マーケティング戦略

気象データが生む経済効果とは[前編]――データ活用のカギを握る予測精度の向上

記事内容の要約

  • 日本気象協会は、気象データを活用した新たなビジネスとして、3年間の実証実験を経て「商品需要予測コンサルティングサービス」を開始した
  • 気象予測を商品の販促計画に生かす手法は、これまで予測精度の低さからあまり広まらなかった
  • 技術の発達によって気象予測の精度が高まったことで、日本気象協会は幅広い業種の課題解決に乗り出した
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テレビやラジオなどの天気予報に気象情報を提供している「日本気象協会」は、気象データを活用した新たなビジネスとして「商品需要予測コンサルティングサービス」を開始した。気象データだけでなく、気候の変化が影響を与える消費者の購買動向などのデータを活用したこの取り組みは、サプライチェーンの効率化をはじめ、大きな経済効果を生む可能性を秘めている。同協会は、なぜ新たな事業を始めたのか。また今後、気象データをどのようにビジネスで活用しようとしているのか。話を聞いた。

ビジネスと気象データの関わり

インターネットやテレビ、ラジオの天気予報などに日々気象情報を提供している一般財団法人日本気象協会は、かつて中央気象台(気象庁の前身)の民間気象法人として設立された。2009年の公益法人改革に伴い、一般財団法人へと移行した同協会は、気象データを用いた新たなビジネスを開拓し始めることになる。日本気象協会 商品需要予測プロジェクトのプロジェクトリーダー、中野俊夫氏はこう語る。

「気象データを用いたビジネスには、主に予報業務に関するものがあります。その市場規模は300億円程度と言われていますが、ここ20年ほどは大きな変化がなく頭打ち状態でした。そこで一般財団法人となったことをきっかけに、新たな事業の柱を模索することにしたのです」(中野氏)


一般財団法人 日本気象協会 事業本部 防災ソリューション事業部 先進事業課
<商品需要予測プロジェクト>プロジェクトリーダー 中野 俊夫氏

中野氏いわく、気象データとビジネスの関係性として、次のようなものがあるという。

まず、世の中の業種の1/3は、気象による何かしらのリスクを抱えていると言われていることだ。特に流通業や小売業には強い関連性がある。

そして、気象は物理的な現象のため、株価や景気の先行きなどとは違い科学的な予測が可能だということもあげられる。

「今後、日本は生産人口が減少していきます。それでも経済成長を続けていくためには生産性を向上させる必要があります。気象データの活用が、企業の課題解決や生産性向上に役立つのではないかと考えています」(中野氏)

予測精度の向上が活用の幅を広げた

ところで、日本気象協会をはじめとする民間の気象情報会社は、どのように気象予報を行っているのだろうか。

「気象を予測するためには地球規模でのデータが必要なので、海外からも観測データを収集しています。観測データには、気温、風、水分量と気圧などがあります。これらのデータをもとに世界規模で予測が行われます」(中野氏)

同協会などの民間の気象情報会社は、独自に気象観測・予測を行っているわけではなく、気象庁などから提供された観測・予測データを分析・加工し、その結果を提供先のニーズに合った形に加工して、情報提供することを主な業務としている。

イメージ図
気象予測の流れ

日本気象協会では、気温、風、降雨量・降雪量、波浪、路面温度、着氷雪などの予測を中心に情報提供している。情報提供先は、天候がダイヤや通行量に影響を与える鉄道事業者や道路会社、気候によって消費量が変化する電力・ガス会社、また海運会社や自治体などさまざまだ。

近年、人工衛星やIoT機器関連の技術発達が進んだことで、気象予測の精度が高まった。5日先までの予測の精度は、ここ15年ほどの間で約30%も向上したという。これにより、幅広い業種で気象データが活用されるようになったのだ。

気象データを使った商品の需要予測

気象予測をビジネスに生かそうという動きはこれまでにもあり、1990年代には「ウェザーマーチャンダイジング」(*1)という手法が話題になった。しかし、実際にはあまり広がりは見られなかった。

「『ウェザーマーチャンダイジング』は、確かに当時、一部のコンビニエンスストアやスーパーマーケットで活用されていましたが、あまり広がりを見せませんでした。というのも、小売業であれば、1、2日先の天気が予測できれば仕入れを最適化できるのですが、製造業となるとリードタイムが長くなるため、長期の予測が必要になります。しかし、当時は長期予測の精度があまり高くありませんでした。結果的に気象予測を活用できる業界が一部に限られてしまったのが、この手法が拡大しなかった要因だと思います」(中野氏)

しかし前述の通り、周辺技術の発達により予測の精度が上がることで、製造業であっても、気象データを活用できる可能性が見えてきた。そこで日本気象協会は、さまざまな企業と連携した取り組みをスタートさせる。それが、経済産業省の補助事業の一環として、2014年に開始した「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」(*2)だ。

これは、気象データとPOSデータなどをかけ合わせて解析し、商品の需要を予測して生産量を調整し、食品ロスなどを削減しようという取り組みだ。同プロジェクトは3年にわたって行われ、需要予測の高度化や、在庫の削減効果において一定の成果をあげたという。

「経済産業省のプロジェクトに参加してくれた企業は、当初は5社だけでしたが、最終的には30社を超えました。そして、2017年から本プロジェクトは、『商品需要予測コンサルティングサービス(*3)』として事業化することになりました。現在では100社以上の企業から声をかけていただいており、需要の高さを感じています」(中野氏)

後編では、「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」で実際に取り組まれた事例と、「商品需要予測コンサルティングサービス」の概要を紹介していく。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)天気や気温などの気象情報を商品の販売戦略に生かす手法
(*2)需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト(外部サイト)
(*3)商品需要予測コンサルティングサービス(外部サイト)

プロフィール

一般財団法人 日本気象協会 事業本部 防災ソリューション事業部 先進事業課 <商品需要予測プロジェクト>プロジェクトリーダー 中野 俊夫氏

2000年に日本気象協会に入社し、防災関係の部署に配属される。気象を経済に生かしたいと考え2014年に経済産業省の補助事業「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」を立ち上げる。2017年度から事業化した本プロジェクトの中心メンバーとして遂行している。

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