マーケティング戦略

なぜ物流業界にロボット革命が必要なのか[前編]――出荷効率5倍の先にあるもの

記事内容の要約

  • ニトリの物流子会社ホームロジスティクスでは、倉庫の人員不足リスクを回避するために自動倉庫システム「オートストア」を日本ではじめて導入
  • オートストア導入前に比べ、出荷効率は大幅に向上し、5倍以上の改善を実現
  • オートストア導入によって業務効率化を図れたが、真の導入目的は労働環境の改善
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ジャングルジムのような構造物の上を、真っ赤なロボットが動き回る。これは、ニトリの物流部門が分社化した株式会社ホームロジスティクスの倉庫で見られる光景だ。「ロボット倉庫」と呼ばれ話題にもなったので、ご存じの方もいるだろう。神奈川県川崎市にある同社の東日本通販発送センターでは、この自動倉庫システム「オートストア(AutoStore)」を日本ではじめて導入。2016年2月に稼働を開始した。いま物流業界では、EC市場の成長などを背景とした、取扱商品の増加への対処が課題になっている。そして、その解決策としてオペレーションの自動化やデジタル化が注目されており、オートストアもそのひとつだ。そこで同社にオートストアの導入経緯と実際の効果などについて聞いた。

発端は人手不足のリスク対策

株式会社ホームロジスティクスは、海外からの輸入や国内輸送といった物流事業、国内の倉庫事業、そして店舗や顧客宅への商品配送事業を手がけ、2012年からはニトリグループ以外の配送業務も受託するなど、事業を着実に拡大している。

近年、物流市場全体で物量は増え続けており、ホームロジスティクスでは年間の作業量がピークを迎える3~4月の引っ越しシーズンは、人手を増やしても稼働は安定しない。同社の代表取締役社長で株式会社ニトリホールディングスの上席執行役員も務める松浦学氏は、倉庫業務における課題をこう語る。

「倉庫での物流作業は、1日に数万歩も歩きながら荷物を処理する重労働です。しかも繁忙期と閑散期での作業量の差は2~3倍もあります。その労働量の増減を作業員の人数調整だけで対応するのは限界を迎えており、前々から倉庫作業の自動化は検討していました。そのようななか、2015年の欧州視察で、ノルウェーの倉庫で稼働中のオートストアを見たのです。動画では何度も見ていたのですが、実際に動いている様子を見たら、想像以上にロボットの動きが機敏かつ作業内容も正確で、これは使えると感じました」(松浦氏)


株式会社ニトリホールディングス 上席執行役員
株式会社ホームロジスティクス 代表取締役社長 松浦学氏

積み木のように荷物を操るオートストア

オートストアは、商品を格納した底面60×40センチ、高さ31センチの専用コンテナをブロック状に積み上げることで、効率的に保管・管理を行うシステムだ。そしてロボットは、ジャングルジムのように張りめぐらされた格子状のフレームをつたって、左右に動きながら、積み上げられたコンテナを運ぶ。

オートストアは、天井部分に張りめぐらされた格子状のフレームの上をロボットが左右に動きながら、コンテナを作業員のもとに運ぶ。
オートストアの概要
提供:株式会社岡村製作所

オートストアは、受注データを前もって流しておくと、人がいない間にコンテナの位置を変え、準備を行い、出庫時に効率的に作業が進むような仕組みになっている。また、よく出荷される商品は、自動的に上のほうに格納されるようになるなど、オートストアは日々効率化や最適化が進むようになっている。

作業員は、数カ所ある取り出し口で、コンテナが運ばれてくるのを待つだけだ。従来のように、商品をピックアップするために広大な倉庫内を歩き回る必要がなくなり、肉体的な負担も大幅に軽減されたという。

しかも、人間が荷物をピックアップする場合は荷物を平面にしか置けないが、オートストアであればコンテナを高く積み上げることで、限られた設置面積でも大量の荷物を保管できる。その結果、同社では、同じ数の商品を以前の半分以下の設置面積で収容できるようになったという。

出荷効率は約5倍に

稼働開始から1年以上が経過した現在、オートストアの効果はどのようなものだろうか。

単純比較はできないものの、以前は作業員50人で行っていた規模の作業が15人で済み、荷物のピックアップにかかる時間も短縮されたことで、出荷効率は約5倍になったという。

「倉庫における作業時間の7割は、商品を探すのと、運ぶために歩いて移動する時間です。それが軽減され、さらにロボットが商品を探してくれるのでピッキングミスをせずに済み、お客さまに間違った商品が届くことも少なくなります。また、効率よく出荷できるようにロボットは受注データを受けたら、荷物の収納場所を変え、出庫作業に向けて準備をしてくれます」(松浦氏)

狙いは「働きやすい環境づくり」

オートストアの導入に手応えを感じたホームロジスティクスでは、インドのGreyOrange社が開発する無人搬送ロボット「バトラー」も、西日本通販発送センターに導入する予定だ。作業員の移動距離が大きく削減される点はオートストアと同様だが、オートストアと違って大きなサイズの商品にも対応できるのが特徴だ。

バトラーは専用のラックを下から持ち上げて移動する仕組みになっている。
無人搬送ロボット「バトラー」
提供:GROUND株式会社

ところで、オートストアもバトラーも外資系企業の提供するソリューションだ。導入に際しての手間や費用は、日本企業のそれらと比べて優位性があるわけではない。本来、物流部門というものはコストセンターであり、積極的な投資は避けるのが当然だ。では同社はなぜ、国内企業ではなく海外企業との取り組みを積極的に進めるのか。松浦氏はこう語る。

「通販事業において、物流改善は非常に重要な課題です。海外では、成長する通販市場に合わせて、物流の仕組みにもイノベーションを起こそうという動きがあります。日本の通販市場も伸びていますが、物流に関しては、従来の倉庫業務の発想から抜け出せていません。しかし、中国やインドでは、爆発的に市場が成長している通販を想定して仕組みを考えています。物流事業者であるわれわれとしては、市場の成長に合わせて目新しいソリューションを提供している海外企業と組むことで、将来に向けた知見が得られるのです」(松浦氏)

また同社は、ロボットの導入を単なる「事業の効率化」とはとらえていない。

「この先、人件費は上昇し、労働時間の管理はますます厳しくなるでしょう。長時間労働が常態化していた倉庫作業においても、労働時間の短縮が求められるようになります。オートストアやバトラーの導入は、倉庫業務の効率化はもちろんですが、実は労働環境の改善が大きな目標としてあるのです」(松浦氏)

ホームロジスティクスのロボット導入は、単なる人員削減や効率化ではなく、人間が働きやすい環境をつくることが目的だったのだ。後編では、その出発点となった同社の企業理念と物流業界の将来について聞いていく。

この記事の後編を読む

プロフィール

株式会社ニトリホールディングス 上席執行役員 株式会社ホームロジスティクス 代表取締役社長 松浦 学氏

コンビニ本部にて店舗経営指導から商品開発、広告販促、全社業務改革、データ分析に基づくSCM改革、エンタメビジネス、海外現地法人の経営再建など手掛けてきた。2015年株式会社ホームロジスティクス代表取締役就任。旧態依然な状態を変えるべく、ITやロボット化など改革を続けている。

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