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衛星データを活用して災害発生を予測! JAXAの取り組みに迫る

記事内容の要約

  • JAXAは、昼夜天候を問わず地球を観測することに優れた人工衛星を保有している
  • 民間企業での衛星データ活用も増えてきており、農作物の天候リスクを扱う保険商品も開発されている
  • JAXAの衛星データは、火山噴火の状況把握や災害時の救援計画に役立つため、災害大国である日本にとっては特にその活用が期待される
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昨今のビジネスシーンにおいて、“宇宙産業”という言葉を多く目にするようになってきた。Insight for Dでもこの分野に注目し、『データと宇宙産業――なぜ今、宇宙ビジネスに注目するのか』『衛星の持つ特徴と産業分類から見渡す「宇宙ビジネス」のいま』などの記事で宇宙開発の現況について紹介してきた。

このビジネストレンドを見きわめるうえで欠かせないのが、国立研究開発法人「JAXA(宇宙航空研究開発機構)」の存在だ。彼らはどのようなデータを蓄積し、今後どのような分野で活用しようとしているのか。JAXA第一宇宙技術部門宇宙利用統括付 ミッションマネージャ 祖父江真一氏に話を聞いた。

世界で唯一の特徴をもつJAXAの人工衛星とは

2018年6月27日、地球から3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」に到着した小惑星探査機「はやぶさ2」(*1)。リュウグウには太陽系が生まれた時の水や有機物が残されていると考えられていることから、はやぶさ2が地球に持ち帰るサンプルを分析することで、生命の起源を解き明かせるのではと期待されている。

ただ、JAXAが手がけるのは、このように人々に宇宙のロマンを与えるようなプロジェクトだけではない。もうひとつ重要な取り組みとしているのが「地球観測」だ。これは、人工衛星から観測した地球環境のデータを分析して地表海洋、大気などの変動を明らかにするために行われている。

人工衛星を使ったリモートセンシング(遠く離れた対象物の形状や性質を観測すること)によって地球を観測する際、最もよく利用されているのは光学センサー(=カメラ)だが、太陽光がない夜間の撮影は難しく、また雲や雨が発生すると正確な観測が行えないという難点がある。

そこでJAXAは、天候状態に影響されずに、昼夜を問わず、地表を観測できるレーダーの中でLバンドの周波数を用いた合成開口レーダを搭載した人工衛星を、世界で唯一保有している(*2)。これにより、昼夜、天候を問わずに地球を観測できているのだ。

だいち2号写真
だいち2号は、地殻変動や地球環境の監視に適したLバンドの周波数を用いた衛星搭載の合成開口レーダを世界で唯一搭載している(©JAXA)

民間企業による衛星データの活用

JAXAの衛星データは、民間企業でどのように利用されているのだろうか。

「われわれが観測したデータは、JAXAが運営している地球観測衛星データ提供システム『G-Portal』(*3)などで公開しています。衛星の識別能力のことを『分解能』といい、地表面でどのくらいのものが識別できるかを示しています。その中で『高分解能の画像データ』というと解像度が非常に高く、5m程度以上の細かさで地表面を識別できるデータを意味するのですが、JAXAが公開している衛星データのうち、中程度以下の分解能の画像データについては、無償で閲覧・利用できるので、商業目的でも利用できることになります」(JAXA第一宇宙技術部門宇宙利用統括付 ミッションマネージャ 祖父江真一氏)


JAXA第一宇宙技術部門宇宙利用統括付 ミッションマネージャ 祖父江真一氏

衛星から得た地形や大気データの具体的な活用分野は、防災や災害監視、土木・建設、地理情報、農林水産、エネルギー・資源、気象・環境、海洋など多岐にわたっており、民間企業による活用事例も増えてきている。

民間企業が衛星データを活用した例としては、2016年に行われた第2回宇宙開発利用大賞の内閣府特命担当大臣賞に表彰された、損害保険ジャパン日本興亜株式会社と損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント株式会社(現・SOMPOリスケアマネジメント株式会社)が、一般財団法人リモート・センシング技術センター(以下、RESTEC)と開発した「天候インデックス保険(*4)」がある。これは干ばつによる農業被害の対策となる保険としては、日本で初めて衛星データが活用されている。

東南アジアの一部地域の農民は、当年に売却した農作物の収益を元手として、翌年に植える農作物の種もみ(稲のもととなるタネ)を購入している。そのため干ばつによって作物が育たない年があれば、翌年の農業活動ができなくなるリスクがある。そこで損保ジャパン日本興亜は、JAXAの衛星データを使って推定した雨量が、事前に定めた雨量を下回った場合に、保険金を支払う保険商品を、2014年にミャンマーで開発した。同社は、2025年までにタイを含む東南アジアにおいて3万軒の農家に、天候インデックス保険を提供することを目標としているそうだ。

「損保ジャパン日本興亜がRESTECともに開発したサービスで使うことが想定されているものは、GSMaP(*5)という降雨の衛星観測データから作成したプロダクトになります。民間企業が、このデータを活用した事例になります。また、それ以外にも日射量や地表面の温度、土壌水分量などの農業気象データもJAXAでは公開しています。これらはもともとJAXAが、他国の農業機関に対して収穫量の予想や、作付計画のアドバイスをするために2011年頃から提供しているデータであり、JAXA地球観測研究センターの公式サイト(*6)で無償公開しています」(祖父江氏)

防災対策や災害救助に活用される衛星データ

JAXAとして、衛星データの潜在性がもっとも発揮されると考えているのが防災分野での活用だ。

「火山は噴火する前に、山の形状が変わるといわれています。つまり、山の形状の微小な変動を計測することで、噴火しそうか否か、噴火してしまった火山については沈静に向かうのか否かが、ある程度わかるのです。現在は霧島山(新燃岳)やキラウエア火山などの計測を行っています」(祖父江氏)

2015年に噴火した箱根山に対しても、人工衛星を使った監視が行われた。警戒区域が広くなるとドローンによる監視が難しいため、区域全体を確認できる人工衛星が用いられたという。

「東日本大震災のときにも、衛星データが活用されました。地震による土砂崩れ、橋の崩落、高波による洪水など多くの災害が同時かつ広域で発生したため、地球観測衛星『だいち(ALOS)』によるデータを関係する機関に提供しました。また、常総の洪水では、夜間に計測したデータを各機関に提供し、夜が明けたらどこに救援部隊やポンプ車を送り込むのかといった計画の立案に役立てていただきました」と、祖父江氏は説明する。

自衛隊が海外で救助活動を行う際にも、あらかじめ現地の状況を人工衛星で計測し、被害の大きかった地域で重点的に支援活動を行うなど、衛星データを活用しているそうだ。

災害大国である日本においては、多方面にわたり、衛星データの活用ニーズが存在しているはずだ。しかし、現実的には法規制などの問題があり、思うように活用の幅は広がっていかない。後編では、衛星データ活用における日本の抱える課題と、さらなる活用分野の可能性について見ていく。

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