組織づくり・人材育成

“働き方改革”はデータで解決! 科学的アプローチによるオフィス緑化

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少子高齢化による労働力不足が深刻化するなか、政府が掲げる「働き方改革」には、在宅勤務の導入、長時間労働の改善、兼業や副業の承認など、企業が取り組むべき課題が多い。そんななか、オフィス内を緑化し、従業員のメンタルヘルスの状況を解析して企業価値の向上につなげるサービス「COMORE BIZ(コモレビズ)」が2017年にスタートした。

提供会社であるパソナ・パナソニック ビジネスサービス株式会社の代表取締役副社長である岩月隆一氏と、同サービスのベースとなるエビデンスの研究を行っている日本テレネット株式会社の中野卓立氏、菰池弘氏に、オフィス緑化におけるデータの活用法と、同サービスの目指す働き方改革への寄与について聞いた。

労働者一人ひとりの内面に働きかける改革を

少子高齢化に伴う労働力人口の減少が進むなか、「働き方改革」の議論が佳境を迎えている。厚生労働省の関連サイトには「非正規雇用の処遇改善」や「長時間労働の是正」、テレワークや副業(複業)など「柔軟な働き方がしやすい環境整備」といった幅広いテーマの話題が並んでおり、多くの企業が取り組むべき喫緊の課題であることが示されている。

しかし、ここで忘れてはいけないのは、働き方改革の“主役”はあくまで一人ひとりの労働者である点だ。たとえ形式的に労働時間に制限を設けたところで、労働者のストレスを軽減し、モチベーションを向上させるような環境が整わなければ、生産性の向上は期待できないだろう。

では、労働者のメンタルヘルスの状況を定量的・科学的に把握し、効果的にストレスを軽減する方法はないのだろうか。その解の1つを提示したのが、オフィス空間設計サービス「COMORE BIZ(コモレビズ)」(*1)である。

ストレスとオフィス緑化の関係性を解明する

COMORE BIZは、オフィス内の緑化と従業員のストレスの関係性を科学的に証明した研究結果に基づいて、ストレス軽減に最適な植物を配置する空間デザインサービスだ。


COMORE BIZの導入事例より。左は、株式会社ジンズが運営する「集中」をテーマにしたワークスペース「Think Lab」、右は東京建物株式会社の本社オフィス。

サービス立ち上げのきっかけは、京都に本社を置く日本テレネットが「けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)」において産学連携の先端研究事業に参画した2014年にさかのぼる。

「最初は太陽光エネルギーの余剰電力を利用したオフィス内での野菜栽培などを研究していたのですが、そのとき職員から『オフィスに緑があると良いね』という声をよく聞きました。そこで、植物のメンタルヘルスへの影響度や、知的生産性との関係を研究することにしたのです」(日本テレネット ICTユニットリーダー 中野卓立氏)

その研究の過程で中野氏らが出会ったのが、国立大学法人である豊橋技術科学大学の松本博名誉教授(建築・都市システム学)と、長崎大学の源城かほり准教授(構造工学)だ。日本テレネットは、松本氏が発表した論文(*2)などを基礎として、フィジビリティスタディー(実行可能調査)と2度の実証実験を2015年から2017年にかけて実施し、オフィス緑化とストレスの関係性の解明に努めた。

事業化にあたっては、提供主体であるパソナ・パナソニック ビジネスサービスが設計を行った。また、協力会社として、空間デザインの設計や植栽を含めた施工管理、導入後のメンテナンス部分において「青山フラワーマーケット」を運営する株式会社パーク・コーポレーションが参画した。

植物が軽減するストレス――『緑視力』への注目

人間のストレスを軽減し、生産性を向上させるためのオフィス緑化のあり方については、3つの観点から実証が試みられた。①オフィス内に配置する植物(緑)の適切な割合、②植物を設置してから効果を発揮するまでの時間推移、③ストレス軽減に効果のある植物の種類である。それぞれついてもう少し詳しく見ていこう。

まず、①の「オフィス内に配置する緑の適切な割合を示す指標」には、建築・土木分野で広く用いられる「緑視率」(人間の視界を占める緑の割合)が採用された。

そして、室内の印象をアンケート形式で評価する「空間満足度」と、タイピングや数値計算などで能率を測定する「知的生産性テスト」の結果を複合的に勘案し、最適な緑視率との関係性を測定。すると、個人差はあるものの緑視率は10~15%がベストであり、「最も癒される割合がある」ことが証明された。

次に、②の「植物設置後のストレス度合いの推移」については、心拍数や指先脈波、アンケートなどを組み合わせて多項式化し、「ストレス値」を算出。植物を置く前の状態から測定をスタートした。植物設置後の2週間目までは環境変化に伴い一時的にストレス値が上がるケースもあったが、4週間目、6週間目と時間が経つにつれてストレス値は軽減していった。

「実証実験の段階では、さまざまな角度からデータを収集しました。オフィス環境の測定では温湿度計やCO2計、騒音照度計を使い、ストレス値の測定では心拍数や指先脈波のほかに、人体温度、唾液アミラーゼの活性値や眼精疲労度なども利用しました。」(中野氏)


実証実験で明らかになった植物のあり・なしによるストレス軽減効果。
※最適緑視率のグラフは先行研究

最後に、③の「ストレス軽減に効果のある植物」については、詳細は非公開だが、植物の種類によって大きく効果が分かれた。なお、「造花・人工樹木」についてはイミテーションであることが知覚された瞬間から効果が大きく減少することが分かっている。

COMORE BIZが生み出す副次的効果とは

こうした実証実験で得た植物配置の科学的知見をもとに、日本テレネットは、最適な緑のレイアウトを決める「GMH(グリーンメンタルヘルスケア)アルゴリズム」を独自に開発した。サービス導入企業それぞれに、測定した従業員のストレス値をもとに、オフィス内での観葉植物の最適な配置を案内できるようにしている。

また、導入企業が従業員のストレス状態を定常的に把握できるように、「ストレスレポート」という管理画面からストレス推移を確認できるようにもしており、ストレス値の状況確認や植物の入れ替えといったメンテナンス計画も効率よく実施できる。


ストレスレポート画面。管理者用画面では、従業員のストレス状況を表示し(左)、従業員用画面では主に心理ストレスと生理ストレスの総合ストレス状況を表示する(右)。

ストレス軽減効果と個人の生産性向上の関係性については今後の研究課題であるとしながら、日本テレネットのシニアプランナー菰池弘氏は次のように語った。

「オフィスへのCOMORE BIZの導入には、従業員のストレス値が下がって集中力が高まるほか、副次的効果もあります。たとえば、人事など管理部門が急激にストレス値の急上昇した従業員を察知することで、そのストレス要因やメンタルな問題に素早く対処ができ、休職や離職の抑止につながるのです」(菰池氏)

ビジネス展開と働き方改革への寄与

最適な植物配置とストレスマネジメントは、快適なオフィス環境の構築につながることから、企業の魅力を高め、リクルーティングや離職率の低下といった効果も期待できる。企業のブランディングとして位置付けることも可能だろう。

ただ、導入については従業員個人の裁量で行えるものではない。ここで鍵となってくるのが「総務」部門の役割だとパソナ・パナソニック ビジネスサービス代表取締役副社長 岩月隆一氏は指摘する。

「働き方改革における労働環境の改善において、大きな役割を担うのが企業の間接コストを担当する総務部門です。海外では“戦略総務”という考え方がすでに30年以上前から定着し、経営層に最も近い存在として認知され予算も与えられています」(岩月氏)


パソナ・パナソニック ビジネスサービス大阪本社の様子

変化の大きな時代に企業価値を高められるかどうかは、ひとえに総務の働き次第と語る岩月氏。「あとは最終的にそこに投資するかどうかは経営判断となります。従業員の健康のために投資できるか、経営者としての覚悟が求められます」

働き方改革においては労働時間の短縮や、それに伴うコスト削減に目が向けられることが多い。しかし改革の本来の目的は、働く従業員に必要以上の負担をかけることなく、企業の価値・成果を高めることにある。この視点に立つのであれば、オフィス緑化の持つ可能性についても見えてくるのではないだろうか。

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