ビジネス創出

地域の事業者とともに実現する短距離交通インフラの構築【前編】

記事内容の要約

  • OpenStreet株式会社が展開する「HELLO CYCLING」は、BtoBtoCビジネスモデルの「シェアサイクル」サービス
  • 代表の横井氏とCOOの佐藤氏が、ソフトバンク在籍中にシェアサイクルと自転車の可能性に着目し、事業化の検討をはじめた
  • 事業化を進める中で、既存のBtoCモデルのシェアサイクルにない可能性を確信し、コーポレートベンチャーとして発足させた
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OpenStreet株式会社が全国で展開を進める「HELLO CYCLING」(ハローサイクリング)は、「シェアサイクル」のサービスだ。2016年11月に、ソフトバンク株式会社の新規事業提案制度から生まれたこのサービスは、2018年9月現在で全国1,000カ所へと広がっている。

「短距離交通インフラを地域の事業者さんとともに構築したいというのが、私たちの本懐(ほんかい)です」――。そう話すのは、同社代表取締役の横井晃氏とCOO 兼 執行役員を務める佐藤壮氏。HELLO CYCLINGとはどのようなサービスなのか。そして、他社のシェアサイクルサービスと何が違うのか。両者に話を聞いた。

「HELLO CYCLING」とは?

いつでもどこでも気軽に使える――。シェアサイクルのサービス「HELLO CYCLING」の利用方法は簡単だ。ここでは予約から返却までの流れを見ていこう。

まずは「自転車の予約」。ユーザーは会員登録をした後、専用アプリのマップ画面から、自転車を借りたい「ステーション(自転車の貸し借りの拠点)」(以下、ステーション)の場所を選択する。料金を確認して予約ボタンをチェックすれば、予約完了である。この際、ユーザーには自転車の車体番号と予約番号が付与される。

自転車の写真

次に「自転車を借りる」。ステーションに行き、予約時に付与された車体番号の自転車を確認。自転車に装着されたディスプレー画面から予約番号を入力すれば、自転車本体に実装されたIoTデバイス「Smart Lock」が解除され、自転車が借りられるようになる。なお、あらかじめアプリ内で交通系ICカードを登録しておけば、予約なしで利用することも可能だ。

最後は「自転車の返却」。利用を終えた自転車は、どのステーションでも返却できる。自転車に内蔵されたGPSと、ステーションにあるジオフェンス(仮想的境界線)によって自転車の返却状況は管理されている。自転車の返却がされなければ決済が行われず、延滞料金がかかる仕組みだ。なお利用料金はエリアによって異なるが、15分60円程度だという。

シェアサイクルに着目した理由

HELLO CYCLINGは、OpenStreet社 代表取締役 横井氏がソフトバンク在籍時代に、新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー(SoftBank InnoVenture)」(以下、SBIV)に事業アイデアを応募したことがきっかけで誕生したサービスだ。しかし、もともとのアイデアはそれよりも前からあったのだという。


横井晃氏

「東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった2013年に、ソフトバンク社内で『オリンピック向けビジネスを創出するビジネスコンペ』がありました。実はそのときにも、シェアサイクル事業を提案していたのです。しかし、なかなか思うように進まなくて。諦めきれずに、ビジネスとしての可能性をもう一度見いだそう、という思いでSBIVに応募したんです」(横井氏)

なぜ横井氏は、シェアサイクル事業に着目したのだろうか。背景には2つの要因があったという。

1つは、IoTビジネスとしての可能性。2011年頃からさまざまなIoTサービスが登場してきたなかで、自転車にまつわるビジネスは、当初IoT化が進んでいなかった。

「レンタサイクル、シェアサイクル、駐輪場など、いずれも有線・有人で管理されているのが実情でした。そこにテレマティクス(*1) が介在することができれば、まだ産業として発展の余地があると考えたのです」(横井氏)

横井氏は続ける。

「もう1つの理由は、自転車という存在そのものに、私個人として可能性を感じているからです。これまで人の移動を広範囲に広げてきた“乗り物”として、飛行機、船舶、電車、バス、自動車……などが生まれてきました。そのなかで、小回りの利く『自転車』は意外と行動範囲が広く、エネルギー効率もよい。いまだ身近な交通手段として老若男女に使われています」(横井氏)

自動車やバイクなどとは異なり、自転車は免許が不要な乗り物だ。1kmの移動に使うエネルギーを比較しても、人が自分の足で歩くより断然移動効率もいい。最近ではハードの開発も進み、スポーツ仕様の電動アシスト自転車「e-bike」などを使えば、かなりの長距離を走ることもできる。

「この先、自動運転のようなテクノロジーが社会に広まったとしても、自転車はきっとなくならないと思うんです。それに近距離を移動するときは、身体を動かしたほうがいいと思うんですよ。自動運転によって身体を動かさなくなった人が、時間を割いてまでフィットネスジムに通うのは、なんだか腑に落ちなくて(笑)。自分の身体を使って、ある程度の距離まで自由に移動できる自転車は、これからも万人に愛される乗り物であり続けるのではと考えています」(横井氏)

場所さえあれば、すぐに事業参画できるプラットフォーム

SBIV応募を経て、横井氏は2年間ほどソフトバンク社内で事業化検討を進めた。そして2016年11月、ついにコーポレートベンチャーとして正式にOpenStreet社が発足する。しかしその道のりでは「ビジネスとして成り立たないかもしれない」と考える瞬間もあったという。

「手応えを感じたのは、コインパーキングを手がける事業者さんなどの話を聞いてまわったときでした」(横井氏)

HELLO CYCLINGのビジネスモデルは、BtoBtoCであることが特徴だ。

国内でシェアサイクル事業を手がける企業の多くは、ステーションや自転車を自前で用意して直接ユーザーにサービスを提供しているBtoCモデルだ。自転車のメンテナンス、運営、販促施策やビジネス拡大のためのエリア開拓も自社で行っている。

しかしOpenStreet社の場合、シェアサイクルサービスの運営は提携先である全国の事業者に一任している。「フランチャイズ型」に近いビジネスモデルといえばわかりやすいだろうか。

OpenStreet社がシェアサイクルの運営事業者に提供するのは、専用の自転車ではなく、「Smart Lock」というIoTデバイスだ。それを各事業者が自転車に装着し、ユーザーに貸し出すことになる。OpenStreet社としては、事業者が得た売り上げの一部もしくはデバイスの月額使用料を徴収することで利益をあげるという仕組みになっているのだ。

SBIVへの応募以前より、横井氏とともにアイデア検討・事業化検討を進め、現在はOpenStreet社のCOO 兼 執行役員を務める佐藤壮氏は次のように話す。


佐藤壮氏

「シェアサイクルのステーションを展開していくためには、拠点となる“空き地”が必要ですが、日本は国土が狭い。机上で考えると、『場所がないから(シェアサイクリングは)根付かない』となってしまいます。しかし、実際にパートナーを開拓するなかで関係者と話をしてみると、東京都内にもデッドスペースは結構あることがわかりました。たとえば、『車一台は置けないほどの空き地を何かに使えないか』と考えるコインパーキング事業者は多く存在しています。

自転車が置ける程度の場所さえあれば、専用のIoTデバイス(Smart Lock)を自転車に搭載するだけで事業参画できるのがHELLO CYCLING最大の強みです。『デッドスペースをもっと有効的に活用したい』という声を実際に多く聞けたことで、ビジネスとしての可能性を確信しました」(佐藤氏)

その確信を現実のものとし、2016年11月からサービスは開始された。後編では、HELLO CYCLINGが実際にどのように導入され、どのようなビジネスの可能性を秘めているかについて見ていく。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報工学)を合わせた造語で、一般的には移動体(自動車・自転車)に通信システムを搭載して情報を送受信するシステムのこと。

プロフィール

OpenStreet株式会社 代表取締役社長 横井 晃氏

2010年ソフトバンク中途入社。2016年、ソフトバンクの新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」に提案された1000提案以上の中から事業検討を経て、 OpenStreet 株式会社設立、代表取締役に就任。ソフトバンクアカデミア在籍。

OpenStreet株式会社 COO 兼 執行役員 佐藤 壮氏

2010年ソフトバンク中途入社。ソフトバンクグループ代表の孫正義による後継者発掘・育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」生に選出されて以来、日々新規事業の企画・提案を手掛ける。2016年、OpenStreet株式会社を設立、Fouder兼COOに就任。

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