マーケティング戦略

「安いが低品質」のイメージはデジタルで払拭!――おとなの自動車保険【前編】

記事内容の要約

  • インターネットや電話などで申し込むダイレクト型保険は、「安かろう悪かろう」と思われがち
  • セゾン自動車火災保険は、低価格以外の魅力をドライバーに伝えるために、全社横断で新サービスのプロジェクトを推進
  • 市場調査とマーケティング調査を重ねて、アプリとBluetooth対応デバイスを組み合わせた新しいIoTサービスを提供
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ダイレクト型保険を専業として安価な保険料を特徴に、40代・50代をターゲットにした商品「おとなの自動車保険」を販売するセゾン自動車火災保険では、スマートフォンアプリとBluetooth対応デバイスを活用した新たな事故対応サービスを開始した。保険サービスのIoT化ともいえるこの取り組みのきっかけと狙いについて、担当者に聞いた。

ダイレクト型保険のイメージは“安かろう悪かろう”

ダイレクト型の自動車保険は、保険料が安い代わりに、対面型に比べて事故後の対応に不安がある――。

ダイレクト型の自動車保険に対して抱く世間一般のイメージは、こんなところではないだろうか。

自動車保険は、大きく分けると2種類の販売形態がある。ひとつは従来の対面型と呼ばれるもので、代理店の販売員と実際に会って話しながら、契約を結ぶタイプ。もうひとつはダイレクト型と呼ばれるもので、インターネットだけで契約が完結できるタイプだ。保険業法の改正とインターネットの普及とともに、各社からダイレクト型の商品が登場し、契約者も増えつつあるが、対面型に比べると契約者数の割合はまだまだ少ない。伸び悩む理由の1つには、事故対応に不安をもたれているからだという。

ダイレクト型専業として2011年から「おとなの自動車保険」を販売するセゾン自動車火災保険株式会社も、同様の悩みを抱えていた。同社マーケティング部でマーケティンググループ副長を務める綿貫辰耶氏は、現状を次のように語る。

「私はコールセンターに在籍していた経験がありますが、『通販だと担当者の顔も見えないから、漠然とした不安がある』というお客さまの声をよく聞きました。ダイレクト型は価格の安さを売りにしがちですが、信頼性が大事な保険という商品の場合、それが弱点にもなってしまうわけです」(綿貫氏)


セゾン自動車火災保険 マーケティング部 マーケティンググループ 副長 綿貫辰耶氏

さらに詳細なマーケティング調査も行った結果、「実体がみえない」「事故がないと保険料が無駄になるように感じてしまう」「何をしてくれるのかわからない」という声が得られた。もともと保険は無形商材のため実体がなく、事故を起こさない人にとってはサービスを実感する機会もないため、コストだけかかるというネガティブな感覚につながってしまうのだ。

業界全体の課題解決に向けて全社挙げてのプロジェクトを開始

保険料に見合う価値を認識しづらく、サービスの質にも不安がある――。世間のこうしたイメージを払拭(ふっしょく)するために、同社が「安さ以外に、プラスアルファで提供できる価値はないか」という視点で新しいサービスの検討を開始したのは、2014年11月のことだ。

この取り組みは、マーケティング部だけでなく、商品をつくる商品業務部やコールセンター部門、経営企画部を含め、全社を挙げて進められた。セゾン自動車災害保険にとって、このような試みは初めてのことだったという。

「ダイレクト型保険の市場全体にとっての課題に挑戦するため、プロジェクトには各部門のエース級の人材が集められました。お客さまに対して何ができるのか、という点からアイデアを出し合い、市場調査やニーズ調査なども繰り返して、課題解決へのアプローチを進めました」(綿貫氏)

そして最終的にたどり着いたのが、「実態が見えない『保険』という商品を、身近に感じられるようにする」というコンセプトだった。

「保険という商品でも、お客さまに、私たちと常につながっていると感じてもらうにはどうするか。それを追求し、具現化したのが『つながるボタン』と『つながるアプリ』です」(綿貫氏)

さまざまなアイデアの中からたどりついた“アプリ”+“デバイス”という形態

『つながるボタン』と『つながるアプリ』は、IoTを利用した新しいサービスだ。『つながるボタン』はBluetoothに対応したデバイスで、車内に設置しておくと、強い衝撃を感知したときに自動で同社のサポートセンターへ連絡されるようになっており、すばやい事故対応を可能にする。また、車両故障やトラブルの際にも、ボタンを押せば専門スタッフにすぐ連絡をとることができる。

さらに、『つながるボタン』は加速度センサも搭載しており、専用アプリの『つながるアプリ』と連携させることで、走行中の急ブレーキや急ハンドルなどの情報がアプリに送信され、日々の運転内容を、「運転診断スコア」として可視化してくれる。

これらのサービスのアイデアが出たとき、具体的にどのような形態で顧客にサービス提供するかは議論を重ねたという。「アプリだけでもいいのではないか」「カメラの活用はできないのか」「そもそもスマートフォンを持っていないお客さまもいるのではないか」など、アイデア段階ではさまざまな意見が挙がった。

その後討議を重ね、時代の流れから、「スマートフォンを使うサービスにすること」は早々に決まった。そして、保険会社とつながっている感覚を契約者にもってもらうためには、「実際に目に見えて触れることのできる『モノ』と組み合わせることが重要だ」という点で、プロジェクトメンバーの意見が一致した。さらにマーケティング調査のフィードバックをもとに、今後のサービスの拡張性などを考慮した結果、「アプリとデバイスを組み合わせたサービス」の形に落ち着いたという。

「弊社はダイレクト型自動車保険を扱っており、他社と比較して安価な保険料でご提供するには、人件費を抑えることが重要です。そのため、対面サービスのように人的リソースのかかるものは、新サービスの検討軸には入っていませんでした。そこで実体があり、信頼できて親しみもある保険として、カーライフを楽しみながら保険にも価値を感じるサービスの実現には、デジタルの活用がベストだと考え、スマートフォンの普及率やアプリ利用率なども考慮しながら決定しました」(綿貫氏)

このような背景から生まれた「つながるアプリ」と「つながるボタン」は、2017年7月からの新規契約者または契約更新者のうち、希望者に対して提供が始まった。目新しさもあって、反応も上々だという。

この「つながるアプリ」と「つながるボタン」は、契約者にどのような価値を届けることができるのか。後編では、より詳細なサービス内容とそこから得られたデータ活用の可能性について聞いていく。

この記事の後編を読む

プロフィール

セゾン自動車火災保険株式会社 マーケティング部 マーケティンググループ 副長 綿貫辰耶氏

2011年4月セゾン自動車火災保険株式会社に入社。お客さまサービス部に配属後、コールセンター運営業務に携わる。2015年4月にマーケット企画部(現 マーケティング部)に異動となり、現在に至る。主に「おとなの自動車保険」のサイト全般および「つながるアプリ」の運営に携わる。

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