ビジネス創出

地域の事業者とともに実現する短距離交通インフラの構築【後編】

記事内容の要約

  • HELLO CYCLING最大の特徴はBtoBtoCのビジネスモデルで、地域の事業者と連携して提供するシェアサイクルのサービスである
  • 栃木県小山市の地域創生事業、阪神電気鉄道株式会社の災害時対策など、単なるシェアサイクルの枠にとどまらない事業を展開している
  • 今後、自転車活用推進法に基づく道路環境整備における活用など、HELLO CYCLINGで得られるビッグデータを、社会全体で活用できる可能性を追求していく
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この記事の前編を読む

2016年11月に始まったシェアサイクルサービス「HELLO CYCLING」は、2018年9月現在、全国85市区町村で展開されている。ステーション(自転車の貸し借りの拠点)の数は全国1,000カ所。連携している事業者は57社で、その種別は、自治体やコインパーキング、コンビニエンスストアとさまざまだ。

HELLO CYCLINGを運営するOpenStreet株式会社は、 このサービスをどのように成長させようとしているのか。「ビッグデータを社会に還元したい」と語る代表取締役の横井晃氏と、COO 兼 執行役員の佐藤壮氏に話を聞いた。

HELLO CYCLINGが多くの事業者に導入される理由

シェアサイクル事業を手がける企業の多くが自前で自転車やステーション(自転車の貸し借りの拠点)を用意しているのに対し、OpenStreet社は各地域の事業者と連携することで、シェアサイクルのプラットフォームを構築している。このビジネスを行うための“仕組み”を提供する事業であることが、競合他社との最大の違いだ。連携する事業者の数は、日々順調に増えている。

事業者がHELLO CYCLINGを導入するきっかけは、実にさまざまだ。コンビニエンスストアであれば、駐車場の一角を利用してHELLO CYCLINGを導入することで、集客や客単価の向上を狙える。不動産仲介会社なら、「自転車を買わずに済むマンション」のように自社の賃貸物件の付加価値を高められる。コインパーキングなら、パーク&ライド(*1)による利用者数の増加を図れることだろう。


OpenStreet株式会社 COO 兼 執行役員 佐藤壮氏(右)

「各事業者は、HELLO CYCLINGを自分たちの事業としてサービス展開することができます。自社のアセットを使いながら自ら販促活動を行って事業展開できる点が、事業者にとって大きな意味を持つのだと思います」(佐藤氏)

地方創生と災害対策に対する期待

HELLO CYCLINGは地方創生の観点からも注目されている。

たとえば栃木県小山市では、小山市観光協会がHELLO CYCLINGを2017年4月に導入。シェアサイクルの独自ブランドとして「らくーる」を展開中で、小山駅や近郊の商業施設などにステーションを配置している(*2)。

「小山市には渡良瀬遊水地という観光名所があります。しかし、入園券などは発行していないので、実際に何人の方が訪れたかわかりません。そのため観光協会としても、誘客施策を立案しづらかったのです。ところがHELLO CYCLINGの導入後は、自転車内蔵のGPSで利用客の足跡が追えるので、少なくとも自転車で何人訪れたかはわかるようになったのです。さらに、『観光客は、こんなところにも足を伸ばしていたのか』と、新たな人気スポットを発見することもできる。『これで誘客施策を進める議論のベースができた』と協会の方が話していたのが印象的です」(佐藤氏)

さらには災害対策としても、地域の自治体から大きな期待を寄せられている。

阪神電気鉄道株式会社は、関西で初めてHELLO CYCLINGを導入。沿線の複数の駅にステーションが設置されている(*3)。そして2018年6月18日の大阪府北部地震の際、自転車が無償で貸し出された。

「自転車は、災害時の移動手段として非常に優れています。医療従事者の方に緊急用のカードキーを配布すれば、交通規制がかかるなかでも被災地の救助・介助に向かえるようになるかもしれません」(横井氏)

自転車イメージ

自転車の足跡データ活用の可能性

2017年5月、「自転車活用推進法」が施行された。その条項には、「自転車専用道路・自転車専用通行帯等の整備」を重点的に検討するという内容が含まれている。

「これから国土交通省は、自転車専用道路の整備を急ぐことでしょう。しかし、現状では、どこに専用道路や専用通行帯を整備すべきかの『優先順位』は決まっていないはずです。そこで、HELLO CYCLINGで取得しているデータを活用できるのではと考えています。ユーザーがよく走る場所を特定することにより、より効率的に有効なエリアを整備できます」(横井氏)


OpenStreet株式会社 代表取締役 横井晃氏

現在、HELLO CYCLINGで取得しているデータには、ユーザー情報や自転車のバッテリーの残容量、タイヤの空気圧、さらにはGPSによる移動経路に関する情報などがある。

「たとえば鉄道会社は、乗車する人の『この駅からあの駅までの移動』に関するデータは保有しています。しかし、駅を出た先の“ラストワンマイル”まではわからないのが実情。まだまだ可能性の域を出ていませんが、HELLO CYCLINGの移動データを活用することで都市開発にも貢献できると思っています」(佐藤氏)

ツーショット

「住居エリアに強い事業者もいれば、商業エリアに強い事業者もいます。そうした方々と連携することで、短距離交通のインフラを構築する――。HELLO CYCLINGはそんな考えのもとに成り立っているプラットフォーム型ビジネスです。われわれは、自社のビジネスを成長させるためだけにビッグデータを使おうとは考えていません。より有用なかたちで社会全体に活用できる方法を模索していくつもりです」(横井氏)

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注釈:
(*1)ある地点までは自動車を利用し、途中から自転車や電車などに乗り換えて移動する方式。
(*2)小山市観光シェアサイクル「らくーる」の運用スタート!!(外部サイト)
(*3)阪神電気鉄道株式会社 –ニュースリリース(外部サイト)

プロフィール

OpenStreet株式会社 代表取締役社長 横井 晃氏

2010年ソフトバンク中途入社。2016年、ソフトバンクの新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」に提案された1000提案以上の中から事業検討を経て、 OpenStreet 株式会社設立、代表取締役に就任。ソフトバンクアカデミア在籍。

OpenStreet株式会社 COO 兼 執行役員 佐藤 壮氏

2010年ソフトバンク中途入社。ソフトバンクグループ代表の孫正義による後継者発掘・育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」生に選出されて以来、日々新規事業の企画・提案を手掛ける。2016年、OpenStreet株式会社を設立、Fouder兼COOに就任。

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