データ分析

論理的なアプローチでビジネスを成功に導く――KGIの考え方

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2017年9月、Yahoo! JAPANは、株式会社ブレインパッド マーケティングプラットフォーム本部副本部長を務める傍ら、多摩大学経営情報学部で准教授を務める佐藤洋行氏を講師に迎えて、データドリブンな発想でビジネスにおける最終目標にアプローチするためのセミナーを実施した。

ビジネスを成功に導くには、最終的に成し遂げたい目標をKGIとして設定し、そこに到達するためにいくつものKPIを達成し続けることが重要だといわれる。しかし、「KGIやKPIが正しく設定できていないケースが非常に多い」とデータ活用のプロフェッショナルである佐藤氏は指摘する。

本記事では佐藤氏の講演内容から、KGI(重要目的達成指標)、KPI(重要業績評価指標)の正しい設定の仕方や、具体的な手法について、要点を紹介していく。

正しいKGI・KPIとは何か

ビジネスにおける最終目標を考えるとき、KGI(重要目的達成指標)、そしてKPI(重要業績評価指標)をきちんと設定できるかどうかは重要な問題だ。

「政府の行った政策を短期的に評価する指標として、日経平均株価がよく用いられます。しかし、これは正しい評価方法とはいえません。なぜなら、日経平均株価は投資家が下した評価の結果であって、政策の是非が分かるものではないからです。このような間違いは、ビジネスの現場でも起きています。たとえば、広告運用成果を表すKPIとして、『CPA』がよく用いられます。それ自体は問題ないのですが、長い期間そのKPIの達成だけを追いかけていると、いつの間にかそれがKGIであるかのように錯覚してしまう人が多いように思います。その結果として、本来のビジネスにおけるゴールの達成がおろそかになる、あるいは意識できていないという本末転倒は、担当者レベルではよく起きていることではないでしょうか」(佐藤氏)

KGIやKPIは慣例的に設定されていることがあり、その指標を追う理由を見直す機会は少ない。「本質的なゴールを達成するための指標はなにか」をきちんと考えてから設計してほしいと佐藤氏は話す。

具体的な設計手順に入る前に、まずは、設定する際に押さえておくべきポイントについて佐藤氏は説明した。

KGIは最終的に達成したい目標を数値で設定する。KPIはKGIとの関係性を明らかにするほか、KGIよりも改善アクションを起こしやすく、もしくは短い期間で測定できる指標がよい

KGI、KPIを設定する際のポイント

「KGIの設定は難しくありません。自分たちが最終的に達成したい目標が何かを考えれば、おのずと『売上高』や『販売数』などに落ち着くと思います。当然のことながら、ビジネスは合理的な判断がされなければいけないので、数値であることが大前提です」

佐藤氏いわく、難しいのは、KPIの設定だという。KPIは、KGIの達成に向けた中間指標だ。そのため、最終的な目標に向けて正しく前進しているか確かめるためには、KGIとのつながりが明らかでなければならない。また同氏は、「持論」と前置きしたうえで、KPIには2つの特徴を持たせるべきだと述べる。

「KPIは、『KGIよりも、短い期間で測定できる指標』であるべきです。そして、『KGIよりも、改善に向けた具体的アクションを起こしやすい指標』であることが望ましいといえます。KPIは、KGI達成に向けた短期的な指標ですから、すみやかに施策を実行し、その結果を短期スパンで評価する必要があります」

そして、KGIやKPIを設計する際に忘れてならないのは「誰のために設定する指標なのか」という点だ。たとえばコンサルティング会社とそのクライアント企業は、必ずしもKGIを共有できるわけではない。コンサルティング会社が「クライアントが1000件の資料請求を獲得できる」ことをKGIとしても、クライアントにとってのゴールは売上高や販売数の達成であり、「資料請求数」は1つの施策に対するKPIにすぎない。

「最終目標を達成するための大前提は、KGIとKPIが正しく設定されていることです。そのためには、『誰にとっての指標なのか』を常に考えてください」

KGIの設計方法

ここからは、具体的なKGIの設計方法について解説する。佐藤氏は、来る東京五輪を題材に、次のような例題を提示した。

「もし自分が日本選手団の強化責任者に任命されて、『東京五輪で良い結果を残せ』と命ぜられたとしたら、どのようなKGIを立てたらよいか考えてみてください」

「良い結果」という漠然とした言葉を、KGIとして数値で設定するわけだが、KGI設計は、3つの手順に従って行う必要がある。それは次のとおりだ。

  1. 誰が、どのような最終目標を設定するか考える
  2. 最重要指標を考える
  3. 最重要制約条件を考える

各手順を詳しくみてみよう。

1. 誰が、どのような最終目標を設定するか
今回の例題において、「よい結果を残せ」というミッションが課せられたのは、選手個人や開催地の東京都ではない。「日本選手団」である。そのため、日本選手団が主体となる最終目標を掲げる必要がある。では日本選手団が掲げるべき目標とはなにか。「日本国民を笑顔にすること」といった抽象的なイメージを思い浮かべがちだが、ここではビジネス的な視点で考えてみよう。

目標達成の主体である日本選手団を強化する立場であれば、「今回の五輪で良い成績を残すために、選手たちをサポートできる環境を最大限整えて、万全の体制で大会に臨みたい」と考えるはずだ。そのためには、資金面などで支援してくれる協賛企業、団体の存在がもっとも重要であり、企業、団体が支援したくなるように目標を掲げる必要がある。

したがって日本選手団として達成するべき最終目標は、「支援団体が喜ぶ結果を出し、今後も資金援助してもらうこと」になる。

2. 最重要指標はなにか
最終目標を掲げたが、その達成に向けて設定すべき最重要指標は何になるか。答えを先に述べると、「メダル獲得数」である。支援団体が資金援助する最大の理由は、宣伝効果が期待できるからだ。そのため、メディア露出に最も貢献できるであろう「メダル獲得数」を最重要指標にするのが望ましい。

一見すると、わざわざステップを踏んで考えるまでもない指標に思える。しかし、注目すべきは、メダル獲得数と宣伝効果の関係性だ。もし、メディアの報道姿勢が、“参加することに意義がある”というものに変わったら、メダル獲得数に価値がなくなり、宣伝効果も薄れるだろう。そうなった場合は、最重要指標を見直さなければならない。

3. 最重要制約条件はなにか
ビジネスの世界において、制約の存在しない目標はありえない。制約条件の多くは、ヒト・モノ・カネだ。今回のケースで考えると、「カネ」が制約条件になりえるだろう。

「ヒト」は、すでに代表候補はおおかた決まっているはずであることから除外できる。「モノ」も、入手しづらい物質や資源などが必要な機会は、スポーツの世界ではほとんどないことから除外される。そのため、選手育成や施設拡充に必要なカネ、つまり『費用』が最重要制約条件となる。

以上を整理すると下記になる。

上記1から3の内容をまとめた図

支援団体が喜ぶ結果を出すためには、1枚でも多くのメダルを獲得すると同時に、制約条件である費用をなるべく抑えることが求められる。つまり、1枚あたりのメダル獲得効率を最大化できたか否かがわかる指標がKGIとなる。

したがって、日本選手団の強化責任者として掲げるKGIは、最重要指標と最重要制約条件の組み合わせとなる分数で表して、「メダル獲得数/費用」とする。このKGIを達成すれば、「支援団体が喜ぶ結果を出し、今後も資金援助してもらうこと」が想定できるだろう。

上記内容をまとめた図

KGIを設定できたあとにすべき重要なことがある。KPIの設定だ。

今回のKGIは2つの指標(メダル獲得数と費用)で構成されていることから、それぞれにアプローチしてKPIを設計する必要がある。後編では、KPIの具体的な設計方法について解説する。

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プロフィール

株式会社ブレインパッド マーケティングプラットフォーム本部 副本部長 佐藤洋行氏

九州大学大学院修了(農学博士)。ブレインパッド入社後、大手通販企業のデータ活用分析プロジェクトにデータサイエンティスト/マネージャーとして参画し、幅広い分野のデータ分析に精通。現在、マーケティングソリューションを提供するマーケティングプラットフォーム本部の副本部長を務める。多摩大学経営学部准教授を兼任。

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