データ分析

論理的なアプローチでビジネスを成功に導く――KPI設計の実践

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この記事の前編を読む

2017年9月、Yahoo! JAPANは、データドリブンな発想でビジネスにおける最終目標にアプローチするためのセミナーを実施。講師には、データ活用のプロフェッショナルである、株式会社ブレインパッド マーケティングプラットフォーム本部副本部長 佐藤洋行氏を迎えた。

前編では、最終目標として設定される「KGI」の考え方と設計手順について説明したが、KGIを達成するためには、中間指標となる複数の「KPI」をクリアしなければならない。そこで後編では、KGIの達成をサポートするために必要なKPIの設計方法を紹介する。

KPI設計はロジックツリーで

「もし自分が東京五輪日本選手団の強化責任者に任命され、『よい成績を残せ』と命ぜられた場合、どのようなKGIを設定するべきか」

この例題に対して、前編では、「メダル獲得数(最重要指標)/費用(最重要制約条件)」という2つの指標で構成されるKGIを設定した。

上記内容をまとめた図

KGIを達成するためには、「メダル獲得数」を最大化させて、「費用」をなるべく抑えられる中間指標、つまりKPIを設定しなければならない。この2つの指標にアプローチするためのKPIは、どのようにして設計するのか。

はじめにKPIを設定する際のポイントを再掲する。

KGIとの関係を明らかにし、KGIよりも改善アクションを短期的かつ具体的に起こせるものが、KPIであるべき

上記のポイントを押さえながら、KPIを設計していくことになるが、まずは、KPIになりそうな要素を見つける必要がある。佐藤氏は「KPIの候補となる要素の洗い出しは、ロジックツリーを使うとスムーズにいきます」とコツを話す。

ロジックツリーには、大きく分けて下記の3種類がある。

  1. Howツリー
  2. 目的達成に向けた必要なアクションを洗い出したい場合に適している。施策の効率と成功率を高めようとするときに用いられる。

  3. Whyツリー
  4. 物事の原因となる要素を網羅したい場合に適している。真の課題を浮かび上がらせることができるため、KGI/KPIの見直しなどに用いられる。

  5. Whatツリー
  6. 物事の構成要素を網羅したい場合に適している。大きな要素を小さな要素に分解できるため、KPIとなる指標の洗い出しなどに用いられる。

今回はKPIとなる指標を策定したいため、Whatツリーを使っていこう。

なお、正しくロジックツリーを使うためには、知っておくべき大事なポイントが2つある。1つは、「複数のパターンを作ってみる」ということだ。1つの考えに固執しないためにも、物事は多面的にとらえたい。もう1つは、「ツリー内でアプローチを変更しない」ということだ。つまりWhatツリーで考えはじめたならば、最後までWhatツリーで考える。よく「ロジックツリーを作りはじめたはいいが、途中で筋道が立たなくなった」ということがある。これは違う種類のロジックツリーをごちゃ混ぜにして作ったことが原因という場合が多いので、注意したい。

KPIとなる要素の洗い出し

それでは実際に、「メダル獲得数/費用」というKGI達成に向けたKPIの候補を洗い出してみよう。まずは、KGIの分母にあたる最重要制約条件の「費用」からだ。

「費用」の構成要素をWhatツリーで分解すると、図1のように展開できる。

図1.最重要制約条件:「費用」の構成要素
展開図の例

Whatツリーをつくるときは、原則的に「同じ階層の要素を、掛け算(もしくは足し算)したら、ひとつ上の階層とイコールになる」と覚えておくと、正しく分解できているかがわかる。図1では、“「費用」=「選手数」×「1名当たりにかかる費用」”となっている。

続いて、KGIの分子にあたる最重要指標である「メダル獲得数」も、Whatツリーで構成要素を分解してみる(図2)。

図2.最重要指標:「メダル獲得数」の構成要素
展開図の例

こちらも図1と同様に、「種目数」と「1種目当たりの平均メダル獲得数」を掛け算すると、「メダル獲得数」とイコールになることが分かる。

KPIとなる要素の選び方

このように、KGIの指標である「メダル獲得数」と「費用」をそれぞれ分解して、KPIの候補になる要素を洗い出すことができた。それでは、どの要素をKPIとして設定すればよいのか。

今回のように、分数でKGIを設定している場合、3つの視点で各要素を考察すべきだと佐藤氏は説明する。

  1. 最重要指標と最重要制約条件に共通している要素を探す
  2. メダル獲得数と費用の構成要素をみると、「種目数」と「選手数」、「1種目当たりの平均出場選手数」が、共通して含まれていることが分かる。これは、「種目数」や「選手数」、「1種目当たりの平均出場選手数」が増えることで、メダル獲得数増大への期待も高まるが、同時に費用も膨れ上がることを表している。

    上記内容の例図

  3. 要素間の重要な関係性を整理する
  4. 「1名当たりの平均出場種目数」と「1種目当たりの平均出場選手数」は、逆数の関係にある。なぜなら、ある種目に出場する選手数を増やそうとすると、その種目に参加する選手たちは同時刻開催の別種目には出られないため、1名当たりの出場可能な種目数が減る。そのため、どちらかを増大させれば、もう一方は減少することになる。

    上記内容の例図

  5. 各要素の制約条件を確認する
  6. たとえば、「1種目当たりの平均メダル獲得数」にはあらかじめ決められた上限がある。それというのも、1種目で獲得できるメダルの数は基本的に3枚(金・銀・銅)までだからだ。また「1名当たりの平均出場種目数」も、体力や日程のことを考えると、1人の選手が出場できる種目数には限りがあると考えられる。

    上記内容の例図

こうしてみると、どれをKPIに設定しても一長一短があるように思えて、非常に難しく感じることだろう。

「KPI設定に、正解はありません。たとえば、『(費用にいくらかけてもいいから)参加する種目数を増やす』というKPIでもいいわけです。最終的には責任者の意思決定が重要になります」(佐藤氏)

KPIの目標数値の決め方

ロジックツリーを使ってどの要素をKPIに設定するか決めたら、最後に「目標数値」を考える。

数値目標を決める際によくあるパターンが、「前回の実績を上回る」というものだ。しかし、この設定のしかたはあまり適切ではないと佐藤氏は語る。

「前回の実績を上回る、というのはKPIとして分かりやすいので設定しがちです。しかし今回の場合でいうと、不適切です。なぜなら、国際大会である以上、周囲の環境によっては前回の実績を上回ることは不可能になる可能性があるからです。また、上回れたとしても、どの程度上回るのが妥当か、判断が難しいですね。絶対評価の数値目標は環境に左右されてしまうのです」

それではどうすればいいのか。佐藤氏は「相対評価」することを勧めた。

「五輪のような国際大会の場合は、『他国を上回る実績を残す』といった設定がよいでしょう。具体的には、『前回の五輪での実績を、国別順位で上回る』など。KPIの目標数値は、純粋な得点ではなく、偏差値的な考え方で設定したほうがよいですね」

ゴール基点の発想を

KPIの設計手順をまとめると次のようになる。

上記内容まとめた図

以上、前編ではKGI、後編ではKPIについて、それぞれの基本的な考え方や具体的な設定手順を紹介した。

セミナーを締めくくるにあたり、佐藤氏は「慣例的な指標に流されることなく、なぜそのKGIを設定するのか、なぜその要素をKPIとするのかという『ゴール基点の発想』をもつことが重要です。日々のビジネスで常に意識するようにしてください」と強調した。

プロフィール

株式会社ブレインパッド マーケティングプラットフォーム本部 副本部長 佐藤洋行氏

九州大学大学院修了(農学博士)。ブレインパッド入社後、大手通販企業のデータ活用分析プロジェクトにデータサイエンティスト/マネージャーとして参画し、幅広い分野のデータ分析に精通。現在、マーケティングソリューションを提供するマーケティングプラットフォーム本部の副本部長を務める。多摩大学経営学部准教授を兼任。

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