係にあるわけではなく、共存共栄の関係にあるという点だ。

「パ・リーグTVの視聴傾向をモニタリングした結果、20時54分以降に視聴数が跳ね上がる傾向が強かったのです。つまり、地上波の中継が終了した時点で、パ・リーグTVにアクセスし、試合の続きを観戦したり、ヒーローインタビューを最後まで見ようとしたりするユーザーが多いというわけです。これはパ・リーグTVと地上波がお互いを補完する存在として、ともにパ・リーグを盛り上げていける可能性を示唆するデータです」と、同社のマーケティング室プロデューサー上野友輔氏は語る。

特に20~30代の若い世代が会員の中心であるパ・リーグTVの普及を加速させることができれば、より多くの若い世代をコアなファンとして囲い込める可能性がある。

またパ・リーグTVでは台湾プロ野球と連携して、台湾の有望選手を紹介する番組を配信したことがあり、台湾人の視聴者が多いと予想していたそうだが、予想以上に日本人の視聴者が多かったという。

「台湾人選手が日本で活躍していることでなじみ深いこともあると思いますが、日本のプロ野球ファンにとって、台湾プロ野球のコンテンツは魅力的だったとも考えられます。このように、視聴データを分析していると、意外な発見や気づきがあります。それは、今後のコンテンツづくりに有益なだけではありません。たとえば、どのようなコンテンツに対して、どのエリアのファンからの反応が高かったかを分析すれば、エリアごとに適切な広告を出し分けるといった施策も展開しやすくなるはずです」(荒井氏)

台湾の有望選手を紹介する番組

提供:パシフィックリーグマーケティング

データ活用にかける期待

荒井氏は、今まで取り組んできたデータ分析で得られた知見はあるものの、まだ可視化できてないことも多くあるという。

「基本的な課題として、球場来場者の属性が見えていないことがあります。そのため、パ・リーグ公式戦の集客が順調に伸びている一方で、それがユニーク来場者の純増によるものなのか、リピーターが増えたことによるものなのかがわからないのです」(荒井氏)

また、インターネット配信動画の視聴者についても、分析しきれていない点が多いそうだ。

「パ・リーグTVは、有料のライブ中継のほか、無料で見られるコンテンツ動画も展開しているため、高い視聴実績をあげています。しかし、そのうちの大多数は現状では属性データを取得できないSNS経由なのです。そのため、どんな属性を持った人が、何のコンテンツに興味を持っているかが見えていません」(荒井氏)

ただ、この状況を打破することで、大きな可能性がパ・リーグにはあると荒井氏は考えている。

「プロ野球は、月曜日をのぞいてほぼ毎日試合があります。にもかかわらず、1試合あたり2万5000人以上のファンが、リアルに球場に足を運んでくれているわけです。どんなにビッグなアーティストのコンサートでも、こうはいきませんよね。それを考えると、プロ野球は日本で最も力のあるコンテンツの1つだと思いますし、それによって収集できるデータの持つ可能性も非常に大きいものだと思います」

PLMでは、パ・リーグTVやアプリについても、コンテンツの強化、サービスの拡充を積極的に推し進め、コアファンの囲い込みと、新規ファン層の取り込みに、これからも力を注いでいく。

「パ・リーグを盛り上げるためにも、やるべきことはまだまだあります。それを1つひとつこなしながら、パ・リーグの人気に一層の拍車をかけていきたいと考えています」(荒井氏)

プロフィール

パシフィックリーグマーケティング株式会社マーケティング室室長 荒井 勇気氏

大手インターネットサービス会社企画営業職を経て、2015年にパシフィックリーグマーケティング入社。同社がパ・リーグ6球団と行うマーケティング活動全般を、デジタル/オフライン、国内/海外にかかわらず現場責任者として遂行している。

パシフィックリーグマーケティング株式会社マーケティング室プロデューサー 上野 友輔氏

銀行勤務を経て、ウェブ制作会社にて球団公式サイトの試合コンテンツ制作に従事。2015年にパシフィックリーグマーケティングに加入し、コンテンツ領域を統括しつつ、海外向けプロモーションも担当。

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