デジタル広告

BuzzFeed Japanが語る、「コンテンツ×データ」が生むビジネス

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2016年1月に創刊した、米国発メディアBuzzFeedの日本版「BuzzFeed Japan」(*1)。政治・経済や社会問題といったジャーナリスティックなコンテンツから、猫の動画、クイズといったエンターテインメントコンテンツまで幅広く発信し、創刊から1年8カ月で2000万人を超える(2017年8月時点)月間ユニークユーザー数を誇る巨大メディアだ。

同媒体を運営するBuzzFeed Japan株式会社(以下、BuzzFeed Japan)は、2015年8月に米BuzzFeed社とヤフー株式会社(以下、ヤフー)のジョイントベンチャーとして設立。BuzzFeed社が持つコンテンツに対する知見と、ヤフーが持つデジタルデータと日本のマーケットに関する知見を生かし、ビジネスを展開してきた。今回、BuzzFeed Japanで代表取締役社長を務める上野正博氏に、就任の背景や、BuzzFeed Japanというメディアにおけるコンテンツ制作の特徴、収益源となる広告ビジネスの現状について聞いた。

デジタル広告のプロが、なぜメディアへ

上野氏はもともと、メディア出身ではなく、デジタル広告畑を歩んできた人物だ。新卒で株式会社リクルートに入社し、コンテンツがアナログからデジタルへと移行していくなかでデジタル広告の世界へ移り、その後、オーバーチュア株式会社 代表取締役社長、CRITEO株式会社 代表取締役などを歴任。新たな広告配信技術からデジタル広告の販売、トラフィックの収益化などに携わり、国内における広告市場の勢力図の変化を間近で見てきた。

「2016年、日本のインターネット広告媒体費は1兆円を超えました。他方で、地上波の視聴時間は若年層を中心に減少しており、広告費も横ばい。すでに英国や韓国では、インターネットの広告費がテレビを上回っています。まだ日本のインターネット広告費はテレビの半分ほどですが、そう遠くない未来、逆転する日が来ると思います」(上野氏)

上野氏写真
BuzzFeed Japan株式会社 代表取締役社長 上野正博氏

長らくネット広告業界に身を置き、グローバルな広告市場に関わってきた上野氏は、日本のマーケットがブレークスルーするためには、まだ足りないものがあると感じていた。それが、広告側からメディア側へと移る理由になった。

「日本でネットがテレビを超えるためには、質のいいコンテンツがまだ足りていないと思うのです。一方で、4Gの登場や動画フォーマットの浸透など、テキストと写真イメージ以外のコンテンツ表現が可能になった。このタイミングで、コンテンツの制作、発信に挑戦したい――そう思い、BuzzFeed Japanに参画しました」(上野氏)

ヤフーとの提携による恩恵とは

上野氏が代表に就任してから2年弱。前述の通り、現在BuzzFeed Japanのユニークユーザーは月間2000万人を超える。BuzzFeedは、いわゆる“ミレニアル世代”に愛されるメディアとして海外では認知されているが、若年層人口の少ない日本においても、全読者のうち43%は18歳から34歳だという。

「本国では(ミレニアル世代の読者が)50%を超えますが、アメリカは若い人が多いですから。そう考えると日本の43%という数字は、かなり高いと思います。1年ほど前はもう少し低かったのですが、若年層にアプローチできるコンテンツを拡充したことが、功を奏したと思います。同時に女性比率の向上も狙ったので、現在は全ユーザーのうち52%が女性となり、男女比がほぼ半々というバランスのいい状態です」(上野氏)

BuzzFeed Japanが、メディアとして他国と異なる点は流入元にある。バイラルメディアであるBuzzFeedは、アメリカやブラジルにおいてはFacebookからの流入が多い。しかし日本では、提携先であるYahoo! JAPANからの流入が無視できない数字になっている。

「ジョイントベンチャーだからといって、Yahoo!ニュースへ優先的に掲載してもらうという契約を結んでいるわけではありません。ただ、しっかりと作り込んだコンテンツが評価され、結果的にYahoo!ニュースに掲載されるといったケースは多いので、そこから大きなトラフィックが生まれています」(上野氏)

上野氏写真

現在、ヤフーとの提携による恩恵は大きく2つある。1つは広告、もう1つはデータだ。

「広告の面では、広告枠の販売に関して全面的に協力してもらっています。そしてデータの面では、ヤフーが持つ顧客に関する膨大なデータをコンテンツ制作に活用できています。たとえば、BuzzFeed JapanのCookieデータとヤフーが持つ顧客データをかけ合わせて分析し、どういったコンテンツがどういった層に受けているのかを捉えて、記事制作に生かしています」(上野氏)

ジャーナリズムを手厚く、中長期的な視点によるコンテンツ制作を

広告販売やデータ活用の面でヤフーの後押しを受けているが、BuzzFeed Japanの強みは、メディアならではのコンテンツ力にある。現在、40名強いる編集部員のうち、約4分の1が調査報道やニュースを、4分の3がエンタメ系(芸能ニュース、映画など)やライフ系(旅行、グルメ、美容など)の記事制作を担当している。

「海外のBuzzFeedの場合、サイトローンチ初期はエンタメ系のコンテンツ制作に強いメンバーを集め、徐々に報道色のあるコンテンツを増やしていくという流れがほとんどですが、日本では、初期段階から調査報道を得意とする新聞社出身のメンバーを積極的に採用しました。そのため、エンタメ系コンテンツと比べてニュースやジャーナリズム色の強い記事もそれなりにあり、日本版としての特色が出ているかもしれません」(上野氏)

上野氏写真

ジャーナリズム色の強いコンテンツは、1本の記事に数カ月を要することも珍しくなく、高い頻度で掲載することが難しい。海外では10カ月近くを取材に費やし、やっと公開にこぎ着ける記事もあるという。ただ、それだけ時間をかける分、国内以外からも評価されて、海外へ広がっていくものもある。

「たとえば、アメリカ大統領としてはじめてオバマ前大統領が広島を訪れた時、市民の方々にオバマさんに伝えたいメッセージをホワイトボードに書いてもらい、それらのメッセージについてまとめた記事をBuzzFeed Japanに加えて、US版に英語で配信しました。『謝罪してほしい』といった声も出るのではと予想していましたが、8割方はそうではなく、『平和な世の中にしてください』といったメッセージが多かったです。」

記事サムネイル
「核兵器なくして!お願い!」 オバマ大統領に言いたいことを、広島で聞いた(*2)

国内外で反響が得られる可能性もある一方で、中長期で記事を制作することになると、記事1本あたりの費用対効果が割に合わなくなる場合もあるだろう。事業的な目標もあるなか、どこまで数字と質のバランスを取るのか。この課題に、BuzzFeed Japanは目標設定を柔軟に調整しつつ対応しているという。

「基本的には、制作するコンテンツの特性に合わせて目標を変えています。たとえば、ニュース班にもページビュー目標をある程度持たせますが、グループで持たせるようにする。他にもページビューではなく、シェアの目標を持たせるチームもあります」(上野氏)

上野氏写真

データが裏打ちする広告ビジネス

コンテンツの拡充とともに、BuzzFeed Japanはマネタイゼーションを加速しつつある。2016年の10月からスタートした広告事業では、現在、四半期ベースで数十社のクライアントと取引をするようになってきている。

「一般的にメディアの収入源は大きく分けて、『広告収入』、『ユーザー課金』、『コンテンツ販売』の3つが存在します。本国のBuzzFeedではコンテンツの販売も行っていますが、現在、BuzzFeed Japanは広告収入のみで収益を上げている段階です。まだまだ成長途中ですが、ナショナルクライアントを中心に取引案件は増えてきています」(上野氏)

BuzzFeed Japanが取り扱う広告商品は、一般的に「スポンサードコンテンツ」と呼ばれるもので、クライアント側が伝えたいメッセージをメディア側が主導して記事化する。スポンサードコンテンツは、テレビCMなどで既にある程度認知を得たブランドが、自社の商材に対する好感度をさらに上げて購買などへの意識を高めるなど、リードナーチャリングにおいて効果を発揮する。そしてこの広告の成果を可視化するうえで、ヤフーの持つデータは大きな役割を担っている。

「施策実施後、クライアントに対してPV数や完読率などの実績データを報告するのは媒体として当然のこと。しかし、当社はヤフーの持つデータと連携することで、どんな属性で、どんな興味関心を持つ方がコンテンツをご覧になったのかということまで分かります。案件にもよりますが、クライアントには多面的に施策の実施結果が報告でき、成果をデータで客観的に伝えられるというわけです。それによって広告出稿のリピートにもつながると考えています」(上野氏)

上野氏写真

徐々に広告事業を拡大し、メディアとしてのマネタイゼーションにおいても成果が見え始めてきたBuzzFeed Japan。良質なコンテンツを生み、収益へとつなげる同社にとって、データは必須の存在だ。インタビューの最後に、上野氏はデジタルマーケティングにおいて欠かせないデータの役割について次のように語った。

「データは重要なアセットの1つです。ただ、データだけを見て打率の高いコンテンツばかりをつくっていると、新しいものは生まれません。BuzzFeed Japanでは毎月記事の数パーセントは新しいフォーマットに挑戦することを続けていますし、『今週は、数字の取れるフォーマットを意図的に使わない』といったように、あえてハンディキャップを設けることもあります。データを活用する側がどのような意識を持つべきか。それこそが大切です」(上野氏)

注釈:
(*1)BuzzFeed Japan(外部サイト)
(*2)「核兵器なくして!お願い!」 オバマ大統領に言いたいことを、広島で聞いた(外部サイト)

プロフィール

BuzzFeed Japan株式会社 代表取締役 上野正博 氏

1964年生まれ。1987年株式会社リクルート入社。1998年ダブルクリック株式会社 代表取締役社長に就任。2001年トランスコスモス株式会社 取締役、オーバーチュア株式会社 代表取締役社長などを経て、2016年4月BuzzFeed Japan株式会社 代表取締役社長に就任。

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