ビジネス創出

予約管理が店と顧客を幸せにするワケ――飲食業界を変えるデジタル活用【後編】

記事内容の要約

  • ツイッターによる飲食店予約の経験から、顧客管理の重要性と予約管理効率化の必要性に気付く
  • デバイス/インフラ/リテラシーの3要素がそろったタイミングでトレタが普及
  • 予約台帳を紙からデジタルに置き換えることで、CRMを実現
  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

この記事の前編を読む

飲食店向け予約/顧客台帳サービスの「トレタ」を運営する、株式会社トレタ。有名飲食店をいくつも経営してきた代表の中村仁氏が、自身の経験を通じて得た課題をもとに立ち上げたサービスは、いまや全国で約10,000店舗に導入されている。

後編ではトレタ創業の経緯と、トレタが実現しようとしている世界について代表の中村氏に話を聞いた。

ツイッターがつないだテクノロジーと飲食

中村氏は家電メーカー、広告代理店勤務を経て、飲食業界に転身した経歴を持つ。居酒屋、立ち飲み屋の繁盛店を作り上げた後、素材にこだわった豚肉料理を提供する「豚組」を2005年にオープンした。こだわり抜かれた素材や味はもちろんのこと、豚組は別の理由で“テック業界の人々”から注目を集めることとなる。それは、ツイッターで予約ができることだった。

「私がツイッターで予約を受け付けはじめた当初は、ツイッターもiPhoneも世に出たばかりで、ユーザーのほとんどはテック業界の人たちでした。そのなかで『豚しゃぶ屋がツイッターを使っているぞ』と面白がってくれて、徐々にツイッターで予約が入り、話題になっていきました」(中村氏)

中村氏は、メーカーから広告代理店に転職した理由が「クライアントがIBMだったから」というほどのテクノロジー好きだった。iPhoneも発売日に並んで購入した中村氏にとっては、あくまでiPhoneもツイッターも趣味のひとつで、集客を狙っていたわけでなかったという。


株式会社トレタ 代表取締役 中村仁氏

「本当に偶然の産物でしたね。テクノロジーを使って集客しようともくろんでいたわけではありません。むしろ、飲食の本質は現場のアナログなところに宿ると思っていましたから。目の前の料理や接客で、いかにお客さまに価値を提供できるかにフォーカスすべきだと考えていました」(中村氏)

それがこのツイッターでの予約受付を機に、中村氏の頭のなかで、テクノロジーと飲食がつながっていく。

顧客管理と予約管理の効率化が飲食業を変えるという実感

ツイッターでの予約受付を行うようになってしばらくすると、中村氏はツイッターの過去ログがそのまま顧客台帳として活用できることに気付いたという。

「ツイッターでやりとりしてから来店いただいたお客さまは、予約時のコミュニケーションがすべてツイッターの過去ログに残っています。そのため、『この人は何回目の来店?』『どういう人と一緒に来る?』『前回来たときはどんな感想をいただいたっけ?』などがすべて履歴で追えます。そして、過去ログをみればその方がどれくらいリピートしているかもおおよそ分かるのですが、ツイッターでやりとりしたお客さまのほうが、明らかにリピート率が高かったんですよ」(中村氏)

中村氏は数々の飲食店を経営した経験を通じ、「店が繁盛するか否かは、リピート率をいかに上げるかにかかっている」という経験則を持っていた。ツイッター上に顧客の情報が残っていることで、リピート時の接客対応を向上させることができる。あらためて、顧客とのやりとりを記録しておく必要性を強く感じた。しかし、ツイッターを活用した予約対応はとてもアナログなもので、効率的とは言いがたかった。

「ツイッターからの予約は昼夜問わず入りました。でも、予約台帳はお店にしかないんです。そのため、店にいないときに予約を受け付けたら、お店のスタッフに電話して、予約台帳へ記入してもらうことになるんです。でも、管理がアナログなので予約内容の間違いや、伝え漏れによるミスが頻発します。当時、オンライン予約も普及しはじめていたのですが、それも最終的には紙の予約台帳に転記しなくてはなりません。お客さま向けのオンライン予約サービスだけが進歩しても、お店側の管理方法が変わらないと、いつまでも飲食店の現場はハッピーにならないと感じたんです」(中村氏)

トレタが普及した3つの理由

自身の経験から飲食店の課題に気が付いた中村氏は、2013年末に予約管理システム「トレタ」をリリース。わずか半年間で1,000店舗に導入され、2018年現在、導入店数は約10,000店舗を突破している。中村氏は、トレタが圧倒的な成長曲線を描けた要因の一つを「タイミングがよかった」ことだと言う。

「当時、飲食店向けのデジタルサービスが普及するためには、3つの要素が必要でした。そして、ちょうどそれらが出そろったタイミングだったのです。1つ目がデバイスの普及。iPadのようなタブレットデバイスが普及しはじめたことで、PCが使えないようなお店にも予約管理サービスを提供できる可能性が生まれました。2つ目が、インフラ。ブロードバンドやWi-Fiに加えてクラウドサービスが普及したことで、極めて安価なランニングコストでサービスを提供できるようになりました。3つ目が、飲食店側のITリテラシー。スマートフォンが普及したことで、パソコンは使えなくても、スマートデバイスなら操作できるという方が増えました。この3つがバランス良くそろったタイミングに、スマートデバイスに最適化されたサービスを出せたことは、弊社にとって大きな後押しになりました」(中村氏)

3つの要素が出そろったことで普及へとつながったトレタ。トレタが特徴的なのは、導入している飲食店のジャンルや業態、価格帯などが偏っていない点だ。特定の形態の店舗だけに絞られてしまうと、導入台数もすぐ頭打ちになってしまう。中村氏は、トレタが約10,000店舗もの普及を実現したのは、飲食店が抱える課題の根源は同じところにあったからだと話す。

「数多くの飲食店にヒアリングもしましたが、どのようなお店であっても、突き詰めていくと“アナログな裏方作業”が根本的な課題であることがほとんどでした。飲食業が抱えている課題は実はそれほど特殊なものでなく、比較的普遍的なものが中心だともいえるでしょう」(中村氏)

トレタにとって、挑むべき課題の難度は高くなかったのかもしれない。しかし、それだけで飲食店に受け入れられたわけではない。誰でも直感的に操作できるUI/UXを作り上げたのはもちろんのこと、導入店舗がトレタを使いこなせるまで、最終的に“紙離れ”できるまで顧客サポートを行い続けるのだ。このようなこだわりが、サービス継続率99%という実績につながっている。

飲食業界の生産性向上から、顧客管理/CRMへ

トレタが実現するのは、飲食業の手間の削減といった「負の解消」にとどまらない。飲食店にとって予約受付とは、顧客の来店傾向や嗜好(しこう)を把握できる、これ以上ないほど理想的な顧客接点でもある。トレタはPOSとも連携し、顧客情報から注文データ、過去の予約状況といったあらゆるデータを横串に管理し、CRMまで実現する。

中村氏の写真
トレタロゴの横でほほえむ中村氏

「あのCRMの第一人者であるセールスフォース社ですら、飲食業界の成功事例はあまり聞かれません。なぜなら、これまではお客さまの情報は全て紙に書きとめており、継続的に活用されることなくただ捨てられていくという状況だったからです。顧客情報と予約台帳を紐づけてデータ化することで、継続的なお客さまとの関係構築が実現できるのです」(中村氏)

そして、「弊社のドメインは『toreta.in』なのですが、ドットを取ると、To Retainとなります」と中村氏。もともとトレタという社名は「予約を取れた」というワードに引っかけてはいたというが、実はもうひとつ“裏の意味”がある。それは「retain=保持する、保つ」から派生した「常連の維持・増加」だ。店舗の成長にはリピーター数を伸ばすことが最も重要と考える中村氏にとって、トレタは業務効率化だけではなく、CRMツールとしての側面も重要なのだ。

飲食業界の生産性が上がり、従業員も顧客も満足し、より大きな産業として飛躍する日は、すぐそこまで来ているのかもしれない。

前編を読む | 後編を読む

プロフィール

株式会社トレタ 代表取締役 中村仁氏

大手家電メーカー、外資系広告代理店を経て、飲食業界に転身。立ち飲み屋や居酒屋経営を経て、2007年に高品質な食材にこだわったレストラン「豚組」を設立。ツイッターを活用した予約サービスやキャンペーンなどで話題を集める。2013年に株式会社トレタを創業し、同年12月に飲食店向け予約管理・台帳サービス「トレタ」をリリース。2017年12月現在「トレタ」は飲食店約10,000店舗超に導入されており、業界標準の予約管理・台帳サービスとして高く評価されている。

  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

Insight for Dの
ページにいいねしよう!

「いいね!」してInsight for Dの最新情報をチェック

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Insight for Dの公式Facebookページ、Twitterでも最新情報や取材の様子を発信中。