マーケティング戦略

テレビ視聴状況を検索行動から類推! 統合型マーケティング実現のために

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株式会社Handy Marketingは、博報堂DYメディアパートナーズ、ヤフー、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)の3社が、「データマーケティングの発展」を目的として2016年4月に共同で設立したベンチャー企業だ。

そんな同社が、2018年9月6日に、「Handy Program Retargeting」という新たなサービスの提供を開始すると発表した(*1)。これは、ヤフーが保有する検索行動データを活用し、テレビ番組の視聴を推定するマーケティングソリューションだ。利用企業は自社のテレビCMを見たであろうユーザーに向けてデジタル広告を配信できるようになる。つまりオンラインとオフラインを横断した統合型マーケティングが可能になるのだ。

このソリューションのベースとなっているのは、博報堂DYメディアパートナーズからHandy Marketingに出向している篠田裕之氏が行っていた「検索行動からテレビ視聴状況を類推する研究」である。

「テレビCMとパソコン・モバイルのデジタル広告を組み合わせた最適な出稿パターンを見極めることを目指した」と話す篠田氏と、ヤフー株式会社でアナリストを務める田中祐介氏との対談内容から、ソリューション開発にいたった研究成果について紹介する。

ウェブ検索とテレビ視聴の関連性

テレビを視聴していて気になるトピックがあったとき、多くの人がインターネットで「検索」を行う。特に冬季オリンピックやFIFAワールドカップなどのビッグイベントが開催された2018年は、イベント名や選手名を検索したという人も多いのではないだろうか。

「しかし、こうした検索行動からテレビの視聴状況を類推することは簡単ではありません。なぜなら、『羽生結弦』と検索した人が、彼の演技をフィギュアスケートのテレビ番組で見たとは限らないからです」(篠田氏)


博報堂DYメディアパートナーズの篠田裕之氏

果たして検索行動とテレビ視聴には、どのような関連性があるのだろうか。たとえば、テレビ番組のタイトルで検索したユーザーのうち、実際にその番組を視聴した人はどの程度いるのか。篠田氏がYahoo!メディアオーディエンスパネル(以下、YMAP)(*2)のログから2018年1月から2月にかけて「番組視聴者含有率」(任意に選んだ番組名を検索した人のうち、実際にその番組を視聴した人の割合)を番組カテゴリ別に集計した結果が、図1だ。


図1. テレビ番組名検索者における番組視聴割合(番組カテゴリ別)

図1をみると、ニュース番組名の検索者においては、実際の番組視聴割合が高いことがわかる。しかし、音楽番組名やスポーツ番組名の検索者における番組視聴割合は低く、ドラマにしても実際にテレビで視聴した人の割合は50%前後にすぎない。

さらに、番組名の検索数は、放送の直前・直後で大きく増加することから、放送前後の2時間以内に絞った番組視聴割合もみてみよう(図2)。


図2. 放送2時間前後のテレビ番組名検索者における番組視聴割合(番組カテゴリ別)

図2では、図1と比較してすべての番組でテレビ視聴の割合が向上している。しかし、それでもドラマや音楽などは依然として60%前後にとどまり、『放送時間帯の前後で検索はするが、番組の視聴はしない人』は多くいることがわかる。

発想を転換して「番組を見たであろう人」を判定

番組タイトルの検索数だけでテレビ視聴状況と関連性を見いだすことは難しい。しかし、検索と関連したテレビ視聴の類推精度を向上させるために検索キーワードの粒度を細かくすると、サンプル数が不足してしまうという問題がある。

たとえば、番組タイトル単体だけでなく、「番組タイトル+主演女優名」のような掛け合わせキーワードで深掘りすれば類推精度はたしかに向上する。だが、検索キーワードの組み合わせを絞り込んでしまうことで、その検索者自体のボリュームが小さくなってしまい、マーケティングへの活用という観点においては実用性が低くなるのだ。

「そこで、分析対象の検索キーワードを『番組名以外』にまで広げてみることにしました。さらに検索タイミングなどの行動パターンも変数として用いることで、テレビ視聴状況を精緻に類推できるのではないかと考えたのです。複雑な変数を処理するための機械学習を用いたモデリングを実施することで、類推精度を向上させることにチャレンジしました」(篠田氏)

モデルを構築するうえで、2018年1〜3月までに放映されたドラマ『アンナチュラル』をサンプリングの対象とした。そして、同ドラマに関連する検索キーワードから生成した特徴量(判定したい物事の特徴となるデータを数値化したもの)から、テレビ視聴を類推できるモデルを構築した。具体的には、8,000人のYMAPから視聴者だと抽出された人数と、推計精度(抽出された人のうち実際に視聴していた人の割合)を割り出した。


図3. ドラマ『アンナチュアル』に関連する検索キーワードから生成した特徴量

結果として、単純に「アンナチュラル」という番組名の検索キーワードだけで抽出するよりも、抽出人数が多くなり、推計精度は46.2%から96.5%にまで向上した(図4)。具体的にいえば、実際にアンナチュラルを視聴していたか否かの判定が五分五分でしかできなかったのが、ほぼ確実に「視聴していた」と判定できるようになったのである。


図4. 抽出人数と推計精度の結果比較

統合型マーケティングを支援するために

今回「Handy Program Retargeting」のモデルの構築は、博報堂DYメディアパートナーズ、ヤフー、Handy Marketingの3社間の連携によって行われ、ヤフーとの協業体制のなかで、ヤフーの保有する検索行動データが活用された。

本研究で分析モデリング等を担当したヤフーのアナリスト田中氏は、次のように話す。

「今回構築したモデルは、ヤフーが保有するパネル調査データ(YMAP)上の8,000人の検索行動を用いています。このモデルをヤフー全体の検索データに適用させたことで、数万〜数百万規模の推定視聴ユーザーを捉えられるソリューションができました。企業は、Handy Program Retargetingを活用することで、推定されたテレビ視聴ユーザーに向けて、ダイレクトにデジタル広告を配信できるようになります」


ヤフー株式会社でアナリストを務める田中祐介氏

テレビCMとデジタルの両方に広告出稿している企業は多い。オフラインとオンラインを行き来する生活者に向けて確実に広告配信を行うためには、統合的なマーケティング戦略を考えられる環境が不可欠なのは言うまでもない。今回Handy Marketingが提供を開始したソリューションは、生活者へ効果的にアプローチする手助けになるのではないだろうか。

注釈:
(*1)Handy Program Retargeting(外部サイト)
(*2)Yahoo! JAPANの保有する、関東・関西に居住する約8,000人の調査モニターの24時間365日のテレビ実調査データとYahoo! JAPANサイトの行動データを紐付けた調査パネル

プロフィール

博報堂DYメディアパートナーズ 篠田裕之

大阪大学大学院情報科学研究科修士課程修了。2008年、株式会社博報堂DYメディアパートナーズに入社。統計、機械学習を用いたビッグデータ解析全般、特にDMPを用いたウェブマーケティング施策立案、および、データビジュアライズ業務に従事。2016年10月より、株式会社Handy Marketingにも兼務出向し、ヤフーと博報堂DYグループのデータを活用したソリューション開発を担当。

ヤフー株式会社 田中祐介

中央大学大学院情報工学研究科修士課程修了。 2009年、ヤフー株式会社に入社。広告ターゲティングシステムやレコメンデーションサービスのモデリング業務、システム企画・開発、サービス運用、広告のデータ分析など幅広い業務を担当。2016年4月より株式会社Handy Marketingにも兼務出向し、ヤフーと博報堂DYグループのデータを活用したソリューション開発を担当。

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