マーケティング戦略

アプリ×デバイスでダイレクト型保険の価値を高める――おとなの自動車保険【後編】

記事内容の要約

  • アプリとデバイスの連携で、平常時の運転から事故時の対応まで幅広い対応が可能に
  • ドライバーの運転スキルを数値化してアプリで見せることにより、事故防止に貢献
  • デジタル化によってサービスの品質を向上させ、新たな顧客インサイトの発見を目指す
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この記事の前編を読む

「安いが低品質というネガティブなイメージ」、「事故がなければ存在を意識されにくい」という、ダイレクト型保険の弱点を克服するために、アプリとBluetooth対応デバイスを組み合わせた新サービスをはじめたセゾン自動車火災保険。業界に先駆けたこの取り組みは、どのような顧客体験を提供できているのか。さらに、将来どのように広げていこうとしているのか。担当者に話を聞いた。

事故対応をスムーズにすることで顧客体験を向上

スマートフォンにインストールして利用する「つながるアプリ」と、事故や車両トラブル時に押せばすばやく専門スタッフに連絡がとれる「つながるボタン」は、Bluetoothで連携させて利用するサービスだ。具体的には、次のような機能を提供している。


「つながるアプリ」と「つながるボタン」による顧客体験

「どのような機能を提供するかは、カスタマージャーニーマップをもとに、私たちとお客さまとの接点を『契約開始時』『平常時』『事故対応時』『事故対応後』『継続更新』と設定し、それぞれの時点でどのような体験を提供すべきかを検討しました。技術的・リソース的な制約をふまえ、優先順位を付けて取捨選択した結果、今の機能になっています」と、セゾン自動車火災保険 マーケティング部 マーケティンググループ 副長の綿貫辰耶氏は語る。


セゾン自動車火災保険 マーケティング部 マーケティンググループ 副長 綿貫辰耶氏

このサービスで注目すべきは「つながるボタン」の存在だ。単に保険会社への連絡機能ということであれば、アプリ単独でも十分に役目を果たせそうだが、あえて物理的なボタンを提供することには大きな意味がある。たとえばスマートフォンに不慣れな人だとアプリの操作に手間取ることもあり得るが、固定的に設置されたボタンであれば、押すだけで適切な事故対応サービスが受けられる。また、保険サービスにもたれる「実体がなく不安」というマイナス印象も軽減できる。

「このサービスにおいて、『モノ』であることは非常に重要です。ドライバーのなかには、『自分は事故にあわない』と思っている方も多くいますが、そういう方ほど、事故の際にパニックを起こしてしまいがちです。手の届く場所に実際のボタンがあれば、それを押すだけで、当社のスタッフや警備会社につながります。万が一の事態に、容易にすばやくサービスを受けられることで、保険会社に守られていると実感していただけると思っています」(綿貫氏)

つながるボタンは、自動車に大きな衝撃が加わると専門スタッフに自動で連絡できるようになっている。運転者が応答せずにいると、深刻な事態の可能性ありと判断され、同社が契約している警備会社に連絡が行くこともあるという。まさに、保険会社に守られている状態であり、従来の保険にはなかった新しい顧客体験を提供しているといえる。

実際の利用者からのフィードバックによると、「目に見える形でボタンを押してアプリ経由で連絡できるので安心」といった声が多いそうだ。アプリ経由での連絡だと、契約者の契約内容や位置情報も知らされるので、対応もスムーズになり、安心感がより増すという。

平常時も楽しめる機能をアプリに搭載

「つながるアプリ」は、事故の際だけでなく平常時でも契約者との“つながり”を持つための機能を備えている。それが、運転スコアやエコドライブ、走行マップといった、運転を楽しめる機能の提供だ。

運転スコアは、運転のうまさを数値化して示すものだ。ただ「あなたの運転はうまくありません」といわれるだけではドライバーのストレスになるので、「前回の運転と比べ、スムーズになった」「ブレーキの回数が増えた」などを記載し、ゲームのように楽しめるよう、スコアの見せ方やデザインを工夫しているという。

「自動車を日々運転される方なら、これらの機能は楽しんでいただけると思っています。なおかつ、お客さまがご自身の運転を客観的に振り返ることで、事故を未然に防いでいただきたいという狙いもあります」(綿貫氏)

取得データはまず現在のサービスの品質改善に活用

ドライブレポートとして記録される各種走行データは、スマートフォンのネットワークを介してセゾン自動車火災保険のサーバーへと蓄積されている。ただ、これらのデータを他のサービスや商品開発に活用する構想は、これから検討していく段階だという。

「お客さまの走行データは、まず本サービスの質を高めることに活用していきます。たとえばドライバーの年代によって走行の実績がどう違うのか、地域によって走行距離はどの程度異なるのか、本サービスの利用者と非利用者で、運転内容などに違いがあるのかなどのデータは、まずアプリをブラッシュアップするために活用する予定です。本サービスがもっと利用されれば、新たな顧客インサイトを把握できると思うので、そこから他サービスや商品の開発を考えていきたいですね」(綿貫氏)

実際にサービスを展開したことで、具体的な改善点も見えてきた。一例を挙げると、「つながるボタン」以外のBluetooth機器との電波干渉だ。運転中はBluetooth対応のヘッドセットなどが利用されるケースがあるが、その場合電波が干渉して、接続が不安定になることもあるという。これについて綿貫氏は、「実際にやってみて初めて見えた課題」として、今後の品質向上に生かしたい構えだ。

アプリやIoTを活用して保険の可能性をさらに広げる

「つながるアプリ」と「つながるボタン」で、保険業界に新しい風を吹き込んだセゾン自動車火災保険だが、今後はどのような展望を描いているのだろうか。綿貫氏は、もう一歩先にある保険のあり方を語ってくれた。

「事故対応の際、自動車保険はもっといろいろなことができると思っています。新しい形のサービスではありますが、実際のところは、いままで電話で行われてきたことを、アプリとデバイスで肩代わりしているに過ぎません。将来、コールセンターのスタッフが介在せずに、アプリだけで事故対応できるようになれば良いと思っています」(綿貫氏)

ただしアプリだけで事故対応が完結すると、「人が介在することで安心するという『人肌』感が薄れるのでは」という指摘もある。そのバランスを取りつつ、セゾン自動車火災保険では、今後もアプリやデバイス、IoTなどを活用してユーザーの手間を取り除き、安心感あるサポートができるかを考えていくという。

プロフィール

セゾン自動車火災保険株式会社 マーケティング部 マーケティンググループ 副長 綿貫辰耶氏

2011年4月セゾン自動車火災保険株式会社に入社。お客さまサービス部に配属後、コールセンター運営業務に携わる。2015年4月にマーケット企画部(現 マーケティング部)に異動となり、現在に至る。主に「おとなの自動車保険」のサイト全般および「つながるアプリ」の運営に携わる。

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