マーケティング戦略

ダイドードリンコが明かす自販機ビジネス[前編]――売り上げの8割は自販機から

記事内容の要約

  • 全国的に自販機の普及台数・売上金額が減少傾向にあるなか、国内飲料事業の売り上げの約8割が自販機経由というダイドードリンコが健闘している
  • 自販機での売れ筋商品の的確な把握や、消費者ニーズに対するきめ細かな対応を行っている
  • 自社の持つデータに加え、外部データを活用することで精緻な販売予測を立てている
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街中に点在している飲料自販機。コンビニエンスストアなど24時間営業の小売店が増えるに伴い、自販機による売り上げは縮小しつつある。そのようななか、飲料メーカーのダイドードリンコ株式会社は、国内飲料売り上げの8割が自販機経由だという。この比率は、飲料メーカーのなかでも飛び抜けて高い。いわば無人の店舗である自動販売機のデータ活用戦略やマーケティング施策について、同社担当者に話を聞いた。

緻密な生産計画が可能な自販機ビジネス

一般社団法人日本自動販売システム機械工業会(旧称:日本自動販売機工業会)(JVMA)の資料によると、飲料自販機は、2016年末の時点で全国に約247万4600台設置(*1)されている。この数は、前年比で2.9%の減少、2009年末の時点と比べると3.5%、約9万5000台減少(*2)していることになる。


飲料自販機の設置台数と売上高の推移
(一般社団法人日本自動販売システム機械工業会資料より作成)

飲料自販機市場が縮小傾向にあるのは、小売店の24時間営業が当たり前になり、いつでも飲料品が購入できるようになったことに加え、2008年のtaspo(タスポ:成年識別ICカード)導入によってタバコ自販機から客足が遠のき、「ついで買い」がなくなった影響も大きい。さらに、2014年の消費増税による商品売価の上昇や、コンビニエンスストア各社が始めたカウンターコーヒーの普及も要因とされている。

このように、自販機ビジネスには逆風が吹いているが、国内飲料事業の売り上げの8割が自販機によるという飲料メーカーが、ダイドードリンコ株式会社(以下、ダイドードリンコ)(*3)だ。平均的な自販機の売上比率は3割程度という業界にあって、8割という数字は突出している。同社の自販機営業企画部 自販機戦略グループ シニアマネージャーの曽根早紀氏は、同社の自販機事業のルーツについて次のように語る。

「弊社の前身の大同薬品工業は、医薬品配置販売業から始まりました。これは、お客さまのお宅に訪問して薬箱を渡し、再度訪問した際に使用されて減った分の薬代だけ請求するという事業です。つまり、お客さまの求めるものだけを売るというビジネスです。弊社の自販機ビジネスは、医薬品から派生した栄養ドリンクの取り扱いから始まりましたが、それがやがて缶コーヒーやお茶など、お客さまに求められる商品を幅広く展開するようになっていったのです」(曽根氏)


ダイドードリンコ株式会社 自販機営業企画部 自販機戦略グループ シニアマネージャー 曽根早紀氏

自販機による販売には利点もある。コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの量販店を通じて商品を販売すると、販売計画を自社でコントロールしづらい。店舗側の都合によって短期間で販売が打ち切られてしまうこともあれば、セールの影響などで需要が急増して供給が間に合わなくなるなど、想定外のケースが起こりうるのだ。しかし、自社の販売チャネルである自販機にはそれらのリスクが少ない。同社自販機営業企画部 自販機戦略グループの森口俊氏は次のように語る。

「自販機の場合は、どの商品をどのくらいの期間、どのくらいの台数で販売するかを自社の方針に沿って計画できます。そのため商品の生産計画も立てやすく、賞味期限切れなどによる廃棄も発生しづらい。環境負荷の低減、安定した収益の確保という意味でもメリットがあります」(森口氏)

ダイドードリンコは、自社で工場を持たず外部に生産を委託するファブレスメーカーだ。緻密な生産計画によって、販売を見込める数量を適切に見極め、確実に売り切ることは利益に直結する。また、自販機という自社の販売チャネル網を使うことで、流通の事情によることなく消費者の求める商品を届けられる。市場自体が縮小傾向にはあるが、自販機ビジネスのメリットは決して少なくないのだ。

消費者のニーズに応えられる自販機を

前述のとおり、ダイドードリンコは緻密な生産計画によって、供給過多による廃棄ロスを防いでいる。一方で、需要の変化を的確に捉えて商品を供給できなければ、機会損失になる。

そのためにダイドードリンコでは、缶コーヒーのようなホット飲料と、よく冷えたコールド飲料の併売が可能で、温度調整の切り替えができる自販機のメリットを最大限に活用している。

「多くの自販機は、内部に、ホット飲料を投入できる『コラム』と呼ばれる枠が2列あるのですが、一般的には、切り替えの時期がきたら2列ともコールドからホットに切り替えるパターンが多いのです。というのも、コールドからホットの切り替えをするためには、全商品を入れ替える必要があります。そうなると、作業の負荷を考えると『1列だけホットにする』ことはあまり効率的ではないのです。ただ、そのために切り替えのタイミングが遅れてしまうと、初秋のように『ホット飲料のニーズは微増しているものの、まだコールド飲料のほうが売れる』という時期に、ホット飲料のニーズを逃してしまうかもしれません。そのために弊社では、2列のうち1列だけをホットに切り替えられる期間を設けています。寒さが本格化する前にホット商品をお客さまに提供し、『ダイドーの自販機はもうホットを置いてくれているんだな』と実感いただくことで、消費者ニーズを逃さないようにしています」(森口氏)


ダイドードリンコ株式会社 自販機営業企画部 自販機戦略グループ 森口俊氏

外部データも活用して販売予測をより精緻に

自販機による売り上げを伸ばすためには、自販機の台数を増やすだけでなく、1台当たりの売り上げを伸ばすことも当然必要となる。同社で自販機営業企画部 自販機戦略グループ アシスタントマネージャーを務める竹重美咲氏は、次のように説明する。

「弊社では、『ブラックコーヒーとお茶が売れる自販機』、『炭酸や果汁など甘い飲料が売れる自販機』など、自販機を7つのグループに分類しています。そして、過去の売り上げデータを分析して、グループごとに売れ筋となる商品カテゴリーを充実させるセットを展開しています。それをベースに営業担当者が同じ商品カテゴリーに属する商品のなかで特に売れそうなものを選定し、他の商品と入れ替えるなどして、自販機1台ごとの売り上げを増やそうと考えています」(竹重氏)


グループによって、自販機内の商品の割合が異なる

ただし自販機から取得できるデータは、商品を補充する週1回などのタイミングで、何がどれくらい売れたかという販売実績のみだ。そのため、販売予測の分析精度を高めるために、ルート営業が取得してくる周辺情報、近隣のコンビニエンスストアや量販店のPOSデータ、調査会社から提供される消費者データも加味しながら、より消費者のニーズに近い商品を展開できるように工夫している。

「各飲料メーカーが参加する全国清涼飲料連合会では、各省庁のデータを活用して廃棄ロス、機会ロスを減らそうという試みも行っています。たとえば、気象データを活用して販売予測を立てることで、急に寒くなった時期にホット商品の展開が間に合わない、あるいは急に暑くなったためにホットの商品が売れ残るといった事態を防ごうという試みです」(竹重氏)


ダイドードリンコ株式会社 自販機営業企画部 自販機戦略グループ アシスタントマネージャー 竹重美咲氏

さらに、同社にとっては自販機に比べて売り上げ規模は小さいものの、実店舗での販売も貴重なデータ源となる。実店舗は、実際の商品を手に取れることから自販機よりも目新しい商品が売れやすい。そのため、新規性の高い商品は実店舗で販売し、そこで手に入れた購買データを分析して自販機での商品展開にも生かしているという。現在、好調な売れ行きを見せる株式会社ファンケルとの協業製品「大人のカロリミット はとむぎブレンド茶」は、その一例だ。

データ活用によって見直された従来の販売計画

2015年1月には、自販機営業企画部内に、スタッフ3人で構成されるデータ分析専門の販売分析チームを設置した。量販店のPOSデータのような膨大な外部データを活用した商品入れ替え施策は、同分析チームの手によって実現したものだ。

「これまで、それぞれの自販機にどの商品をセットするのかは、営業担当者の勘と経験に大きく頼っていました。しかし、分析チームがデータをもとに自販機のグループごとに商品セットを展開するとともに、営業担当者の経験値に基づく情報と組み合わせて商品の入れ替えを行った結果、以前よりも売り上げが伸びました」(森口氏)

このようなデータドリブン戦略を推し進めていくには、さらなるデータ、特に消費者データの活用が欠かせない。そこでダイドードリンコが新たに取り組んだのが、IoT自販機こと「Smile STAND(スマイルスタンド)」の開発と推進だ。後編では、その詳細と、同社のデータ分析のこれからについて伺う。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)一般社団法人日本自動販売システム機械工業会 自販機普及台数及び年間自販金額(2016年度版)(外部サイト)
(*2)一般社団法人日本自動販売システム機械工業会 自販機普及台数及び年間自販金額(2009年度版)(外部サイト)
(*3)ダイドードリンコ株式会社(外部サイト)

プロフィール

ダイドードリンコ株式会社 自販機営業企画部 自販機戦略グループ シニアマネージャー 曽根 早紀氏

大手消費財メーカーの研究開発職を経て、2011年にダイドードリンコ株式会社へ入社。2015年に自販機営業企画部にてデータ分析の専門チームを立ち上げ、データ分析からの気づきと営業現場の知見や経験を「ブレンド」させることにより自販機ビジネスを変えていくことにチャレンジ中。

ダイドードリンコ株式会社 自販機営業企画部 自販機戦略グループ アシスタントマネージャー 竹重 美咲氏

マーケティング専業会社にてマーケティングリサーチや顧客情報、POSデータ分析の担当を経て、2015年にダイドードリンコ株式会社へ入社。自販機の販売データをもとに、売り上げ向上のための提案や施策の展開を推進している。

ダイドードリンコ株式会社 自販機営業企画部 自販機戦略グループ 森口 俊氏

大学卒業後、2015年にダイドードリンコ株式会社へ入社。流通営業部門での営業担当を経て、自販機営業企画部にて販売実績データの分析や施策の効果検証、マネジメントに用いる帳票の整理などの業務を担当している。

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