マーケティング戦略

ダイドードリンコが明かす自販機ビジネス[後編]――飲料販売の先にあるビジネス

記事内容の要約

  • ダイドードリンコが新しい自販機マーケティングの切り札として展開を進めているのが、IoT自販機「Smile STAND」
  • 「Smile STAND」は売り上げデータ以外にも、精緻なマーケティングデータの取得が可能
  • ダイドードリンコでは、飲料の販売のみならず、自販機を地域の情報インフラとして活用する方法を探っていく
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この記事の前編を読む

国内飲料事業の売上高の約8割を、自販機であげているというダイドードリンコ。自販機ビジネスの市場全体がやや右肩下がりの傾向にある現状を打開するためには、より深い顧客理解とマーケティング戦略の実現が必要――。そう考えた同社の次なる一手が、IoT自販機「Smile STAND(スマイルスタンド)」の展開だ。Smile STANDを普及させることで、どのような課題を解決できるのか。自販機の進化と、ダイドードリンコが描く自販機ビジネスの未来図について聞く。

なぜ、自販機はコンビニに負けているのか

飲料自販機の強みは、24時間365日、いつでも飲み物を買えることだ。しかし、今ではコンビニエンスストアや24時間営業のスーパーマーケットがその役割を担っており、自販機市場は縮小傾向にある。このような厳しい現状に対して、ダイドードリンコ株式会社(以下、ダイドードリンコ)が進めているのが、専用アプリとつながるIoT自販機「Smile STAND(スマイルスタンド)」の全国展開だ。

同社の経営戦略部 事業開発グループ アシスタントマネージャーを務め、Smile STANDの企画開発にも携わった西佑介氏は、現在の状況を次のように語る。

「『24時間365日買える』という特徴だけでは、もはやコンビニやスーパーとの差別化はできません。従来にない新しい価値を自販機に付加することで、お客さまにもう一度自販機を使ってもらいたい。この想いが、Smile STANDの出発点です」(西氏)


ダイドードリンコ株式会社 経営戦略部 事業開発グループ アシスタントマネージャー 西佑介氏

スマホと連携するIoT自販機「Smile STAND」

Smile STANDの概要を見てみよう。

まずユーザーは、事前に専用のスマートフォンアプリ「DyDo Smile STAND」をインストールしておく。Smile STANDに対応した自販機で飲料を購入する際にアプリを立ち上げると、「ポイントゲット」ボタンが表示される。飲料購入後に、自販機の左下にあるパネルの一部が赤く光るので、「ポイントゲット」ボタンを押してスマホを近づけると、自販機との間でBluetooth通信が行われ、アプリにポイントが追加される仕組みだ。獲得したポイントは、楽天スーパーポイントやLINEギフトコードに交換できるほか、人気ゲーム内で使えるコインと交換できる。


Smile STANDの実機

商品を購入すると、ポイントなどの特典が得られる施策は珍しくはない。よくあるのは規定個数を購入すると同じ商品がもらえるサービスや、たまったポイントに応じて応募できるプレゼントキャンペーンなどだ。しかし、ダイドードリンコが重視したのは、生活に身近なサービスに役立つポイント制度にすることだった。

「現在、ポイントの交換先として、楽天やLINE、人気ゲームなどとコラボレーションしています。というのも、自販機をどうすれば生活の一部に組み込めるかということを考えているからです。自販機で飲料を購入する時間は、ほんの3~5秒程度。1日のなかでは、ほとんど接点がないといえるレベルです。そうであれば、同じ商品をもらえるよりも、多くの人が日常的に利用しているサービスにポイントを使えるようにするほうが、お客さまにとっても魅力があり、メリットも大きいのではないでしょうか」(西氏)

ポイントの交換先を外部の人気サービスにしているのは、新たな顧客層を獲得するためでもある。

「一般的に自販機の客層は、30~50代が中心です。しかし、Smile STANDのターゲットは20~30代男性。スマートフォンと連携する仕組みは、比較的若い世代との親和性が高いと思っていますので、これによる顧客の新規開拓を考えています」(西氏)

そのほかにも、アプリはSmile STAND対応自販機の位置検索機能を備えているほか、飲料購入時に自販機の半径1km圏内にある飲食店や美容院などの店舗情報が提供される「Smile Town Portal」を利用することもできる。Smile STANDは2016年4月に実証実験を始め、2018年1月末の時点で、東名阪を中心に全国で5万台を展開している。


「Smile Town Portal」での情報提供の仕組み

消費者を捉えるためのデータ活用

ポイントサービスによって新規顧客の獲得を狙うダイドードリンコだが、Smile STANDを展開する真の目的は「データ活用」にあると西氏は語る。

「自販機ビジネスは、無人接客であるため、実際の購入者や周辺にいる見込み顧客の把握が難しい。この課題を解決することが、Smile STANDの狙いのひとつでもあるのです。たまったポイントを利用するには、生年月日や性別などのユーザー情報を登録してもらう必要があるのですが、それによって購入者の属性と購入履歴を把握できます。これらのデータを使って販売予測をさらに精緻に行うことで、将来的にはその地域のお客さまが求める商品が確実に自販機にセットされているという環境づくりができます」(西氏)

従来は1週間に1度など中期単位でしか取得できなかった販売実績データが、これからは「水曜日の何時に、どの自販機でどの商品が何本売れた」といったリアルタイムのデータとして把握できるようになる。現在はまだデータを円滑に取得できる環境を整えているところだが、いずれ在庫把握や補充タイミングの最適化につながれば、社内の生産性向上にも期待できるはずだ。

全国28万台の自販機を活用してビジネスを拡大

ダイドードリンコがSmile STANDの展開で目指しているのは、飲料事業の売り上げを伸ばすことだけではない。西氏は次のように話す。

「Smile STANDを単に自販機のIoT化だけで終わらせるつもりはありません。将来的には、全国の自販機をSmile STANDにすることで、街の情報インフラとなるプラットフォームを構築できたらと考えています。たとえば、地域に点在する自販機とスマートフォンを連携すれば、お年寄りや子どもの見守りサービスを提供できます。あるいは、自販機の前を通った方に、お得な情報をお知らせするというのもいいでしょう。もちろん技術的な課題もあるので、実現のためには検討すべきことはたくさんありますが、弊社にとって、自販機は最大の資産です。全国28万台の機器を活用すれば、飲料販売以外のビジネスにつながると思っています。それが次のステップであり、チャレンジになるのです」(西氏)

街や環境に溶け込んだ自販機が、歩いている人々に思いがけないサービスや情報を提供する。これは、IoT自販機の設置を推し進めるダイドードリンコならではのデジタルトランスフォーメーションの未来図だ。同社は、「こころとからだに、おいしいものを。」というスローガンを、飲料品の枠を超えて体現していくことだろう。

プロフィール

ダイドードリンコ株式会社 経営戦略部 事業開発グループ アシスタントマネージャー 西 佑介氏

大学卒業後、2005年にダイドードリンコ株式会社へ入社。「Smile STAND」をはじめ、同社の基幹事業である自動販売機チャネルの事業領域拡大に関するプロジェクトをリーダーとして遂行している。

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