マーケティング戦略

Starbucks Rewardsが創出する良質な顧客体験とは

記事内容の要約

  • 2017年9月にスタートした「Starbucks Rewards(スターバックス リワード)」は、スターバックス コーヒー ジャパン初となるロイヤル顧客向けサービスである
  • Starbucks Rewardsの会員数が日本で急増している背景には、店舗スタッフ(パートナー)の存在がある
  • スターバックス コーヒー ジャパンのデジタル施策では、「効率よく成果を出す」ことよりも、「いかに顧客とつながれるか」が重要視されている
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この記事の前編を読む

2017年9月にスターバックス コーヒー ジャパンがスタートした「Starbucks Rewards(スターバックス リワード)」は、上質な顧客体験を提供するためのロイヤルティープログラム(*1)だ。多くの企業は、「効率化」や「最適化」を狙ってデジタル施策に取り組んでいるが、スターバックス コーヒー ジャパンが展開するこのサービスの狙いはそこではないという。

スタートから約11カ月、Starbucks Rewardsを使った取り組みはどの程度進んでいるのか。デジタル戦略本部 本部長 濵野努氏に聞いた。

スターバックス コーヒー ジャパン初の試み

2017年9月からスターバックス コーヒー ジャパンが始めた「Starbucks Rewards(スターバックス リワード)」は、「Star(スター)」とよばれるポイントを貯めることで、商品を無料でもらえる特典などが受けられる会員サービスだ。

Starは、支払額50円ごとに1つ付与される。会員は最初にGreen Starという緑のスターを貯めていき、1年間以内に250個のGreen Starが貯まると、次回からはGold Starが貯められるようになる。

「Gold Starが150個貯まると、700円(税抜き)以内のお好きな商品と交換できる『Reward eTicket』がもらえます。GreenとGoldで共通している特典も多く、たとえば新商品の先行販売や同日内2杯目のドリップコーヒーの優待価格、コーヒーセミナーの先行予約などは、両Star共通のサービスです」(スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 デジタル戦略本部 本部長 濵野努氏)


スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 デジタル戦略本部 本部長 濵野努氏

もともと米国本社で先行していたStarbucks Rewardsのコンセプトは、「日々、お客さまがスターバックス店舗を訪れたときの体験を向上させていく」というもの。このようなロイヤルティープログラムは、スターバックス コーヒー ジャパンとしては初の試みだ。

Starbucks Rewardsの会員となった顧客には、会員限定のサービスが提供される。スターバックス コーヒー ジャパンは、そうした会員の購買行動データなどを分析し、よりパーソナライズした提案を行うことで、顧客との関係性を深めることを目指しているという。

日本でStarbucks Rewardsが急成長した理由

Starbucks Rewardsが日本で開始されて11カ月が過ぎたが、市場の反応はどうだろうか。

「スターバックス ジャパン公式モバイルアプリの国内ダウンロード数は300万(2018年3月時点)を突破しました。また、Starbucks Rewards会員の商品購入が、売上高全体の22%を占めるようになりました。Starbucks Rewardsを先行して展開していた米国では、売上高全体に占める会員の割合が、同時点で39%と日本よりも高いのですが、日本は会員数の増加スピードが非常に速く、他国のスタッフも驚嘆するほどです。スターバックスというブランドに対する顧客の熱狂度は、他国と比べても高いのかもしれません」(濵野氏)

会員数が急速に伸びている背景には、店舗スタッフ(以下、パートナー)が来店客に対してStarbucks Rewardsへの登録を積極的に勧めていることも理由のひとつだ。

「先行してStarbucks Rewardsを展開していた他国の担当者にヒアリングしたところ、皆『成功の鍵はパートナーにある』と口をそろえたのです。われわれにとってパートナーは最大の広告塔ですから、パートナーが自発的にお客さまに勧めたいと思わないサービスは成功しません。そのため、サービス開始前には全国のパートナーに向けて、Starbucks Rewardsへの理解を深めるトレーニングプログラムを実施しました。また、Starbucks Rewardsのサービス内容だけに限った話ではありませんが、パートナーが店頭でお客さまからいただいたご意見、ご感想は、すべて本社にフィードバックしてもらっています。全国1363店舗(2018年6月30日時点)から声が届くので、サービス改善の材料としては十分です」(濵野氏)

エモーショナルな体験の提供が顧客との関係性を深める

Starbucks Rewardsを推進していくにあたり、成果指標としては「アクティブ会員率」をはじめとした数字などをKPIに設定しているという。ただし、本質はそういった定量的な指標を追うことではないと濵野氏は説明する。

「実施した施策を評価するためには、もちろん定量的な指標をもつ必要があります。しかし、それ以上に『どのような顧客体験をつくれるか』を考えて、実際にお客さまに提供していくことが何よりも重要です」

同社が2012年から取り組んできた、「ハミングバード プログラム」という東日本大地震の復興支援プログラムがある。これは、顧客が対象のスターバックス カードを発行すると100円の寄付ができるほか、購入した商品代金のうち1%相当の金額をスターバックス側が寄付するという取り組みだ。

Starbucks Rewardsはこの取り組みと連携して、会員がStarを貯めて入手したReward eTicketを、そのまま寄付(500円相当)できるようにした。その結果、相当数の寄付があったそうだ。

「これは、Starを貯めて獲得したチケットを、お客さま自身の意思で寄付できるという体験をスターバックスがサポートした取り組みです。『使うほど得をする』といった合理性だけでなく、このようなエモーショナルな体験を提供することが、ブランドと顧客のつながりを強くすると考えています。われわれは、Starbucks Rewardsを単なる『ポイントサービス』とは捉えていません」

良質な顧客体験に欠かせないパーソナライゼーション

定常的にドリップコーヒーを愛飲する顧客と、季節ごとのフラペチーノを楽しみにしている顧客とでは顧客属性に違いがある、ということは想像に難くない。より良質な顧客体験を提供するためには、情報発信などにおける「パーソナライゼーション」が重要となってくる。

Starbucks Rewards会員向けの企画として、特定のドリンクなどの購入に応じてStarをプレゼントする「Bonus Star(ボーナススター)」というキャンペーンを定期的に実施。このような取り組みを通じて、会員の購入商品の傾向や購入頻度、利用した時間とエリアなどのデータを収集し、そこに会員属性データをかけあわせて分析を行うことで、どのような会員に対してどのようにアプローチすればよいのかを探っているという。


Starbucks Rewardsの今後について語る濵野氏

濵野氏は、今後の展望について次のように語った。

「会員のデータが蓄積されれば、店舗の出店計画や商品開発などに生かせますし、提供する情報のパーソナライゼーションが高度化すれば、顧客価値も向上させられます。ただ、デジタルの世界は情報の拡散スピードがすさまじく、予想もしないような反応をもらうこともあるので、良かれと思って実施した施策がブランド毀損(きそん)になってしまう可能性もゼロじゃない。最大限の注意を払い、スターバックスらしい取り組みとはどのようなものかを考えて、Starbucks Rewardsを広めていければと思います」

スターバックス コーヒー ジャパンのデジタルマーケティング戦略は、「最適化」や「効率」といったもので考えられていない。常に“スターバックスらしさ”について自問自答しながら、顧客との関係性を高めて、ブランドをより強固にしていくための手段なのだ。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)優良顧客に対して特典を提供することで、顧客の維持や、リピーター数の増加を狙ったマーケティング施策

プロフィール

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 デジタル戦略本部 本部長 濵野努氏

大学卒業後、情報誌出版会社を経て、1993年に大手ソフトウェア開発会社に入社。オンラインマーケティング、デジタルマーケティングを統括する部門の責任者になる。2014年より大手外資系生命保険会社でマーケティング・コミュニケーション部長に就任・2017年2月より現職。

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