ビジネス創出

「ブラック業界」はITで解決できる――飲食業界を変えるデジタル活用【前編】

記事内容の要約

  • 飲食業界は生産性が低いがゆえに賃金が低く、優秀な人材が集まりにくいことからブラック化している
  • 1970年代~80年代にかけて業界が巨大化するなか、オペレーションはいまだ進化していない
  • 管理が煩雑な予約業務を解決することで、生産性向上効果が見込める
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長時間労働に低賃金。一般に「ブラック業界」と呼ばれることが多い飲食業界。長時間労働の問題が表面化し、裁判などで争われている例を目にすることも少なくない。そのようななか、この業界をデジタルの力で変革しようとする企業がある。飲食店向け予約/顧客台帳サービス「トレタ」を運営する、株式会社トレタだ。

同社は、複数の有名飲食店を経営してきた代表の中村仁氏が、自身の経験から痛感した課題をもとに飲食業界の経営改善を目指したサービスをスタート。現在、「トレタ」は全国で約10,000店舗以上へ導入されている。代表の中村氏に、業界の現状と、トレタが実現しようとしている世界について話を聞いた。

飲食業界のブラック化の裏には「生産性の低さ」があった

飲食業界が、“ブラック”だと揶揄される所以はどこにあるのか。中村氏はこの問いに対し、すべての原因は「生産性の低さ」にあると語る。

農林水産省が発表しているデータによると、飲食業は他の産業と比較して、従業員1人あたりの付加価値額がかなり低い(*1)。また、日本生産性本部の発表によると、米国と比較した場合の労働生産性水準もわずか3分の1ほど(*2)だ。中村氏が、「業界全体として生産性が非常に低いのです」と指摘するように、生産性における課題は、大量採用を行ったり、優秀な人材を採用したりといった人材戦略で解決できるレベルではなくなっている。


株式会社トレタ 代表取締役 中村仁氏

「いくら優秀な人材を大量に雇っても、そもそもの生産性における課題が解決できていなければ意味がありません。また低賃金・長時間労働の状態になり、優秀な人材が流出し、より生産性が低下する……という悪循環に陥ります。今の飲食業界は、この負のスパイラルから抜け出せなくなってしまっているのです」(中村氏)

40年近くイノベーションが起こらなかった飲食業界

なぜ生産性がここまで低下してしまったのか。中村氏は、理由のひとつに業界内で30年間イノベーションが起こっていないことを指摘する。

日本マクドナルドに日本KFCホールディングス、すかいらーくグループ、モンテローザ……。飲食業界を代表する大企業には、ある共通点がある。それは、これらの企業が1970年代から80年代半ばに国内に登場したことだ。日本の飲食業界において、1970年代は大きな転換期だった。

「日本の飲食業は1970年代に産業として大きく発展しました。その背景には、POSレジの登場があります。POSレジの登場を機に会計業務は大幅に効率化し、多店舗展開や大規模店舗の運営が容易になり、ファストフードやファミリーレストラン、居酒屋チェーンのような飲食チェーンが台頭しました。今の日本を代表する飲食業界の企業の多くは、1970~1980年代半ば頃に出そろっています」(中村氏)

それまで家族経営されてきた「生業」が、ひとつの産業になる――これは、イノベーションとも呼べる大きな変化だった。

「たったひとつのツールが登場しただけで、業界が大きく変化した。われわれはこれをPOS革命と呼んでいます。ただ、このPOS革命以降、飲食業はほとんど変わっていません。80年代半ばに確立したオペレーションの多くが今もそのままなのです。食材の受発注はいまだにFAXを使い、従業員のシフトは手組み。予約管理は紙の台帳で行われています。非効率なオペレーションが温存されてしまっているせいで、生産性は下がり続けてしまっているのです」(中村氏)

トレタが実現するテクノロジーによる圧倒的な生産性

こうした課題を解決するのが、2013年にリリースされた予約台帳・顧客台帳サービス「トレタ」だ。

画面 トレタiPad用画面
トレタiPad用画面

トレタは、顧客からの予約をタブレットに入力し、デジタル上で管理できる予約台帳だ。また、予約の際に顧客が入力したお店への要望や過去の来店回数といったデータが、そのまま顧客台帳として活用できるほか、予約情報や顧客情報などの全データを集計・分析することもできる。

多くの飲食店では、電話やグルメサイトから受け付けた予約の内容を、紙の台帳に転記している。そのため新たな予約やキャンセルなどが発生するたびに台帳を書き直さなければならず、現場にとっては大変な手間となっている。トレタは、飲食業界において生産性を低下させてきたペーパーワークを無くし、工数の大幅削減につなげられるツールだ。

「連日満席のとあるイタリアンレストランでは、予約台帳の書き替えが1日4回も必要になっていました。しかも、書き替えなくてはならないフォーマットは1種類ではありません。座席の埋まり具合を把握するためのフロア図や、来店時間を把握するためのタイムテーブルなどを、厨房(ちゅうぼう)用とホール用にそれぞれ用意しなければなりません。それらを書き直すだけで1日に3〜4時間かかり、ほぼ専任の担当者が必要なので、人件費に月30万円はかかっていました。トレタを導入することで、この人件費を大幅に削減できるのです」(中村氏)

コストの面だけではない。転記する際のヒューマンエラーは、飲食店経営者であれば誰もが経験したことがあるだろう。トレタはこうしたムダな工数とエラーを限りなく減らし、生産性を一気に向上させることができる。

規模にはよるものの、実際にトレタを使いこなしている店舗では、人件費の1〜2割の削減に成功したり、売り上げの向上につながったりしているという。

「飲食店経営において、最大の敵は、“紙”です。手書きのメニューなどで生み出せるアナログならではの価値もありますが、裏方のオペレーションに関していえばアナログな作業は無くすべきなのです」と語る中村氏は、旧態依然とした作業のデジタル化こそが、いまの飲食業界の生産性向上に欠かせないと考える。

中村氏写真
「飲食業界の生産性向上にデジタル化が欠かせない」と語る中村氏

「われわれの使命は、外食文化を豊かにすること。そのためには、まずは現場の生産性を向上させる必要があるのです。それを弊社のツールによって解決していきたいと思っています」(中村氏)

後編ではトレタ創業のきっかけや、トレタが目指す飲食業界の変革について話を聞く。

前編を読む | 後編を読む

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