マーケティング戦略

「顧客体験の改善」とは企業の生き残りをかけた戦いである

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2017年6月、米国のリサーチ会社であるフォレスター社によりニューヨークで開催されたCXNYC フォーラム(*1)。会場が全米中のマーケターと顧客体験(CX)の専門家で埋めつくされたそのフォーラムは、同社の最高経営責任者(CEO)であるGeorge Colony氏の驚くべき課題提起により幕を開けました。Colony氏は「今後、みなさんが働いている企業すべてが、徐々に窮地に立たされることになるだろう」と警告し、「これは、この会場にいる私たちすべての課題です」と続けました。

Colony氏は、取り組むべきはAmazonやUberのような企業との競争ではなく、顧客と向き合うことと主張します。なぜなら、今日、企業に対して破壊的(disruptive)なパワーを持ちうるのは、加速度的に消費行動が変化し、また今まで以上に急速に普及したテクノロジーを使いこなしたいと考えている顧客だからです。たとえば、人工知能(AI)スピーカーであるAmazon Echoが搭載する音声認識サービス(*2)のAlexaについて、彼は「フォレスター社が記録している中で最も急速に活用されている」と指摘しました。

フォレスター社は以下のように、明確に述べています。

「小売業、旅行業、通信業、自動車業、金融業などあらゆる業界は、いかにして世界水準の顧客体験を提供するかという競争に直面しています。これは企業の生存をかけた戦いですが、良い面もあります。それは、すばらしい顧客体験を提供する方法は無限にあるという事実です。つまり、どんな企業でも、強い意志と想像力、そして企業文化を的確に組み合わせることで、Amazonと同等の、いやそれ以上の顧客体験を提供することは可能なのです」

では、企業は何から始めればよいのでしょうか。Signalは、企業がさらに高いレベルの顧客体験を構築するために、アナリストやCXNYCの登壇者の言葉をもとにして、マーケターに役立つ5つのインサイトをまとめました。

1. 顧客体験の実態を直視する

マーケターは自分自身と自社が積み重ねてきた顧客体験の現実に目をそらさず向き合う必要があります。フォレスター社のアナリストであるRoxana Strohmenger氏は、何百もの米国(そして世界中)のトップ企業の顧客体験をトラッキングし、検証してきた上で「私たちは前年に比べてスコアが上昇し、この競争の中から抜け出せた企業をまだ見ていない」と語っています。フォレスター社がトラッキングした多くの企業はまだ道半ばなのです。ほとんどの企業ははっきりした目的もなく単に表面的な効果を見ているだけで、顧客体験の提供自体が滞っていたり、顧客の期待に応えられていなかったり、さもなければ、顧客の期待に応え続けるということに対して明らかに怠慢だったりするのです。

2. 経営課題として捉える

消費者のエンゲージメントを高める適切な顧客体験を創造し、それらの体験を大規模に提供するためには、投資の可否を判断する立場にある経営者の積極的な参画が必要です。フォレスター社の調査結果は、よりよい体験をした顧客は、そのブランドのファンになりやすく、そのブランドから引き続き購入しやすく、また、友人に勧める傾向が高いことを表しています。顧客離れを減少させるためには、顧客1人あたりの売り上げを増やすことが必要です。そうすることが、より多くの新しい顧客を呼び寄せることにもつながるのです。

それにもかかわらず、経営幹部の57%が顧客体験の改善に対して危機感を持っていません。アナリストのMaxie Schmidt氏は、「もし、自社のCEOが顧客体験の重要性に気づいていないなら、マーケター自身が経営層に対して、顧客体験の改善について考えるきっかけを与えていないということです」と述べています。

マーケターは、企業の存続問題やCEOが長年温めていた計画に結び付く、顧客体験の事例を構築するべきです。それによって経営層の意識を変えることが必要なのです。

3. 顧客体験向上の基礎を固める

企業における顧客体験の戦略と手法を向上させていくには、きちんと計画・管理された分析と実行を要します。企業は顧客一人ひとりを知り、彼らを動かすきっかけとはどのような感情かを理解していなければなりません。さらに、提供した顧客体験に大きな反応を示し、高いロイヤルティーによって売り上げと成長に貢献してくれるであろう、生涯価値の高い優良顧客をターゲットに定めるべきです。

しかし、アナリストのRick Parrish氏は「顧客体験の管理がしっかりできている企業は見当たらない」と述べています。革新的なことを実際に行っている企業はほとんどありません。フォレスター社によると80%の企業が、顧客体験の向上を組織全体で継続的に実現するために不可欠な、6つの重要な能力を持ち合わせていないといいます。その6つとは、調査力、優先順位決定力、デザイン力、実現力、解析力、そして土壌となる企業文化です。

4. 顧客を特定し、一個人として対応する

デジタルマーケターの89%は、顧客体験により良い影響を与えるために、パーソナライゼーションを検討している、とアナリストのBrendan Witcher氏は語っています。しかし、パーソナライゼーションの次の段階として、現在の一般的なセグメントごとのアプローチではなく、確実に個々の消費者に対してアプローチすることが重視されています。フォレスター社はマーケターに、カスタマージャーニー全体の可視化と正確な効果測定、ターゲティング、アトリビューション分析のために、顧客データとIDがチャネルやデバイスを超えてつながるようにすべきだと助言しています。

また、Witcher氏はマーケターに次の4つを実現するテクノロジーに投資することを勧めています。

(1) 豊富な顧客データを結び付けて顧客を特定し、個別対応を可能にする
(2) 顧客データをリアルタイムに分析し、常に変化する顧客行動の意図を理解できる
(3) パーソナライズされたコンテンツをどの面やチャネルに関わらず、同じように配信できる
(4) 今までよりはるかに豊かで適切なエンゲージメントを提供できる

5. 顧客とのタッチポイントすべてを重視する

世界最大のクルーズ旅行会社、カーニバル社のチーフ・エクスペリエンス・オフィサー(CXO)兼チーフ・イノベーション・オフィサー(CIO)であるJohn Padgett氏は、マーケターに対して、パーソナライゼーションと顧客体験におけるあらゆる障害を取り除くことに集中するように呼びかけました。

カーニバル社は2017年11月13日に「オーシャン・メダリオン」というプログラム導入しました。これは、顧客がデジタル式のネックレスやブレスレットを身につけることで、休暇の計画から、船上での食べ物や飲み物の注文まで、すべてをシームレスに実現できるものです。このアイデアの目的は旅行者を悩ます書類や長い行列をなくすことでした。カーニバル社はクルーズ船を海に浮かぶ巨大なスマートフォンと捉え、10億ドルをかけて、船上にいる旅行者の行動すべてを把握できるオペレーションシステムを構築しました。

このデジタルシステムにより、船の中とそれを取り囲むモノ・人・デジタルなタッチポイントを把握できるようになりました。Padgett氏は最後にこう付け加えました。「必要なのは、カスタマージャーニーにおいて何を実現するかという明確なビジョンなのです」

顧客体験の改善が簡単だという人はいません。しかし、2017年のCXNYCフォーラムの内容は、粗悪な顧客体験が顧客との関係性を損ない、企業に経済的な負担をもたらすことを強く実感するものでした。もし、まだ顧客一人ひとりを理解して交流することに注力していない企業があれば、その先は悲惨な結果が待っているかもしれません。

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