データ分析

「最強の学問」で経営をサポートするデータビークル社

  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

データサイエンティストというと、一般的には特殊なスキルを持つ専門職だと考えられており、データ活用に取り組む際に、外部からプロフェッショナルを招致したがる企業も多い。だが、その企業のビジネスをよく理解していなければ、本当に役立つデータ分析は行えない。せっかく専門家を招いたのに、期待した成果に結びつかないというケースも往々にしてある。

そんな状況に着目し、データサイエンスの専門知識がない人でもビジネスに生きる真の分析ができるソフトウエア「Data Diver」を提供しているのが、株式会社データビークルだ。なぜ同社はこのソフトを開発したのか、そして何を目指しているのか、同社代表取締役 CEOの油野達也氏と、『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)の著者であり、代表取締役CPO(Chief Product Officer)でソフトの開発者でもある西内啓氏に話を聞いた。

「データサイエンスをみんなの手に」

著書『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)でも知られる西内氏。日本の大学には統計学部がなく、医学部であれば人間を対象にした統計の応用が研究できるという理由で、東京大学医学部に進学した経歴の持ち主だ。

西内氏は、もともと大学で癌(がん)の再発や喫煙リスクなどに関する研究を行っていた。だが研究を進めるうちに、興味の対象が「現実に喫煙率を下げるために必要なアクションを考える」ことへと移っていった同氏は、博士課程ではコミュニケーション科学や行動科学の研究に没頭することになる。そして、「研究成果を生かす場は大学の外にある」と考え始め、教員まで務めていた大学を飛び出し、データ分析の専門家として個人でコンサルティングを行うようになった。


株式会社データビークル 代表取締役 CPO 西内啓氏

そして、さまざまな企業の相談を受けてみると、どこも同じような悩みを抱えていることに気づいたという。多額の予算をかけて、高価なハードやソフトを導入したり、外部のデータサイエンティストに依頼したりしているにもかかわらず、売り上げ向上などの結果にはなかなか結びついていないのだ。

「外部から招かれたデータサイエンティストは、分析のプロではありますが、その企業の特性や現場の目標、その背景に対しては理解が足りません。そのため多くの企業で、外部から招致した分析担当者とのコミュニケーションコストが非常に大きな問題になっていました。ですから、ビジネスを分かっている人自身が、分析の専門知識なしに、具体的なアクションを起こすためのアイデアを発見できればベストだと考えました。そうしたことを実現できるソフトを作れば助かる人が大勢いるのではないかと、開発に着手したわけです」(西内氏)

これがデータビークル社の開発した分析ソフト「Data Diver」の原型だ。しかしソフトを開発したはいいが、必要な人の手に届けるためのつてやノウハウが不足していた。そこで頼ったのが、知り合いから紹介してもらった油野氏だった。油野氏はIT分野での営業経験30年という業界を知り尽くしたベテランだ。


株式会社データビークル 代表取締役 CEO 油野達也氏

「西内が相談を持ちかけてきたときは、まだ裏側のエンジンと、パワーポイントで描いた簡単なUIイメージ図しかない状態でしたね。それでも、話を聞いて、今の業界にこういうものは他になく、これは売れるとピンときました。そして、西内に『統計学を使って日本の企業をよくしたい』と真顔で言われたんです。私もBtoBソフトウエアをもっと広めて企業を支援したいと思ってきたので、マインドが一致しました」(油野氏)

「データサイエンスをみんなの手に」というコンセプトを掲げ、株式会社データビークルが設立された。

「深掘りすべき仮説」を教えてくれるソフトウエア

では、Data Diverで具体的に何ができるのだろうか。

例として、小売企業の販促担当者が「来店客の購買金額を向上させる」という目的をもってツールを操作する場合でみてみよう。

まず事前に設定しておくのは、社内にあるさまざまなデータベースの連携だ。顧客IDや商品番号などが同じであれば、複数のデータベースを横断して分析できる。

設定メニュー画面
設定メニューでは顧客プロファイルや売り上げ記録などを自動的にグラフ化。ExcelやPowerPointにも書き出せて、資料作りにも役立つ

データ連携画面
複数の部署で別々に管理していたデータも、顧客や商品など同じIDを持つものであれば簡単に連携が可能

データベースの設定を終えたら、自身の目的に沿うように、メニューから分析条件を指定すればいい。条件は、プルダウン形式で迷うことなく設定できる設計になっている。

分析条件の選択画面
分析条件の設定はプルダウンから項目を選ぶだけ。金額・回数・年齢など値の扱い方はソフト側が自動的に判別し、任意の切り口で分析用のデータセットが作られる

今回は、顧客軸で分析してみる。そうすると、意味のある分析をするためにプルダウンメニューの選択肢が自動的に絞り込まれる。ここで例えば「購買金額」「合計額」「少ないことが課題」という項目をそれぞれ選択すれば、顧客1人につき1行ずつという形で商品マスターやDMの送付履歴といったひもづくデータが変数化され、顧客ごとの売り上げに関係する要因を見つけることができる。

プルダウンメニュー選択後、「次へ」を押下すれば、分析結果が数分で一覧表示されるというわけだ。

分析結果の表示画面
分析結果は日本語の文章で表示。テーブルのカラム名は結果を見ながらいつでも一括で置換できるので、使い慣れていくうちにデータの知識がない人にも普通に聞いて伝わる内容になっている

分析結果は、「購買日時が“深夜”の割合が1ポイント増えるごとに、購買金額が421円高い傾向にあります」、「DM種別が “ハガキ”の件数が1増えるごとに、購買金額の合計は4951円高い傾向にあります」のように自然言語で表示される。

このような分析結果が表示されることで、「深夜に買い物に来る可能性が高い人を集客したらどうか」「DMはハガキのタイプをもっと送ったらどうか」、といった施策につながる仮説が簡単に見つかる。

ただし、深夜によく買い物に来る顧客の購買金額が高くなる傾向があるからといって、「深夜に来させたら、購入額が上がる」とは言い切れない。いわゆる「相関関係はあっても因果関係は証明できない」という問題だ。

Data Diverの強みは、ただの見える化よりもう一段階踏み込んで、因果関係に近づこうとする点にある。

「深夜に買いものをする人の中には男性が多いかもしれない、また年齢が若い人が多いかもしれない。そうすると一見こうした分析結果が得られたとしても、本当に大事なのは「深夜に来るかどうか」ではなく、年齢や性別だという可能性も考えられます。Data Diverは、多変量解析によって、年齢や性別ほか購買金額に関係しそうな条件を一定に補正した上で、それぞれの変数がどれだけ購買金額と関連するかという分析結果だけを表示するのです」(油野氏)

重要なのは意思決定者の存在

Data Diverを使えば、データをもとにした施策アイデアを生み出しやすくなる。しかし、アイデアは出せても施策の実行までは至らない企業が非常に多いのだという。

「施策を打てば売り上げが上がる可能性が高いという分析結果が出ているのに、それを確認しただけで実際には手を動かさない企業がたくさんある。だからわれわれのツールの導入を考えている企業には、チームの中に意思決定のできる“ボス”を入れてもらうことにしています」(油野氏)

分析結果に基づいて物事を動かせる権限のある「ボス」、社内の連携や現場の動きを熟知した「ビジネスエキスパート」、社内のITシステムやデータ管理に詳しい「データマネジャー」、そして実際にソフトを扱う「分析担当者」という4つのポジションからなるチームをData Diverの導入開始前に組んでおくことが基本だ。これまで数多くの企業に導入してきた事例から、このチームビルディングの重要性に行き着いた。

チームに必要なポジション説明図
Data Diverによる分析結果を施策として行動に移せるよう、導入企業にはあらかじめ4つのポジションからなるチームビルディングを行ってもらう

「慎重に議論を重ねるだけでアクションを起こさないボスであれば、われわれとしてもソフトを導入するメリットを提供できません。また、現場に詳しいビジネスエキスパートやデータマネジャーがいれば必要なデータ集めや背景情報についてのコミュニケーションがスムーズです。分析担当者は、関数やピボットテーブルなど基本的なExcel操作ができる人手があればそこから4カ月ほどで育成可能です」(西内氏)

Data Diverは施策アイデアを出す手助けをしてくれるが、実際にアイデアを形にして実行に移すのは人間である。分析結果を生かすためには、正しく意思決定ができて、具体的なアクションが取れる組織体制が必要なのだ。

データ分析が当たり前になっていく世界で

株式会社データビークルは、ソフトの導入実績・成果をほとんど明らかにしていない。

このことはNDA(秘密保持契約)だけが理由ではない。成功事例をまねればよいという誤解を避けるためでもある。たとえ同じ業界の企業であっても市場シェアや顧客層が異なれば、同様の施策を実行しても効果を得られるわけではない。ともすれば業績に悪影響を及ぼすという可能性だってある。西内氏は「自分たちの企業のデータを分析して、自分たちに適した勝ちパターンを見つけてもらうことが大事です」と指摘する。

湯野氏と西内氏の写真

「ただデータを見える化しただけのグラフは、せいぜい自身の仮説を裏付けることしかできません。それにもかかわらず、いまだに多くの企業では、見える化以上の分析をしていません。そうではなく、自分たちが気づいていなかった、検証すべき仮説をデータから探すにはどうしたらいいのかという考えを持ってほしいと思っています。私たちが提供しているのはそのための仕組みです」(油野氏)

さらに西内氏は、経験や勘に頼った経営から、データに基づいた経営にシフトしないことは罪ともいえると話す。

「『過失』という概念をもう少し具体的に言うと、悪いことが起こると予見できたはずなのにその努力を怠ったか、あるいは予見しながら回避を怠ったことです。ならばデータを少し分析したら予見できるような利益を取らないことが、いずれは過失と呼ばれるようになってもおかしくない。株主あるいは結局のところ顧客にも損をさせることになってしまいます。医療の世界も1990年代からほんの10年程度で、医師の経験、勘とロジカルシンキングだけではなく、データで示される科学的根拠に基づいて医療を行うEBM(*1)に変わってきた経緯があります。ビジネスの世界でもこのような変化が短い期間で起こってもおかしいことはありません」(西内氏)

これから先は、データに基づいた経営判断がされていくのが当たり前になり、そうでない企業は必然的に淘汰されていくと西内氏は話す。同社の掲げる『データ分析をみんなの手に』という言葉には、データドリブン経営の時代に取り残されようとしている企業に警鐘を鳴らす意味も込められているのだろう。

注釈:
(*1)エビデンスベースドメディスンとは、科学的根拠に基づく医療のこと。入手可能な範囲で最も信頼できる根拠を把握した上で,個々の患者に特有の臨床状況と患者の価値観を考慮した医療を行うための一連の行動指針

プロフィール

株式会社データビークル 代表取締役 CEO 油野 達也氏

昭和62年よりITビジネス経験30年。営業、製品企画、海外子会社経営などの実務をSIビジネス、パッケージ、クラウドサービスなど多岐にわたるビジネスモデルで経験。

株式会社データビークル 代表取締役 CPO 西内 啓氏

東京大学助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長等を経て現在多くの企業のデータ分析および分析人材の育成に携わる。 2017年 第10回日本統計学会出版賞を受賞。

  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

Insight for Dの
ページにいいねしよう!

「いいね!」してInsight for Dの最新情報をチェック

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Insight for Dの公式Facebookページ、Twitterでも最新情報や取材の様子を発信中。