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最新テクノロジーで変わるメディアの在り方――「メディア×AI」

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メディアとテクノロジーの関係について、3回にわたり議論する連載の第2回。前回はメディアとブロックチェーンについて触れたが、今回は「メディア×AI」をテーマとして取り上げる。

機械が記事を書き、その中から最適な記事を配信して読み上げる。それを読んだ読者の感想がフィードバックされ、次に配信される記事の内容、文章量、使われる単語がメンテナンスされていく。メディアビジネスが広告収益に頼っている以上、ジャーナリズムにも、こうした生活者の行動データを使ったマーケティングが持ち込まれるのは仕方のないことかもしれない。

同じような情報に囲まれ、心地のいい世界。そんな世界を前提にしたとき、「発信すべきだ」と思うニュースを主体的に取材し、配信するメディアの価値は、薄れてしまうのだろうか。また、行政や企業の情報が公開され、それらの意思決定の過程における透明性が増せば、腐敗を追及するジャーナリズムの役割は縮小するのだろうか。

第2回では、AIがメディアやジャーナリズムに入り込むと、何が起きるのかを考えてみたい。

AIでメディアを運営する時代へ

ニュース制作は、労働集約型ビジネスである。記者と編集者、デスクと呼ばれる現場責任者、それにカメラマンもいる。なかでも、一番リソースが割かれているのが記者である。事実、一般社団法人 日本新聞協会によると、2017年の同協会加盟97社の従業員数約4万2000人のうち、半分の1万9000人が記者で構成されている(*1)。一方、米国では新聞社、出版社などメディア業界の雇用者数の総計が約38万人となるが、ジャーナリスト(記者、編集者、通信員の総称のため単純比較はできないが)はそのうちの約15%だ(*2)。

この両国における記者数の割合の差については、米国のある調査が参考になるだろう。この調査によると、米国メディアの40%は、なんらかの記事生成自動化ツールを利用しているという(*3)。たとえば、アメリカの大手通信社であるAP通信は2013年にWordsmithというソフトウエアを導入し、2014年時点ではすでに四半期ごとに3000件もの企業の決算報告を作成している。Wordsmithを活用すれば、1週間に何百万、1秒間では2000以上の記事を作成できるという(*4)。たくさんの記者を抱えていても、これだけの記事を短期間に、また短時間に作成するのは現実的に難しいだろう。

また、中国の通信社である新華社(*5)も、2018年1月、ニュース制作にAIを活用していく方針を発表した(*6)。国の予算発表やスポーツの試合結果を受け、AIが文章を自動で生成していく。こうした機械ライティングにより、メディアは運営コストを削減しながら、記事を大量に生み出すことが可能になる。

機械がコンテンツを作成しているイメージ画像
アルゴリズムなジャーナリズム

では、大量に生み出された記事は、どう流通していくのか。2016年に、FacebookがMessengerにBot機能を追加してから、New York TimesやWashington Postといった米国の新聞社は、このサービスこそが最先端だとばかりに力を入れ始めている。

2017年9月の時点でFacebook Messengerの月間アクティブユーザーは、約13億人(*7)。スマートフォンの普及で、コンテンツやニュースの閲覧時間よりも、友人同士のコミュニケーションに消費する時間が増えたことが要因として考えられる。メディア側からの発信も、こうしたコミュニケーションツールに埋め込まれていく。ただ、読者から見れば、配信される記事が最適化され、話しかければAIが自動応答してくれるチャットボットサービスは、メディアにもインタラクティブ性をもたらすだろう。

スタートアップ企業は、さらに革新的である。中国のBytedance社が運営するニュースアグリゲーションアプリのToutiau(今日頭条)は、2012年にサービスを開始し(*8)、1日のアクティブユーザー数が1億2000万人を超えるとされる。Toutiauでは、基本的にアルゴリズムがウェブ上のニュースを集めて配信しており、すでに多額の投資を受け、その企業価値は2017年8月時点で200億ドルと言われている(*9)。

このように、メディア運営側が効率的なコンテンツ運用を目的に、AIの導入を進めている。AIがニュースを制作し、配信されていく。それでも、まだリアルな出来事が伝えられている間はいいが、やがて、AIが勝手にニュースを作り、配信する可能性もある。

透明性を増した社会でメディアの役割は?

これまでメディアは、ニュースと生活者のつなぎ役として位置付けられてきた。そして現在、メディアは記事の自動生成やAIによるアグリゲーションなど、その効率化を進めている。だが、行政や企業に情報公開の義務が求められる社会になれば、国民はさまざまな情報へ簡単にアクセスできるようになる。CODE for AMERICA(*10)といったシビックデータと呼ばれる行政データのオープン化などは、ニュースの受け手であるわれわれの意識も変えるだろう。政治、行政の記録が、ブロックチェーン技術などで透明性を増せば、腐敗を追及するといったメディアの役割は縮小してしまうのではないか。

ロビン・ダンバーの『人類進化の謎を解き明かす』(*11)に、人類と類人猿との違いは、コミュニティー形成において、親しみの濃淡による友人の「層」の数が違うとある。抽象思考を処理できる人類は、親しい友人の周りに、顔見知り、知人といった複数の層を形成しながら社会生活を行っているという。インターネット以前、その最大のコミュニティーは「国家」だった。そして、国家という想像の共同体を生み出すのに大きな役割を担ったのが、メディアだった。

メディアがAIを利用し、個人の好みにあったニュースだけを配信することになれば、その人の趣味・趣向に偏ったニュースが届くことになる。興味のある情報、同じ考えを持った友達だけに囲まれた世界は心地よい反面、多様性と広がりに欠ける。

マスメディアが国民に多様なニュースを伝えている間は、自分の生活の外側に違う世界や「国家」があることを意識できた。テクノロジーが、言語も価値観も心地よく自動翻訳してくれる時代。そんな環境では、多様なニュースを伝えるメディアの役割は終わってしまうだろう。

【参考記事】
最新テクノロジーで変わるメディアの在り方――「メディア×ブロックチェーン」

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