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【解説】デジタルトランスフォーメーション

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今、テクノロジーの力で新しい価値を創造する企業が注目を集めている。たとえば、Uberは、自社で車両を持たずに「自動車で移動したい人」と「人を運べる空き時間があるタクシーや自家用車」を結びつけるビジネスモデルで、タクシー業界に大きな衝撃を与えた。また「泊まりたい人」と「自宅を留守にする人」をマッチングして民泊を支援するAirbnbは、宿泊サービスそのものを変革しようとしている。

このように、業界における既存ビジネスから脱却して、デジタル技術の活用によって新たな価値を生み出すことを、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation:DX)」と呼ぶ。これはもともと、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したもので、「われわれ人間の生活に何らかの影響を与え、進化し続けるテクノロジーであり、その結果、人々の生活をより良い方向に変化させる」という概念を表している(*1)。

デジタルトランスフォーメーションを理解するにあたり、まずICTの基盤となるプラットフォームの変遷ついておさえておきたい。IT専門調査会社のIDC Japanは、ITプラットフォームには第1プラットフォームから第3プラットフォームまであるとしている。第1のプラットフォームを従来のコンピューターシステムとすると、第2のプラットフォームはクライアント/サーバーシステム、これに続くのがクラウド・ビッグデータ/アナリティクス・ソーシャル技術・モビリティーなどから構成される第3のプラットフォームである。現在は、第2プラットフォームから第3へのシフトが進んでいるといわれている(*2)。

IDCはデジタルトランスフォーメーションを「企業が第3のプラットフォーム技術を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義している。そして、これに投資することは2017年以降5年間のIT市場における成長の大部分を占め、ITサプライヤーの優先事項になると予測している(*3)。

デジタルトランスフォーメーションを構成するテクノロジー

デジタルトランスフォーメーションを正しく理解する上で留意しなくてはいけないのは、単にテクノロジーを導入すれば実現できるというものではないという点だ。テクノロジーはあくまでも手段であり、従来のビジネス手段やビジネルモデルの変革が実現しなければ、デジタルトランスフォーメーションとはいえない。

そのビジネスモデルや生産性の変革を担うのが、イノベーションを促進する「イノベーションアクセラレーター」と呼ばれるIoTや、人工知能(AI)を含む認知システム、ロボティクス、3Dプリンティング、次世代セキュリティーなどだ。最近では、これらのイノベーションアクセラレーターは第3のプラットフォームの上位にくる第4の階層と位置づけられている(*2)。

デジタルトランスフォーメーションの概念図

出典:IDC Japan, Directions 2017 Tokyo

デジタルトランスフォーメーションに対する国内企業の取り組み

さて、日本国内の企業は、デジタルトランスフォーメーションにどのように取り組んでいるのだろうか。

IDC は2017年4月に、国内デジタルフォーメーション成熟度に関するユーザー調査の結果を発表している。同調査は、従業員1000人以上の大規模企業に所属する部長クラス以上、あるいは、予算・企画等の意思決定者である係長クラス以上の533人に対してウェブ調査を実施し、特定のIT環境についてまったく導入していない場合をステージ0(未導入)、導入後の企業の成熟度を、ステージ1(個人依存)、ステージ2(限定的導入)、ステージ3(標準基盤化)、ステージ4(定量的管理)、ステージ5(継続的革新)までの5段階で評価したものだ。

国内デジタルトランスフォーメーションの成熟度ステージ分布

出典:IDC Japan(*5)

この調査の結果、デジタルフォーメーションの成熟度については、国内企業の約半数がステージ3に属している(上図参照)。企業戦略の一環として全社的にデジタルトランスフォーメーションに取り組む企業が増えているものの、その取り組みは短期的かつ従来の効率化が中心であり、革新的な製品やサービスを連続的に創出し、市場に変革をもたらすレベルには至っていないことを示している(*4)。

日本企業のデジタルフォーメーションが停滞している背景については、デジタルを活用してイノベーションを興す人材がいないという指摘もある。実際にその役目を担うCDO(最高デジタル責任者)の重要性に関して、日本学術振興会の安西氏は「CDOは技術と事業を両輪で回して既存組織を変革する象徴だ。デジタル時代の戦略的組織体制の整備には欠かせない」と述べている(*5)。そのCDOを設置している企業は、日本では2016年時点でまだ7%とそれほど高くないのが現状だ(*6)。

とはいえ、三菱ケミカルホールディングスでは、IoTを含む最新、先端技術の探索およびそれら技術の活用や外部機関との連携による事業競争力強化、新規事業の創出を推進するため、2017年4月1日に新たに「先端技術・事業開発室」を設置し、同時にAI・IoT分野を担当するCDOを選任している(*7)。同様の目的で、三井物産でも2017年5月16日付で新たにCDOが選任されている(*8)。

このように、日本企業においてもデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みは、水面下で着実に進んでいる。今後はデジタルトランスフォーメーションの推進に向け、経営的な観点から適切なテクノロジーの組み合わせを判断し、導入から実用までの道筋をつけた上で、それらを使いこなして新たな事業開発へとつなげられる人材の育成・獲得が課題となってくるだろう。

【参考記事】
日本ロレアルがCDOを設置した理由:デジタル時代の顧客中心主義とは[前編]
日本ロレアルがCDOを設置した理由:デジタル時代の顧客中心主義とは[後編]
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