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【注目のひと】近藤洋祐氏(株式会社 電脳交通 代表取締役)

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Insight for Dが注目する人物のパーソナリティーに迫る本企画。影響を受けた人物や書籍、過去の失敗、人生哲学などを10の質問から掘り下げます。

今回登場する「注目のひと」は、徳島県で祖父が経営していたタクシー会社の経営を引き継いだことをきっかけに、テクノロジーの力でタクシー業界の課題解決を行う株式会社 電脳交通を起業した近藤洋祐氏。最新技術を背景にしながらも、「ローカル」や「アナログ」というキーワードで独自のサービスを生み出すその発想力とバイタリティーは、どのような信念から生まれているのでしょうか。

近藤氏の写真

Q1: 学生(子ども)の頃に打ち込んだことはなんですか?

少し曖昧な答えになってしまいますが……幼少期からやっていたのは、どんなことにも創意工夫をすることですね。たとえば、鬼ごっこのルールをアレンジして独自の遊びにしてみたり、1週間に100円のお小遣いの中で満足度をどう高めていくかを考えたり。ミニ四駆は買えなかったので、みんなが捨てるミニ四駆のモーターを拾って、コイルを巻き直して速いモーターをつくってみたり。

電脳交通の事業にも通じていますね。技術の配置転換をしたり、もともとあったリソースの使い方を変えたりという創意工夫が、いまのビジネスの根幹を成しています。

Q2: ご自身の考え方や生き方に影響を与えた人物や書物はありますか?

幼少期に何度も読んだ本は『昆虫記』です。ですから、まずファーブル博士。彼は、昆虫の研究内容を本にまとめたわけですが、生きている間には評価されなかったんです。それでも研究に取り組み続けたから、後世に名前を残せた。それを知って、「結果が出なくてもしぶとくやり続ける」というマインドセットを持つようになりました。

そして、ファーブル博士に近い生き方をしていると僕が感じている人物が、イチロー選手です。

プロ野球での通算安打数でギネス世界記録に認定されたとき、「(4,257安打を達成したということは)8,000回以上は悔しい思いをしている。その悔しさと向き合ってきた事実を誇りに思っている」というような言葉を残していて。この考え方がすごく胸に刺さりました。毎日練習を積み重ね、自分のプレースタイルを磨き続けた結果、誰の手にも届かない域に達したわけです。その生きざまの背景にある哲学にはとても影響を受けましたね。

Q3: 大きな失敗の経験はありますか? それをどのように乗り越え、なにを学びましたか?

僕の中での大きな失敗は、野球です。メジャーリーガーを目指してアメリカの大学に進学したのですが、まわりの選手たちのレベルが高すぎて目立つことができなかった。そして、無理をし続けてオーバーワークになり、怪我もして。生きる自信を失いかけていました。

野球を諦めて帰国したとき、「自分には何もない」と無力感にさいなまれてばかりいました。その後祖父が経営する吉野川タクシーを継ぐことになるんですが、そのときにファーブル博士やイチロー選手といった人たちの生きざまに立ち戻ったんです。「野球の失敗を乗り越えるには、小さな成功体験を積み重ねていくしかない」と考え、実行していきました。

近藤氏の写真

Q4: 日々の仕事で、いちばん大事にしていることはなんですか?

「周囲の人たちを不安にさせないこと」です。経営者はいろんな人に見られていると思うので。具体的には、あいさつの仕方やコミュニケーションの取り方にしても、気持ちや行動にムラを出さない一定の表現をするようにしています。そうすることで相手に「近藤はこういう人間なんだ」という印象を残せて、それが信頼につながると思うんです。自分の中でルールを決めて、ルーティンとして生活のリズムをつくっています。

Q5: もし、いま 20 歳だとしたら、どんな仕事をしようと思いますか?

仕事の内容はなんでもいいと思っています。20歳というのは人格が形成される大事な時期なので、なにをするかではなく、自分に良い影響を与えてくれるような大人と巡り合える職場、環境で働くことを優先すると思います。そこから逆算して職を選ぶと思います。

Q6: 気持ちが沈んだ時、どのように気持ちを切り替えますか?

気持ちが沈んだときに一発でリカバリーできる方法ってないんですよ。ほんのささいなことでいいので、これまでの生活に変化をつける作業を取り入れて小さな自信をつけることが大事じゃないでしょうか。ふだんゴミを拾わないのだとしたら、ゴミを拾える人間になってみる、でもいいですし。それをコツコツと繰り返して、もう一回リセットできるラインまで自分の気持ちを高めるようにしています。

近藤氏の写真

Q7: これまで観たなかでお気に入りの映画はなんですか?

田舎が舞台の映画をよく観ますね。日本でもアメリカでも、田舎でしか暮らしたことがないので(笑)。

特に好きなのは、ケビン・コスナー主演の『フィールド・オブ・ドリームス』(フィル・アルデン・ロビンソン監督/1989年)。僕が留学していたアイオワ州が舞台の映画で、主人公が「野球場をつくれば人が集まる」という啓示を受けて、何もない田舎の田園に野球場をつくるんです。そのスピリチュアルなエピソードが周囲の人たちに影響を与えて、本当に大勢が集まるという内容です。リソースのない田舎でも、おもしろいコンテンツがあればちゃんとトラフィックは増えるというこの考え方は、電脳交通にもすごく影響を与えています。

Q8: いま注目していることはなんですか?

自動運転を中心としたモビリティサービスに注目しています。交通はインフラに近い事業領域なので変化の速度がゆるやかだったのですが、トヨタがモビリティサービスにコミットしたことで、2018年から急激に変化しました。

ただ、電脳交通としては「完全な自動運転の実現には時間がかかる」と考えています。自動運転の技術は数年で完成すると思うんですけど、地方のインフラがその環境に対応しきれていないので。「中央分離帯はないけど2車線になっている」など、ルール化されていない地方特有の慣習的な部分は自動運転には向いていないんです。そのため電脳交通では、遠隔で人間が代理運転するという、遠隔手動運転を始めようとしています。こうしたローテクでアナログな方法をうまく活用して、業界をアシストしていきたいですね。

近藤氏の写真

Q9: 10年後はどんな時代になっていると思いますか?

テクノロジーの進化は止まらないのでオートメーション化は進んでいくと思うんですが、どの業界でも絶対に手動領域が残ると思います。テクノロジーが進化すると、必ずどこかでユーザー体験とのミスマッチが起こるんです。人力ならではの良さが失われる、とでもいいますか。モビリティの業界も技術の発達で大きく変わっていきますが、ユーザーにどう寄り添っていくべきかを科学できるような集団でありたいと思いますね。

Q10: 人生において成し遂げたいことはなんですか?

地道にコツコツと小さな成功体験を積み重ねる、という哲学を死ぬまで持ち続けることです。いまやるべきことに向き合い続けながら、ずっと積み重ねていきたい。そうやって成長した自分は、きっと何か大きなことを実現できていると信じています。

プロフィール

近藤洋祐氏 株式会社 電脳交通 代表取締役

1985年生まれ、徳島県出身。2012年より吉野川タクシー(有)代表取締役。衰退が続く地方交通業界において、「会員制妊産婦送迎サービス」などの革新的なサービスを提供しながら会社を再建させる。2015年、「クラウド型タクシー配車システム」を開発・提供し、各地のタクシー配車業務代行も請け負う(株)電脳交通を設立。

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