マーケティング戦略

スターバックスが考える“スターバックスらしさ”とは何か

記事内容の要約

  • スターバックス コーヒー ジャパンは、顧客の体験価値を向上させるために、ロイヤルティープログラム「Starbucks Rewards」を2017年9月から開始した
  • スターバックス コーヒー ジャパンは、マス広告を使わない代わりに、顧客とのコミュニケーションの一つとしてSNSを活用している
  • スターバックスの店舗スタッフ(パートナー)を通じて構築される顧客と密接な関係は、「スターバックスらしさの一つ」だと顧客に受け取られている
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世界的なコーヒーストアを展開するスターバックスは、高いブランド力を強みとする企業の一つだ。飲食ビジネスは、いかに良質な顧客体験を店舗で提供できるかが成功の鍵であり、それがロイヤル顧客の獲得につながる。そしてスターバックスは、まさしく店舗を舞台にしてブランド価値の向上に情熱を注いできた。

日本では、2017年にスターバックス コーヒー ジャパンが新たにデジタルマーケティング施策を始めた。それはどのような効果を狙ったものなのか。同社のデジタル戦略責任者に話を聞いた。

マス広告並みの規模を誇るSNSを活用

1971年に米国シアトルで誕生したスターバックスは、セカンドウェーブコーヒーを代表するコーヒーストアの一つとして全世界でそのブランドを確立した。日本においても同様で、1996年の上陸以来、コーヒー愛好者のみならず、幅広い層から支持されている。

スターバックス コーヒー ジャパンのマーケティング戦略の特徴は、一般生活者をターゲットとしていながらテレビCMなどのマス広告をほとんど使わない点にある。その代わりに、顧客とのコミュニケーションの接点の一つとして活用しているのがSNSだ。スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 デジタル戦略本部 本部長の濵野努氏は、次のように説明する。

「当社では、ブランドの価値を伝えるべき場所は『店舗』だという考えがあるのでマス広告はほとんど使いません。ただ、その代わりにSNSを店舗外でのお客さまとつながる場所として活用しており、企業として伝えたいメッセージを発信し、新商品の認知拡大、啓発などを行っています。当社のTwitterのフォロワー数は約440万(2018年6月時点)と、リーチできる規模はマスメディア並みなのでタッチポイントとして十分に機能しています。SNSは情報の内容を自社でコントロールできる点が強いですね」(濵野氏)


スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 デジタル戦略本部 本部長 濵野努氏

顧客とのコミュニケーションの手段としてSNSを活用しているスターバックス コーヒー ジャパン。ただ、顧客とつながるためのもっとも重要で大きなチャネルが、2018年6月時点で全国1363店にも及ぶ「店舗そのもの」であることは変わらない。あくまでも手段の一つとして、SNSが加わったというわけだ。


スターバックス コーヒー ジャパンのTwitterアカウント(2018年8月10日時点)

顧客から支持される“スターバックスらしさ”とは

同社には接客マニュアルというものが存在しない。その代わり、「パートナー」と呼ばれる店舗スタッフは、顧客への「おもてなし」を各自で考えて実行する権限が与えられている。たとえば店内の黒板に描かれた「お薦め商品」のイラストは、すべてパートナーによる手描きだという。また、手渡されるドリンクカップにメッセージやイラストが添えられていることもある。さらに、地域の清掃活動を行ったり、中学生の職場体験や児童向けの紙芝居や絵本のおはなし会を行ったりするなど、地域コミュニティーとのつながりを深めるための活動にも、パートナーは積極的に取り組んでいる。

コーヒーがおいしい、店の居心地の良いといった理由で顧客に支持されている面もあるが、スターバックスの魅力は、このような活動によってブランドと顧客との間に生まれる情緒的な結びつきにこそある。これを「スターバックスらしさの一つ」だと好意的にみる顧客は多い。

店舗のデザインにおいてもそうだ。メディアで取り上げられ、話題になるような斬新で洗練されたデザインの店舗がある一方、地域の街並みになじむことを意識したデザインの店舗もある。ブランドを押し出し過ぎず、地域との共存を優先する姿勢もまた、スターバックスらしさの一つである。


スターバックス コーヒー 京都二寧坂ヤサカ茶屋店 外観

「人や地域との結びつき」を強くしようという企業姿勢は、デジタルの世界でも変わらない。一般的にデジタルマーケティングは、データ分析に基づいて「最適化」や「自動化」を行い、いかに効率的に顧客へリーチしてコンバージョンを得られるかに焦点が置かれやすい。

「少ないコストでお客さまへアプローチできるかを考えることも重要ですし、それがデジタルマーケティングの真骨頂ともいえるでしょう。しかし、それは当社本来の姿勢ではありません。いかにお客さまの店舗体験を向上させて、エンゲージメントを強くできるか。この考えはデジタル施策においても変わりません」(濵野氏)

では、顧客とのつながりを強くするために、どのようにデジタルを活用できるのか。スターバックスが取り組んだのは、プリペイドカードを使ったロイヤルティープログラム(*1)だった。

会員プログラムによるOne to Oneマーケティング

2017年9月、スターバックス コーヒー ジャパンは、「Starbucks Rewards」という会員向けロイヤルティープログラムを開始した。これは、プリペイドカード「スターバックスカード」を公式アプリ、もしくはウェブページから登録すると参加できるようになっている。店舗での購入回数に応じてポイント(同社では「Star」と呼ぶ)が貯まり、その数に応じて700円(税抜き)以内の好きな商品と交換できる「Reward eTicket」がもらえたり、会員限定の先行販売や各種イベントに参加できたりする。

同社には、以前から「My Starbucks」というオンライン会員サービスがある。これはメールアドレスとユーザー名、性別、生年月日、都道府県だけで登録でき、メール配信による情報取得やオンラインストアの利用などが可能になるサービスだ。両者の違いについて、濵野氏は次のように説明した。

「My Starbucksで受けられる特典サービスの種類は限定的ですが、Starbucks Rewards会員はStarを貯めて商品がもらえる特典を受けられます。Starbucks Rewardsは、ロイヤルカスタマーに向けた会員プログラムなので、お客さまの体験価値を高めることを目的としています」(濵野氏)

Starbucks Rewardsは、プリペイドカードである「スターバックスカード」の登録が前提となっている。そのため会員になるには、氏名や住所など、詳細な個人情報のウェブ登録が必要となる。そこで、簡易情報の登録のみで会員になれる「My Starbucks」が、いわばロイヤルカスタマー予備軍として存在している。

Starbucks Rewardsによって、どのように顧客の体験価値を向上していくのか。後編では、詳細なプログラムの内容と、開始から11カ月を経ての成果について聞いていく。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)優良顧客に対して特典を提供することで、顧客維持やリピーター増大を狙ったマーケティング施策

プロフィール

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 デジタル戦略本部 本部長 濵野努氏

大学卒業後、情報誌出版会社を経て、1993年に大手ソフトウェア開発会社に入社。オンラインマーケティング、デジタルマーケティングを統括する部門の責任者になる。2014年より大手外資系生命保険会社でマーケティング・コミュニケーション部長に就任・2017年2月より現職。

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