マーケティング戦略

“できる営業トーク”は数値で評価【前編】――暗黙知を見える化するツールとは

記事内容の要約

  • コグニティ株式会社は、優秀な営業担当者のトーク内容を解析して、何が優れているのかを可視化できるツール「UpSighter」を開発した
  • UpSighterは、トーク内の情報を分類して整理するためのフレームワーク「CogStructure」がトーク内容の定量評価を可能にしている
  • CogStructureは、従来型の論証モデルを発展させることで、会話内で論理が飛躍した場合も対応できるよう開発された
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営業担当者はみな同じような商談をしているはずなのに、結果を出せる人とそうでない人が存在する。優秀な営業担当者のトークは、一体何が違うのか――。

そんな疑問を解決してくれるのが、コグニティ株式会社が開発した「UpSighter」(アップ・サイター)だ。これは、個人的な印象や感想ではなく、トーク内容を定量的に評価してくれるツールだ。

すでに官公庁を含めて約80社に採用されている「UpSighter」は、人の話した内容を、どのように分析し、数値で評価しているのか。コグニティ株式会社 代表取締役 河野理愛氏に話を聞いた。

「売れるトーク」の傾向を把握する

セミナーや社内研修を実施しても、なかなか営業担当者の成績が向上せず、頭を悩ませている管理職や研修責任者は少なくないだろう。そのような人々の手助けとなるツールがある。営業トークの内容を分析し、定量的に評価する、コグニティ株式会社(以下、コグニティ)の「UpSighter」(アップ・サイター)だ。

UpSighterを開発した、コグニティの代表取締役・河野理愛氏はこう説明する。

「営業成績の上位・下位3名分のトーク内容を、音声、もしくはテキストのデータで提供いただくだけで、『なぜこのトークは売れるのか』という理由を分析できる。それが、UpSighterです。

トークの内容は、『事例が出されているか』、『リスク・課題の洗い出し(がされているか)』など、9つの要素に分類されます。そして、それぞれの要素をどのような割合で話しているのか、どのような構成で話を進めているのかなどを分析し、成績上位者の特徴を割り出します。その結果、『売れるトーク』がどのようなものかわかるのです」(河野氏)


コグニティ株式会社 代表取締役 河野 理愛氏

いわゆる「できる営業担当者」が、何をどのように話しているのか数値で把握できる。それを一般的な営業担当者のトークと比較することで、トークに関するノウハウ・暗黙知が見える化されるというわけだ。


UpSighterによる解析例

ある中古車の買い取り・販売会社の依頼で、社員3名82件分の営業トークをUpSighterで解析したところ、「車を売るとき」と「車を買い取るとき」では、売り上げにつながるセールストークの特徴が正反対だということがわかったそうだ。これにより、その企業は、営業担当者への指導内容を見直すことができた。

またある企業の営業担当者のトーク内容をコグニティが解析したところ、成績は優秀だが、UpSighterでみると低評価になる営業担当者がいたという。これは、その営業力が「キャラクター勝負」「人間性」などによるものだということを示している。決して悪いとはいえないが、新人を指導するうえでは、別の営業担当者のほうが適任である可能性が高い。UpSighterを使うことで、間違った新人教育をせずに済むかもしれないのだ。

トークの定量評価を実現する「CogStructure(コグストラクチャー)」

UpSighterは、なぜトーク内容の客観的な評価を可能にするのか。このツールの基盤となっているのが、コグニティが独自に生み出した「CogStructure」というフレームワークだ。

「CogStructureは、文章やスピーチ、会話のなかに、どのような種類の情報がどれだけあり、どのような組み合わせになっているかを明らかにするためのフレームワークです」(河野氏)

CogStructureの手法がどのようなものか、ある企業における営業担当者と営業部長との会話を例にみてみよう。

営業部長 「売り上げの状況はどうなっているんだ?」
営業担当者 「商品Aの売り上げは前年比で30%伸びています」
営業部長 「なるほど。商品Bの売り上げは?」
営業担当者 「前年割れしています。商品Bはそろそろ消費者に飽きられているのでしょうね」

これをCogStructureによって解析してみる。まず、『売り上げの状況』というトピックに対して、『商品Aは前年比30%増』、『商品Bは前年割れ』という2つの情報を検出する。そして、「売り上げ」というエビデンスに基づいていることから、これらの情報は事実だと分類される。

一方、『商品Bはそろそろ飽きられている』という情報は営業担当者の主観であり、その事実を裏づける証拠は示されていない。本当に飽きられている可能性はあるが、前年割れしている事実との因果関係も示されていない。よって、このような情報は、「根拠のない情報」だと分類される。このように分類された情報それぞれを関連付けて整理していくことで、トークの内容は評価される。

8,000件以上の調査で気付いたこと

河野氏がCogStructureというフレームワークを生み出したきっかけは、一つの論文に出会ったことだった。2013年にコグニティを設立した河野氏は、次のように語った。

「UpSighterがまだ構想段階だった2013年に、イギリスの哲学者、スティーヴン・トゥールミン(*1)が発表した論文『Toulmin's Argument Model』に出合いました。トゥールミンは、世界中の判例を分析することで、論証を論理的に組み立てるためには『論拠』や『主張』といった6つの要素が必要だという論証のモデルを作りました。そこで私も、国内外のスピーチや論文、個人のブログにいたるまで約8,000件を調査してみたのです。すると、そのうちの8割はトゥールミン・モデルの型に当てはまりました」(河野氏)


トゥールミン・モデルによる要素の分類例

しかし、残り2割の論文やスピーチには、トゥールミンの提示した6つの要素だけでは分類できない情報が含まれていたそうだ。トゥールミン・モデルは非常にロジカルだが、人間の思考にありがちな論理の飛躍などが考慮されていないため、どうしても6つの要素があてはまらない例があるのだという。

そこで河野氏は、論証を十分に分析するためには、『論拠』や『主張』などの6つ以外にも必要な要素があると考えて地道な研究を重ねた。そして努力の末に生み出したのが、「CogStructure」というフレームワークだ。

後編では、CogStructureの詳細と、それを生み出したコグニティの真意について迫る。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)イギリスの哲学者。議論において、論理的な結論を導くための「トゥールミン・モデル」を提唱。主な著書に『議論の技法』(東京図書、 翻訳・戸田山 和久、福澤 一吉 )がある。2009年没。

プロフィール

コグニティ株式会社 代表取締役 河野 理愛氏

慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中にNPO法人を設立。2005年にソニー株式会社入社、カメラ事業を中心に、経営戦略・商品企画に従事。2011年に株式会社ディー・ エヌ・エー入社、ソーシャルゲームの海外展開を担当。2013年、コグニティ株式会社を設立。

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