マーケティング戦略

はじめてでも失敗しない、インフルエンサーマーケティングの極意

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最近、注目されている「インフルエンサーマーケティング」。主にSNSをプラットフォームにして、ターゲット層に訴求するために影響力のある人(インフルエンサー)をメッセージの送り手として起用する手法で、ユーチューバー、インスタグラマーといわれる人々がそこで活躍している。

この新たな手法は現在のマーケティング環境にどんな価値をもたらすのか? 企業の活用事例も徐々に増える中、その現状と課題、可能性について、インフルエンサーマーケティングツール「iCON Suite」を提供するTHECOO株式会社 代表取締役 CEOの平良真人氏、インフルエンサー事業部 iCON Suite担当執行役員 國分隆毅氏に話を聞いた。

日本でのインフルエンサーマーケティング

インフルエンサーマーケティング市場は北米を中心に海外で先行しており、特に米国では幅広い商品カテゴリーにおいてインフルエンサーが活躍している。一方、日本ではTHECOOが事業を始めた2014年頃から徐々に活用されるケースが見られるようになってきた。

「欧米との比較でいうと、日本は3年ほど遅れて広まってきたようにみえます。日本ではユーチューバー人気に加え、Instagramの利用者数も急速に伸びていることから、インフルエンサーマーケティングは企業の注目を集めています」(平良氏)

現在、欧米ではBtoC向けの商品・サービスを提供するさまざまな企業のプロモーションにおいてインフルエンサーが活躍している。一方、日本では、Instagramならファッションやコスメ、YouTubeならゲームアプリ、といったようにインフルエンサーが活用される分野はまだ限られているのが現状だ。

その理由として、多彩なインフルエンサーが存在する欧米と違って、日本ではまだその存在が特定の分野に偏っている点や、企業側がこうした取り組みに対してまだ積極的ではないといった点が挙げられる。平良氏はさらに、企業にインフルエンサーを活用したマーケティング企画を提案する側にも努力の余地があると説明した。

「車が専門でないインフルエンサーであっても、そのファンの中には自動車メーカーにとってアプローチしがいのあるユーザーがいる可能性は大いにあるわけです。そういったことを考慮した企画、コンテンツをわれわれがきちんと考えて、企業に提案していくことも必要だと思っています」

THECOO株式会社 代表取締役 CEO 平良真人氏

THECOO株式会社 代表取締役 CEO 平良真人氏

「インフルエンサー」とはどんな存在か

かつて、子供にとって新しいもの・面白いものの情報源は、クラスの人気者だった。そして「カリスマ○○」がもてはやされる時代を経て、インターネットの利用が広く定着した後「人気ブロガー」が誕生した。呼び方や活躍する場所は違っても、周囲に対して影響力を持つ人というのは常に存在している。

それが今、人とのつながりが広がりやすいソーシャルメディアが生まれ、いつでも情報を発信できるスマートフォンが普及し、多くの人々が言語や国境を越えてコンテンツにアクセスできるようになった。こうした環境の変化によって影響力のスケールが拡大した存在が、現在のソーシャルプラットフォームにおけるインフルエンサーであると平良氏は言う。

企業が起用する「エバンジェリスト」も個人の発信力・影響力に期待した存在ではあるが、エバンジェリストはその人が語る言葉やスキル、ビジネスが注目されるのに対して、インフルエンサーの場合はより「その人自身」が注目の対象であることが大きな違いだ。たとえばコスメ分野で人気が出たインフルエンサーが、ファッションや旅行、恋愛の分野にまでコンテンツの幅を広げたとしても、ファンはそれまでと変わらずに彼(彼女)を支持する。

一方、広告などに起用されるタレントも大きな影響力をもつ存在だが、ファンとのつながりにおける「密度」と「熱量」は、インフルエンサーに比べると低いという。圧倒的に多くの人の目に触れる芸能人だが、「好きでたまらない」という高い熱量を持ったファンが存在する比率は、インフルエンサーの方が高い傾向にあるそうだ。「いいね」やコメントのやりとりから読み取れるファンとの密着度(=エンゲージメント率)にもその差は表れている。

SNSを活用したマーケティングは企業自身が行っているケースも多いが、インフルエンサーの投稿とは、効果と効率性が大きく異なる。10万、100万のフォロワーを持つ企業アカウントはまれだが、インフルエンサーでは珍しくない。また、SNS上で特定の事柄について意図的に「バズを起こす」となるとインフルエンサーにとっても難しいが、本人の魅力で獲得してきたファンに対しては、確実にメッセージが届いて浸透しやすい。

活用の仕方とプランづくりのポイント

インフルエンサーマーケティングは、購買ファネルでいうなら「興味・関心」のフェーズに対して活用するケースをイメージしやすい。実際にそうした事例も多いが、インフルエンサーの活用だけでマーケティングが成り立つわけではない。検索連動型広告やYDN(Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)などと並ぶマーケティング手段の一つであり、それらと同じくマーケティング課題の中で全体の設計にどう組み込んでいくのか、ということが活用のポイントになる。

インフルエンサーの活用は、マーケティング全体の設計の中で考えることが重要

インフルエンサーの活用は、マーケティング全体の設計の中で考えることが重要

「われわれはクライアントに、インフルエンサーマーケティングをやりませんか、とは提案しません。たとえば、ECで多くの新規ユーザーを獲得することが目的ならば、それに適した多くの手段の中でインフルエンサーをどう活用すべきかを考えていきます。もしクライアントのマーケティング戦略にフィットしなければ、他の手法をお勧めする場合もあります」(平良氏)

では、具体的にどのようにプランを立てていけば良いのだろうか。同社が提供する「iCON Suite」は、プランニングや効果分析に役立つ各種情報を提供するインフルエンサーマーケティングツールだ。

同ツールは、YouTube、Instagram、Twitterの3つのプラットフォームを対象に、8000名を超えるインフルエンサーについて、各自が抱えるフォロワーの数、過去1カ月間のエンゲージメント率や投稿内容といった情報を網羅しており、インフルエンサーの情報だけでなく、それぞれのフォロワーのデモグラフィック情報も一覧できることが大きな特徴だ。

「Instagramは詳細なオーディエンスデータを提供しておりません。そこで当社は、Instagramユーザーの投稿内容を独自技術で画像解析することで、性別と年代が推定できるようにしています。また年代でいうと、F1層、M1層といったおおざっぱなユーザーの区切り方は、インフルエンサーマーケティングでは広すぎて使いづらいため、『22~25歳の女性』のようにより細分化したデータで管理しています。Twitterは性別の推定のみですが、投稿内容から頻出ワードを抽出し、インフルエンサーやフォロワーの興味関心事項がわかるようになっています」(國分氏)


THECOO株式会社 インフルエンサー事業部 iCON Suite担当執行役員 國分隆毅氏

インフルエンサーを活用したキャンペーン施策のプランづくりには、このデモグラフィック情報が欠かせない。

「クライアントもしくは広告会社側が、デモグラフィック情報を参考にしながら、キャンペーンのターゲット層と思われるフォロワーを抱えるインフルエンサーをリストアップします。より多くのリーチを希望するならフォロワー数が多い人、逆により深く情報を届けたいならファンとのつながりが深いマイクロインフルエンサー(1万~10万人のファンを持つ人)など、目的に合わせてぴったりなインフルエンサーを探すことができます」(國分氏)

コンテンツ制作にあたっては、クライアントが直接インフルエンサーにコンタクトすることも、THECOOに一括してディレクションおよびキャスティングを依頼することも可能だ。

効果測定の指標には、インフルエンサーの影響力を数値化できるものとして、エンゲージメント率が主に用いられる。起用したインフルエンサーの直近1カ月の平均エンゲージメント率と、企業プロモーションの投稿に対するエンゲージメント率の差が評価のポイントだ。投稿に対するコメントも抽出されるため、プロモーションの評判が良い時・悪い時の理由もコメントの質から推測することが可能だ。

「効果を高めるポイントは、単発施策としてではなく、同じ商材を同じインフルエンサーに繰り返し取り上げてもらうことです。『スポンサードされているからやる』のではなく、『自分が本当に好きなものだから何度も紹介しています』というのがいいですね。同じ商品でも切り口を変えれば別角度から紹介できます。前回はA社の化粧品を紹介したが今回はB社の化粧品を、と趣味嗜好(しこう)がコロコロ変わるのは不自然で、ファンの心も離れてしまいます」(平良氏)

レポート画面のサンプル

インフルエンサーの詳細ページでは、さまざまな数値情報を一覧できる。特にファンの性別や年齢はインフルエンサーを選定する上で重要な情報だ(左)。レポート機能では、起用したインフルエンサーの投稿にどれだけ「いいね」や「コメント」といったエンゲージメントを獲得したかを確認・検証できる

ファンが望むものはインフルエンサーが知っている

インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーとファンとの関係に企業が入り込むものであるだけに、施策を行う際には留意すべき点がある。それは、伝えたいメッセージさえ明確にしたら、あとはコンテンツ制作に関わりすぎないということだ。どうすれば受け入れられるのかは、地道にファンを増やしてきたインフルエンサー自身がもっともよく理解しているからだ。

「クリエーティブをコントロールしたいという企業の考えもわかります。しかし、企業の作りたいものを作るのではなく、その先にいるファンにきちんと受け入れられ、面白いと思ってもらえるコンテンツを届けることが前提であると理解しなくてはいけません」(平良氏)

インフルエンサー自身が面白いと思って作ったものかどうか、いつも見ているファンにはすぐにわかる。そうでないとわかった瞬間、メッセージは逆効果になってしまう。重要なのは、インフルエンサーの手によって、ファンが求める形でメッセージを届けるという構図である。

「コンテンツに対する一般ユーザーの思考や受け止め方は変わってきています。そこに対応できれば企業にとってもアドバンテージとなるはずです」(平良氏)

最近は地方のクライアントからも同社に問い合わせが入り始めたことから、平良氏は「ある程度マーケットが広がり、全国区になりつつある」と見ている。マーケティングの世界において、これまでとは違った発信手段のひとつとして、大きな可能性を持った成長分野であるといえるだろう。

プロフィール

THECOO株式会社 代表取締役 CEO 平良 真人氏

神奈川県生まれ、一橋大学社会学部卒。伊藤忠商事、ドコモAOL、SONYにて営業、マーケティング、ビジネス開発に携わる。 2007年、Google株式会社へ。 2010年からは統括部長として第二広告営業本部を立ち上げ、営業基盤の確立を通して同本部の成長に尽力。

THECOO株式会社 インフルエンサー事業部 iCON Suite担当執行役員 國分 隆毅氏

福島県生まれ、ゴールデンゲート大学大学院卒(理学修士)。Pylon system Inc. TransCosmos America Inc. にて SE、テレマーケティング、オンラインマーケティングに関わる。2006年、Google株式会社へ。 2011年からは統括部長として第二広告営業本部にて直販部門を担当し数多くの中小零細企業のオンラインマーケティングを成功に導き、同本部の成長に貢献。

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