ビジネス創出

全国の高校への普及率は40%超――「Classi」がもたらす教育変革

記事内容の要約

  • 教育・学習のクラウドサービスである「Classi」は、サービス開始からわずか4年で全国の40%以上の高校に導入された
  • 「高校教育」という限定期間に対するビジネスと「学校のIT化」という巨大な市場ポテンシャルから、「B to B to C」のビジネスモデルが生まれた
  • Classi株式会社は、子どもの学力だけでなく、人間としての成長を促すことを最大の目的として、統合的な教育プラットフォームを目指している
  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

ビジネスをはじめ、社会のあらゆるシーンで進むIT化は、学校教育の現場においても例外ではない。政府の動きも活発化しており、文部科学省は学校のICT環境整備を拡充するべくさまざまな調査や取り組みを進めている。

そのようななか、サービス提供開始からわずか4年で、全国の高等学校の40%以上に導入された教育・学習のクラウドサービスがある。それが「Classi(クラッシー)」だ。

Classiが多くの学校から支持されている理由はどこにあるのか。そして、Classiが目指すのはどのような教育なのか。Classi株式会社 代表取締役副社長の加藤理啓氏と同社シニアデータサイエンティストの川端貴幸氏に話を聞いた。

日本の学校教育を変えたい

「Classi」(*1) は、学校教育の現場をサポートすることを目的としたクラウドサービスだ。PCやタブレット、スマートフォンなどのデバイスを通じて小学校から高校、専門学校まで多くの教育現場で利用され、新しい学校教育のカタチを生み出している。

同サービスを提供するClassi株式会社は、デジタルテクノロジーのリーディングカンパニーであるソフトバンクと、進研模試などを通じて学校教育の現場に精通するベネッセの共同出資によって2014年4月に設立された。Classi株式会社の代表取締役副社長をつとめる加藤理啓氏は、設立のきっかけについてこう話す。

「日本は、子どもたちの約98%が高校に進学(*2) する、世界でも類を見ないほど教育レベルの高い国です。それにもかかわらず、日本の学校教育は『海外と比べると遅れている』と言われることがあります。

たとえば、日本人は『自己の意見をあまり主張しない』という点があげられます。しかし、私が海外のメンバーと一緒にプロジェクトを経験してきたなかで感じたのは、日本人は、チームで作業を進める際に、ほかのメンバーの体調を配慮したり、遅れている人をサポートしたりすることが自然にできるということです。その結果、日本人がメンバーに入ることでプロジェクトが格段にうまくいくケースが多かったのです。この、誰かに指示されなくても、『全体を見渡しながら、すべきことを見つけられる』というのは、世界を見まわしても非常にまれな能力です。今後、こういった長所を伸ばしていく学校教育が実現できれば、日本の子どもたちの将来はより明るいものになるはずです。それは、社会全体の課題解決にもつながるのではないかと考えています」(加藤氏)


Classi株式会社 代表取締役副社長 加藤 理啓氏

加藤氏は、同社を起業する以前はソフトバンクで新規事業を担当していた。

「私は新規事業の立ち上げなどで海外にいく機会が多くありました。そして海外から日本を見たときに、今後の日本にとって『国難』となりそうな分野が3つあると思ったのです。それは、『労働人口の減少』『医療』そして『教育』です。

起業する少し前に、ソフトバンクグループの孫正義代表が、次の30年も引き続き情報革命で人々の幸せに貢献し、『世界の人々から最も必要とされる企業グループ』を目指すという『ソフトバンク 新30年ビジョン』を発表しました。その考えに触発されて、ITを活用した事業によって自分がイノベーションを起こそうと思ったのです。そして、日本の将来に貢献できるのは何かと考え、教育の分野での起業を決めました」(加藤氏)

継続的な成長を可能にするビジネスモデル

Classiは、全国の高等学校の40%以上に導入されている、学校教育をサポートするクラウドサービスだ。

通常、ITを活用した教育サービスというと個人向けの学習アプリが思い浮かぶ。しかしそのようなサービスとClassiでは、ビジネスモデルに大きな違いがあるという。

「高校生を対象としたサービスの場合、1人の高校生に利用してもらえる期間は、長くても3年間です。そのため、サービスの開発・運用、宣伝にかかるコストを短期間のうちに回収しなければなりません。つまり教育関連のアプリは、B to Cのビジネスモデルでは持続しにくいのです。

日本の学校の多くは、いまだにIT化が進んでいません。つまり、ITを推し進める伸びしろがある環境といえます。そうであれば、エンドユーザーは生徒であっても、導入するのは学校という、B to B to Cのビジネスモデルが成立するのではないか。そう考えて開発したのが、Classiです」(加藤氏)

サービスの開発にあたり、まず加藤氏は、教育現場の課題について教師たちにヒアリングを行った。そして、教師の話を聞いていくなかで見つけたのは、「生徒一人ひとりと向き合うための情報が管理されていない」という課題だった。

「先生は、進路相談などの生徒と面談する機会を非常に大事にしています。生徒の将来に関わることですから当然です。しかし、多くの学校では、生徒の成績や学習の進み具合、出席状況、生活態度を記録したデータが、バラバラに管理されています。このようなデータは、生徒の現状を把握するうえで密接な関連性があります。それにもかかわらず、これらの情報を一覧できる仕組みがありませんでした。この点に苦慮されている先生方が非常に多かったのです」(加藤氏)

そこで、個々の生徒の成績や授業中の様子、生活態度を記録し、その生徒に合わせた最適な指導を行うための「生徒カルテ」を提供することからサービスをスタートする。生徒の状況を一覧で把握できるこの機能は、現場の先生たちから強く支持された。この機能があることで、Classiが導入されやすい状況が生まれたと加藤氏は考えている。

生徒と教師、双方を支援する機能

現在、Classiを構成する主な機能は、分類すると「ポートフォリオ」「コミュニケーション」「アクティブ・ラーニング」「アダプティブラーニング」の4つがある。

「ポートフォリオ」は、生徒が日々の学校生活のなかで得た学びや気づきを、スマートフォンやタブレットなどで記録しながら“主体的に学ぶ力”を身につける、いわば「学びのアルバム」だ。生徒自身が、授業だけでなく部活動や学校行事への取り組みなど、学校生活のさまざまな記録や、教師や友人からのフィードバックをためることができるという。記録した内容は、「JAPAN e-Portfolio」(*3)と呼ばれる、高校eポートフォリオ、大学出願ポータルサイトにも連携できる。


Classiの画面と「ポートフォリオ」の利用画面

「コミュニケーション」には、教師と生徒、そして保護者が連絡を取り合うためのメッセージ機能などがある。「校内グループ」という機能を使えば、教師から保護者に向けた情報発信などがペーパーレスで行える。

「アクティブ・ラーニング」には、ウェブ上で小テストが実施できる機能や、進路調査などのアンケートを実施できる機能がある。また、テストやアンケートの結果をもとに、教師がオリジナルの指導セットを作成できる機能もある。

そして、生徒の学力をいっそう向上させるためにあるのが、「アダプティブラーニング」だ。ここには、各生徒の成績や学習データを蓄積・解析して一人ひとりの弱点を発見し、最適な教育コンテンツをレコメンド(推奨)する仕組みがある。たとえば、ベネッセが提供する模試の結果をもとに、最適な学習動画が提供される機能がそれだ。また、ウェブ上で実施する小テストの結果をもとに、次から生徒個々人の学力に応じた個別問題のテストが実施できる機能なども備わっている。

イメージ図
アダプティブラーニングの一例

Classi株式会社のシニアデータサイエンティストで、みえる学びチームのチームリーダーとして、アダプティブラーニングの企画・開発を行っている川端貴幸氏は、この機能の重要性について次のように語る。

「アダプティブラーニングは、生徒が主体性をもって日々の学習に取り組むようになるために必要なコンテンツです。テストの成績によって、生徒は現在の自分の学力がわかります。自分の苦手な問題や単元を確認できる機能もあるので、自分の目指すゴールとのギャップがわかります。そして、ひとつずつ課題をクリアしていくことで、生徒は自身の成長を実感でき、主体性をもって勉強に励むようになるのです。今後、より個々人に最適な学習コンテンツを配信していけるようにしていきたいと思っています」(川端氏)


Classi株式会社 企画部 みえる学びチーム シニアデータサイエンティスト チームリーダー 川端 貴幸氏

統合的な教育プラットフォームとして

学校教育の質を向上させるためにさまざまな機能を備えたClassiだが、加藤氏は、生徒の学力を上げることだけが目的ではないと強調する。

「Classiを提供するうえで、先生方の業務を効率化し、生徒の学習効率を向上させるのは重要なことです。しかしそれらは、Classiがサービスを開始した一番の目的ではありません。私たちは、日本の子どもたちの『主体性』を育てたいのです。

そのために、生徒が自身の考えていることや感じたことを日々記録する、『Classiポートフォリオ』の機能を提供しています。日々の記録や他者からのフィードバックを通じて、生徒が自身の行動を振り返れるようにすることで、『なぜその行動をとったのか』、『次からどのような行動をとるべきか』が見えてくる。この繰り返しで、主体性が身についてくるのです」(加藤氏)

またClassiは、外部サービスとの連携を積極的に進めている。オプションサービスではあるが、ClassiのIDがある生徒であれば、英語やプログラミングなどの外部サービスを、新たにIDやパスワードを作らなくても利用できる。他サービスとの連携を進める背景には、学校のなかだけでは学べない体験をしてほしいというClassiの思いがある。

「社会人を相手にしたプレゼンテーションの機会を得たり、ハイレベルな英語を学んだり、学校内では学べないことを体験してほしいと思っています。そのなかで『世の中にはこんなすごい人がいるのか!』という人物に出会って大きな刺激を受け、成長につながることもあるでしょう。

社会に出たら、何ができて、これから何がしたいのか、何をこれからすべきなのか、ということが常に求められます。われわれは、生徒が社会に出た後にも役立てられる学びの機会を提供したい。そのために、さらにさまざまな外部パートナーと連携していくつもりです」(加藤氏)

今後もClassiは、『テクノロジーを活用して質の高い教育を提供する』『学校だけでは学べない体験を提供する』という2軸で事業を拡大していくという。目指しているのは、2020年に向けて同社がビジョンとして掲げている「新しい学びが広がる未来の教育プラットフォームを創る」ことだそうだ。

2020年度からは、大学入試の仕組みも大きく変わろうとしている。新たに「大学入学共通テスト」や「eポートフォリオ」が導入され、「知識・技能」だけなく「思考力・判断力・表現力」と「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を加えた学力の3要素を総合的・多面的に評価する仕組みに変わる。この背景には、従来の暗記型教育を改め、変化の激しい時代に答えのない課題の解決方法を周囲と協力して見いだせる人材を育てなければ、日本がグローバル社会で取り残されてしまうという強い危機感がある。ITの活用によって新しい教育の形をつくり、生徒の学力だけでなく、人間としての成長も促そうとするClassiの試みに注目していきたい。

注釈:
(*1)Classi(外部サイト)
(*2)文部科学省資料「数字で見る高等学校」(外部サイト)
(*3)学校の授業や行事、部活動などでの学びや自身で取得した資格・検定、学校以外の活動成果を記録、蓄積することで、将来的にはこのデータを大学入試時に利用できるようにする仕組み

プロフィール

Classi株式会社 代表取締役副社長 加藤 理啓氏

ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)にて国際事業部および経営企画部で新サービスへの投資・事業計画策定、海外パートナー企業とのジョイントベンチャーの立ち上げなどに従事。2014年Classi株式会社を設立、代表取締役副社長に就任。

Classi株式会社 企画部 みえる学びチーム シニアデータサイエンティスト チームリーダー 川端 貴幸氏

キヤノン株式会社でレコメンデーション・パターンマイニング・異常検知・故障予測の研究開発、株式会社サイバーエージェントでAI Lab責任者 兼 シニアデータサイエンティストとしてアドテクノロジーの予測モデルや新機能開発に従事。2018年Classi株式会社入社。

  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

Insight for Dの
ページにいいねしよう!

「いいね!」してInsight for Dの最新情報をチェック

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Insight for Dの公式Facebookページ、Twitterでも最新情報や取材の様子を発信中。