Dの視点

【注目のひと】土屋尚史氏(Goodpatch CEO)

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Insight for Dが注目する人物のパーソナリティーに迫る本企画。影響を受けた人物や書籍、過去の失敗、人生哲学などを10の質問から掘り下げます。

「デザインの力を証明する」をミッションとし、UI/UX領域に特化したデザイン会社Goodpatch設立者で代表の土屋尚史氏。起業家を志し4年半の会社員生活を送ったのち、27歳でサンフランシスコに渡りました。2011年に起業したGoodpatchは、多国籍の社員とともに、東京・ベルリン・ミュンヘン・パリを拠点に活動しています。デザインの力でさまざまな課題を解決する土屋氏の視点は、どのような経験や信念から生まれているのでしょうか。

土屋氏写真

Q1: 学生(子ども)の頃に打ち込んだことはなんですか?

小学生のときから野球をやっていて、いずれは甲子園に出場するものだと思っていました。『H2』や『タッチ』(共にあだち充著/小学館)などの野球マンガが愛読書だったので、高校野球が好きだったんです。僕が小中学生時代の高校野球は松坂大輔選手が活躍していて、あのときの高校野球は本当におもしろかったです。

ただ中学3年のときにレギュラーになれなくて……。心が腐ったんでしょうね、高校ではサボれる部活という理由でハンドボール部に入っていました。髪も伸ばせるし、染められるし(笑)。

Q2: ご自身の考え方や生き方に影響を与えた人物や書物はありますか?

起業家を志すきっかけになったのが孫正義さん(ソフトバンクグループ代表取締役会長)で、会社を辞めてシリコンバレーへ行くきっかけを与えてくれたのが南場智子さん(DeNA代表取締役社長)です。
僕は21歳までロクでもない、体たらくな大学生だったんです。というのも21歳のときに生死に関わる病気を患ってしまい、退院後に人生を見つめ直したんです。そのタイミングで復学した大学で受講していたのが「ベンチャー企業論」。孫さんの起業ストーリーに心を動かされて起業家を志したのが、すべてのきっかけなんです。人はいつ死ぬかわからない。どうせなら自分も世の中に爪痕を残すようなことをしたいと。孫さんも26歳のときに生死に関わる大病を克服されて、現在はスーパー経営者になっているんですよね。

その後、27歳のときに祖母の遺産となる550万円が入ったんです。それをきっかけに会社を辞めて、いろいろな起業家の講演を聞きに行きました。その一つが南場さんだったんです。当時DeNAはサンフランシスコの企業を買収して、南場さんは月の半分をシリコンバレーで過ごしてたんですね。「シリコンバレーのベンチャー企業はさまざまな人種で構成されている環境で一つのサービスをつくっている。だから最初からグローバルなマーケットで考えるのは当然のこと。けれど日本のベンチャー企業は日本人だけだから、マーケットを国内で考えてしまう。それでは最初から世界を見ている企業に敵うはずがない。これから起業するきみたちは日本人だけでチームをつくっていてはダメだ」と言われたんです。その言葉に感銘を受けて、次の日にはシリコンバレーへ行こうと決意していました。

Q3: 大きな失敗の経験はありますか? それをどのように乗り越え、なにを学びましたか?

起業してから毎日のように失敗していますが……ここ3年がもっとも辛かったですね。会社としては成長をしていると思うんです。一方で社員が50人から100人へと急増するスピードに組織体制の構築がついていけなかったこともありどんどん社員が辞めていく状況が生まれてしまいました。自分自身が経営者として経験不足だったため、社員にしっかりとGoodpatchでの未来を描かせてあげられなかったんです。何かを判断する時に中途半端な優しさがジャマして、切り捨てる選択ができなかったこともありました。

社員がモチベーションを保ちチャレンジングに仕事をするためには、マネジメント層がそれに応えられる状況をつくらないといけないんです。その環境をつくり出すのに時間が必要で。マネジメントの難しいと言われるデザイナーをマネジメントする人材を育てるのには2年を要しました。まだすべてが解決しているとはいえないですが、以前と比べたらだいぶ好転したと思います。失敗は失敗として受けいれて、とにかく諦めないようにしていますね。

土屋氏写真

Q4: 毎日の仕事のなかで、いちばん大事にしていることはなんですか?

辛いことはいろいろあるけれど、とにかく折れないで逃げないこと。そして、前進すると決めています。

Q5: もし、いま 20 歳だとしたらどんな仕事をしようと思いますか?

僕はデザイナー出身ではないので、海外のデザインスクールでデザインのことを学んでから起業するかな。いまはつくる側の専門性を持ったうえでビジネスを行う人の価値が高いと思うんですよね。どんな仕事かというよりは、やはり起業が前提になると思います。

Q6: 気持ちが沈んだ時、どのように気持ちを切り替えますか?

家族と過ごすことですね。子どもがカワイイんですよ(笑)。8歳の長女と3歳の長男がいるんですけど、家に帰ると「パパ!」って飛びついてきて、その瞬間に沈んだ気持ちがスッとなくなります。

起業家って生きているすべての時間で仕事のことを考えているものですが、たとえば子どもが泣きじゃくったときとか、ふと仕事が頭から離れる瞬間があって。家族と過ごすことでバランスが取れているというのもあると思います。

土屋氏写真

Q7: これまで観たなかでお気に入りの映画はなんですか?

僕はPixarの映画が大好きで、Goodpatchの各会議室にPixarのキャラクター名を付けているほどカルチャーに強く影響を受けています。特に好きなのは『トイ・ストーリー3』(リー・アンクリッチ監督/2010年)。Pixar作品の中でも名作中の名作です! 大学生になったアンディとおもちゃたちとの物語があって、さらにあのラストシーンなんて……涙腺が崩壊しまくりました(笑)。

ふたつ目は、『信長協奏曲』(松山博昭監督/2016年)。小栗旬さんの生き様が好きですべての作品を見ているんです。その小栗さんが演じる主人公サブローが、戦国時代へタイムスリップして織田信長として生き抜いていくストーリーです。徐々に人々の支持を得るようになり、やがて天下統一を目指しはじめる姿やサブローの飾らない正直な人間性からくる新しいリーダーシップのスタイルに、自分も影響を受けました。

3つ目は、ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイが主演を務めた『マイ・インターン』(ナンシー・マイヤーズ監督/2015年)です。スタートアップの経営者が主人公の映画って意外と少ないんです。アン・ハサウェイ演じるジュールズが不器用なりにも経営をしていく背中を、デ・ニーロ演じるシニア・インターンのベンが「豊かな人生経験を持つ」からこそできるアドバイスでサポートしていくんです。彼女が次々に起こるハードシングスに立ち向かう「アントレプレナーシップ」には、多くの起業家が共感すると思います。

Q8: いま注目していることはなんですか?

中国からどんなサービスが出てくるのか、そこに注目しています。長らくシリコンバレー発のサービスをベンチマークにしてきましたが、今のイノベーションは中国の方が完全に進んでいますね。数年後はインドやアフリカに移っていくのかもしれません。

Q9: 10年後はどんな時代になっていると思いますか?

この10年はスマートフォンの普及が挙げられますが、10年後に人々が使うメインのデバイスは進化して変わっているはずだし、そうであってほしいと願っています。あとは労働者が減っていくので、ロボット産業がもっと生活に入り込むかもしれないですね。そこは日本がもっと引っ張らないといけない産業だと思います。

そのとき、娘は高校3年か大学生……。彼氏ができたりして、もう「パパ!」って飛びついてくれなくなるだろうから、何を癒しに頑張ればいいのかわかりませんね……(笑)。

Q10: 人生において成し遂げたいことはなんですか?

世の中の流れとしてデザインの重要性が広まっているので、デザインのスキルを持った起業家が出てくるとより世の中が良くなるだろうと思うんです。そうした起業家に出資をして育てながら、一緒に仕事をしたいですね。

医師で政治家の後藤新平が「財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上」という格言を残しているんですが、まさしく物やお金でなく、事業を通して人を育てていければと考えています。

プロフィール

土屋尚史氏 株式会社グッドパッチ 代表取締役社長 / CEO

btrax Inc.にてスタートアップの海外進出支援などを経験し、2011年9月に株式会社グッドパッチを設立。自社で開発しているプロトタイピングツール「Prott」はグッドデザイン賞を受賞。2017年には経済産業省第4次産業革命クリエイティブ研究会の委員を務める。2018年にデザイナーのキャリア支援サービス「ReDesigner」を発表。

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