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最新テクノロジーで変わるメディアの在り方――「メディア×音声アシスタント」

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メディアとテクノロジーの関係について、3回にわたり議論する連載の第3回。これまで2回にわたり、ブロックチェーンAI(人工知能)がメディアに応用された未来について考えてきた。今回はAIのインターフェースの一つ、「音声アシスタント」機能を持ったスマートスピーカーとメディアの関係について考えてみたい。

やがて、人は人間よりも機械が話すことを信用するようになる?

音声アシスタントとは、機械操作を音声で行う機能のことで、AmazonやGoogle、AppleなどのIT企業がプラットフォームを提供している。一般に販売されるスピーカーや機械は、ユーザーの質問をAIが分析し、最適な回答を用意する。Amazonの「Echo」やGoogleの「Google Home」といったスマートスピーカーは、音楽をリクエストしたり、明日の天気を聞いたりできる。家電とネットワーク上で接続すれば、テレビや照明器具のオンオフも音声で操作可能だ。

Amazonのスピーカー「Echo」は、2015年に販売開始され、2017年9月末時点で2000万台以上普及している(*1)。主要な自動車メーカーとも提携し、カーナビを音声で操作できる環境を整える準備も進めている(*2)。つまり、人間とコミュニケーションの取れる機械が、家や車といった生活空間に入ってくる。

日々、機械やその背後にあるAIが人間とコミュニケーションを取っていれば、その人の好みもだんだんと把握していくだろう。機械の返答が的確であれば、やがて、人は人間よりも機械が話すことを信用するようになるかもしれない。形状も無機質なスピーカーではなく、ソニーのaiboやトヨタのKIROBO miniのようにかわいい外観のロボットであれば、親密度が高まりやすく、さらに信頼度が増す。そして、信頼を寄せている機械たちが特定の商品を勧めてきたら、購買率はどの媒体よりも高い数値を記録するかもしれない。

スマートスピーカーの登場で、音声メディアは新たな展開へ

米国CNBCによれば、Amazonは、P&Gなどと音声広告の実験を始めるという(*3)。いままで、音声メディアといえばラジオしか存在しなかった。株式会社電通が発表している日本の広告費によれば、そのラジオ広告市場は、2008年度が1549億円(*4)、2017年度は1290億円(*5)と成長が止まっている。しかし、スマートスピーカーのような話す機械の登場により、音声でのコミュニケーションを利用した新たな展開が訪れるかもしれない。

2018年3月21日にニッポン放送でオンエアされた株式会社博報堂iディレクション局シニアクリエイティブディレクターの須田和博さんがパーソナリティーを務める「スダラボラジオ~音の逆襲」は、そんな「音声」の可能性を感じられた番組だった。須田さんによれば、 商品名を連呼するラジオやテレビのCM手法の源流は、「さおだけー」や「豆腐ぅ」といった町を流す売り子の呼び込みにあるという。また、宮崎駿監督の映画「崖の上のポニョ」公開前に、「ポニョ」という歌詞を連呼する主題歌がメディアを席巻していた。これも、実は優れた広告手法ではないかと指摘していた。

これから、ちょっとした効果音やサービスを始める時の音楽、フレーズなどが、マスメディアのCMに代わり、話す機械やロボットから連呼されるかもしれない。いや、量販店に派遣されるメーカーからの応援店員のように、特定の商品をオススメするかもしれない。

ロボットのイメージ

そして、その声質も人工的につくってしまうことが可能だ。例えば、Amazonには、「Amazon Polly」という音声提供サービスがあり、100万文字のテキストを読み上げる音声を、わずか4ドルで利用できる(*6)。また、中国企業iFLYTEKも、合成音声で広告配信を行っている。何千種類もの音声が合成できれば、当然ABテストをしながら、購買率の高い音声にチューニングされていくだろう。

「モノでなく自分を売れ」という営業の格言があるが、この格言をデジタル的に実現するスマートスピーカーは、自らをユーザーに最適化し、信頼を勝ち取っていく。

スマートスピーカーにより、メディアの存在領域は縮小する

ここまでで述べたように、音声も内容も最適化できる機械が人間とのコミュニケーション機能を持つと、メディアの役割を担ってしまう。いままで、メディアとして成立するためにテレビはテレビ局、ラジオはラジオ局が必要だった。人間と商品のコミュニケーションを考えるのは、広告業界の役割だった。ところが、人間との心地良いコミュニケーションを機械が行うと、人間と機械を取り持つ媒体=メディアの存在価値は小さくなっていく。

こうした音声アシスタント機能のついたスマートスピーカーは、2018年には5600万台が販売される見通しだという(*7)。また、米国調査会社JUNIPER RESEARCH社は、今から5年後の2022年には、2.5億台にまで増加すると予測している(*8)。

前回考察したように、メディアがAIを利用して記事制作の効率化を図るのは、利潤を最大化するためには正しい手段だろう。しかし、その結果、スマートスピーカーのようなインターフェースとしてのハードウェア自体が人間と直接コミュニケーションを取れるようになると、メディアの存在領域は小さくなっていく。今後、広告は「さおだけ」屋さんのような、直接音で聴くものに変わっていくのかもしれない。

【参考記事】
最新テクノロジーで変わるメディアの在り方――「メディア×ブロックチェーン」
最新テクノロジーで変わるメディアの在り方――「メディア×AI」

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