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【解説】サーキュラーエコノミー

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EUで進む新しい経済モデルへの流れ

経済活動に欠かせない、石油やレアメタルなど多くの天然資源は、その埋蔵量に限界がある。そのため、経済成長を持続可能なものにするには、資源を消費するだけの現在の経済モデルそのものを変えていかなくてはならない。そのような観点から提唱されているのが、消費された資源を廃棄するだけではなく、回収し、再利用し続けるという循環型経済モデルの「サーキュラーエコノミー」だ。

このサーキュラーエコノミーの取り組みに、特に力を入れているのがヨーロッパである。実際に、欧州連合(EU)の行政府に相当する欧州委員会は2015年12月、EUの成長戦略の枠組みとして「サーキュラーエコノミーパッケージ」を採択した。そのなかで、以下のようなことが述べられている。

EUの欧州委員会が2015年12月に採択したサーキュラーエコノミーパッケージには、次のようなことが書かれている。<br />
「EUにとって持続可能な成長を確実にするためには、我々は我々の資源をより賢く、より持続的な方法で利用しなければならない」、「多くの天然資源に限りがあり、それらを使用していくのに環境的にも経済的にも持続可能な方法を見出さなくてはならない。それらの資源を最適な方法で利用することは、ビジネスの経済的利益でもある」<br />

環境省「平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」より抜粋(*1)

また廃棄物に関しては、EUの共通の目標として

  • 「2030年までに都市廃棄物のリサイクル率65%を達成する」
  • 「2030年までに包装廃棄物のリサイクル率75%を達成する」
  • 「2030年までに埋め立て廃棄量を都市廃棄物の最大10%までに削減する」 (*2)

などの主要な目標値が定められている。

EUの加盟国でもあるオランダはさらに踏み込み、2016年9月に、2050年までに原材料を完全にリサイクル可能なものにしていく方針で、サーキュラーエコノミーを進めることを発表。廃棄処分対象の商品を廃棄するのではなく、利用価値のある原材料として確実に再利用するための分別を進める予算として、最大2700万ユーロを投じるという(*3)。

サーキュラーエコノミーの基本的な考え方は、一般的なリサイクルのように再利用を主眼とするのではなく、国際競争力の向上、新規雇用の創出などの実現もめざすというものだ。実際、オランダ国内では15~84億ユーロのGDP成長と5万4000人の雇用創出が見込まれるとの試算もある(*4)。

サーキュラーエコノミーに関する書籍『Waste to Wealth』を監修したコンサルティングファーム、アクセンチュアは、概念的なサーキュラーエコノミーの考えを、実際のビジネスに活用できるように120社以上の企業を分析した結果に基づいてビジネスモデルに落とし込んだ。それが以下5つである。

  • 100%再生可能な原材料などを活用して、原材料の調達コストを下げるモデル
  • 回収とリサイクルによって、廃棄物の再利用を進めるモデル
  • 製品の修理、アップグレードなどを通じて、製品寿命を延ばすモデル
  • 使用頻度の低い製品について、消費者間での共有や貸し借りを実現するモデル
  • 製品の所有を促す「販売」によってではなく、製品の利用を基準にした「サービスの提供」によって収益をあげるモデル

そしてアクセンチュアでは、このようなサーキュラーエコノミーのビジネスモデルを実践することによる経済効果を「2030年までに4兆5000億ドル(約504兆円)」と試算している(*5)。

サーキュラーエコノミーの背景にあるもの

サーキュラーエコノミーが提唱された背景の1つには、人口増加による資源不足がある。

2050年には世界人口は98億人に達すると予想されており(*6)、資源問題の解決はグローバル経済にとって大きな課題の1つだ。

世界の人口は増加を続け、2050年には98億人に達すると予想されている。

『世界人口白書2014』を基に作成

一方、市場環境における消費者意識の変化も見逃せない。前述した、アクセンチュアによるサーキュラーエコノミーのビジネルモデルの類型にもあるように、シェアリングエコノミーなどの台頭により、消費者側も従来のようにモノを「所有すること」から「共用すること」へと価値観が変わりつつある。

たとえば、UberやAirbnbなどのサービスのように、遊休資産となっている「クルマ」や「家」などの資源を共有することで、資源の消費を抑えているといえるだろう。

あるいは、第4次産業革命で提唱されるようなIoT(モノのインターネット)の取り組みも同様だ。製品や生産ラインの稼働データから、最適なメンテナンス時期を予測し、製品のライフサイクルの長期化によって資源の消費を低減させるだけでなく、メンテナンスサービスや部品交換などの新たな収益機会を生み出すという点で、サーキュラーエコノミーを実現する手段の1つと位置づけることができる。

サーキュラーエコノミーを加速させる「データ」

ビジネスの現場を見渡してみると、すでにサーキュラーエコノミーの実現を行動目標とする企業も現れている。

消費財メーカー大手の英ユニリーバは、2017年1月、2025年までにプラスチック容器をすべて再利用・リサイクル・堆肥化可能にすると発表した(*7)。

またそれだけでなく、世界で使用されているプラスチック容器が、リサイクルされることなく埋め立て廃棄や投棄されていることが問題となっている事態に対処し、新たなプラスチック経済の一環として、業界向けのプラスチック協定を作成するために、2020年までに容器に使われているプラスチック素材の色素成分を公表することや、特にプラスチック製の袋が海へ流れ込むリスクの高い沿岸地域のために、業界全体でプラスチックのリサイクル技術へ投資することなどへの取り組むことも宣言している。

では今後、他の企業がユニリーバのような取り組みを進め、サーキュラーエコノミーを推進していくために必要なものは何だろうか。

先に、アクセンチュアが提唱しているサーキュラーエコノミーによる5つのビジネスモデルを紹介したが、アクセンチュアは同時に、これらを実現するためのテクノロジーとして「モバイル」「M2M」(*8)「クラウド」「ソーシャル」「ビッグデータ・アナリティクス」など10のテクノロジーをあげている。

つまり、サーキュラーエコノミーを実現するために欠かせないものは各種テクノロジーであり、そこで重要性を増していくのが「データ」ということになる。

たとえば、前述したIoTの取り組みでは、発電用のタービンや航空機のジェットエンジンなど産業機械の稼働データを分析して、メンテナンスの予兆の検知モデルを確立し、新たな収益、価値を創出していく。こうした取り組みにおいてAIやビッグデータ解析といったデジタルテクノロジーとともに、「データ」が重要な意味を持つ。

今後、サーキュラーエコノミーを実現し、さらに成熟させていくためには、テクノロジーの整備はもちろん、最適なデータ連携とその活用方法も同時に検討していく必要があるだろう。

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