組織づくり・人材育成

「人事×テクノロジー」HR Techは人事の現場をどう変える?[前編]

記事内容の要約

  • 売り手市場と労働力人口減少の影響で、人材採用の難度が上がり、人事関連のテクノロジー(HR Tech)への関心・期待感がふくらむ
  • HR Techは古くから存在するが、現在の流行はSNSを活用したリクルーティングの自動化
  • 欧米と比較した場合、日本の人事の課題はSNSのさらなる広がり
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厚生労働省によると、2017年7月の正社員有効求人倍率(*1)は1.01倍であり、日本の労働市場は、史上まれにみる“売り手市場”のまっただ中にある。また、少子高齢化の影響もあり、労働力人口は減少し続けている。

当然、人材採用の難度は増し、慢性的な人手不足、あるいは若い働き手の不足に悩まされる企業は多い。しかも、優秀な人材ほど他社に奪われる可能性も高い。結果として、人事業務には一層の効率化と戦略性が求められるようになった。

このような状況をうけ、人事業務の課題を解決するテクノロジー、いわゆる「HR Tech」への注目度が高まっている。これまでも人事業務をサポートするITツールは数多くあったが、それらとHR Techはなにが違うのか。また、海外や日本の人事の現場においてHR Techの取り組みはどうなっているのか。

人事・労働市場の調査研究を進める株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所(*2)所長の大久保幸夫氏と、グローバルセンター センター長、村田弘美氏に詳しく話を聞いた。

なぜHR Tech が注目されているのか

──村田さんは、HR Techの世界的な動向について調査されていますが、まずは「HR Techとは何か」をお聞かせください。給与管理システムのような、これまでにもあった人事業務をサポートするITツールとHR Techに違いはあるのでしょうか。

村田弘美(以下、村田):HR Techとは、人事業務のデジタル化・効率化・自動化を実現するテクノロジーの総称です。ですから、以前からある求人サイトや人事管理システムなどのテクノロジーも含めて、人事に役立つすべての技術は「HR Tech」といえます。

──なるほど、HR Tech自体は昔からあったのですね。とすると、なぜいま、HR Techに注目が集まっているのでしょうか? HR Techに対する注目度の高まりは、日本に限らず世界的なトレンドのように思えます。

村田:いま、HR Techに注目が集まっている最大の理由は、データ分析やAIなどの技術進化・発展によって、これまでできなかったことや、開発に多くの手間がかかっていた仕組みが、簡単に実現できるようになったからです。それが、HR Techの普及と注目度を押し上げている要因といえます。


株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所
グローバルセンター センター長 村田弘美氏

欧米で盛んに活用されるSNS

──具体的に、どういったHR Techが流行しているのでしょうか。

村田:まずあげられるのが、SNS領域での活用です。たとえば、SNS上にあるパーソナルデータ(個人の属性データや発言など)をもとに、企業が欲する人材、あるいは転職・キャリアップを望む人材を探し当て、実際の採用へと結びつける──。そんなソーシャルサーチ系サービスが、米国を中心にかなり流行しはじめています。

この類のサービスは、企業側が「こういった人材が欲しい」と入力すると、企業のニーズに適合する人材を数秒でピックアップしてくれるので、採用の現場としては時間とコストを大幅に削減できるのがメリットです。

リクルートワークス研究所が米国の人事責任者に聞いたHR Techの認知度
HRTechの認知度調査の結果では、「ソーシャルネットワーク」「ジョブボード」が1,2位となっている

(出典:リクルートワークス研究所『HR Technology 世界の人事が注目する28の「HRテクノロジー」』)

──たしかにSNS上の膨大なデータを分析すれば、企業が欲する人材を探し当てられそうですね。

村田:はい。ソーシャルサーチ系サービスは3つの面で使えます。SNSにある個人の属性データのチェック、さらにSNS上での活動を確認、そして「つぶやき(発言内容)」の点検・分析です。企業によってどこまでのデータをチェックするかは異なりますが、たとえば、人材に厳格な信頼性を求める金融機関では、すべてのデータを分析するのが一般的です。

──人事採用の面でHR Techが注目されているのはなぜでしょうか。

大久保幸夫(以下、大久保):人材採用が、多くの雑務を伴う非常に手間のかかる仕事だからです。加えて、スピードも重要になります。人事の現場では、人材の採用プロセスを合理化・自動化したいというニーズがかねて強くあり、それがソーシャルサーチをはじめとするHR Techの普及・発展につながっているわけです。

また、リクルーティング面でのHR Techは、求職者側にも使われています。求職者が自分の希望にフィットした転職先候補をリストアップしたり、そのような会社とのコンタクト状況を一括管理したりするためのHR Techも存在します。そうしたテクノロジーも発展したことで、利用が広がっているのです。


株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 所長 大久保幸夫氏

──日本企業のリクルーティングにHRTechが応用されているという話は、あまり聞いたことがないのですが。

村田:ひとつには、人材を探す際に、採用対象者のジョブディスクリプション(*3)を明確に定義していない企業が多いことが理由です。また、より大きな問題として、ソーシャルサーチで使えるパーソナルデータの絶対量が少ないという点が影響しています。Facebookのユーザー情報は非公開であることが多いですし、Twitterでは匿名のアカウントが多いというのが実情です。海外では、LinkedInなどのSNSと連携しているケースもありますが、日本ではLinkedInはそこまで浸透していません。とはいえ、日本の転職市場はかなり活発化していますので、ソーシャルサーチのようなHR Techの活用が一挙に広がる可能性はあると見ています。

データ活用でさらに広がるHR Tech

村田氏によれば、日本ではSNS領域以外でHR Techの活用が始まりつつあるという。それはチャットボットやAIなどによる、人事業務の自動化の流れだ。

たとえば、現時点ですでに、採用応募者からの問い合わせにチャットボットが対応し、応募者が募集の要件を満たしているかどうかを自動で判断、人事担当者につなぎ、面接のスケジュールを組ませるといった仕組みが実用段階にある。こうした仕組みづくりをさらに進め、人事業務の一層の自動化・効率化を図ろうとする動きが見られると、村田氏は指摘する。

さらに、大久保氏によれば、HR Techによるデータの分析で、「人事のパーソナライゼーション」も可能になるというが、それはいったいどういうことか。後編では、そうしたHR Techの可能性について、データ活用の観点から掘り下げていく。

この記事の後編を読む

注釈:
(*1)「有効求人倍率」:有効求職者数に対する有効求人数の比率のこと。1.0を超えると有効求人数が有効求職者数を上回っている
(*2)リクルートワークス研究所(外部サイト)
(*3)「ジョブディスクリプション」:自分が担当する業務の内容、権限の範囲、必要なスキルなどが記載されたドキュメント

プロフィール

株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 所長 大久保 幸夫氏

1983年株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)入社。人材総合サービス事業部企画室長長などを経て1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010年~2012年内閣府参与、2012年人材サービス産業協議会理事就任。

株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 グローバルセンター センター長 村田 弘美氏

1983年株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)入社。総務、人事、広告審査、新規事業開発等のHR関連部門などを経て、1999年に社内研究所としてリクルートワークス研究所の立ち上げに参画。2013年よりグローバルセンター センター長。

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