ビジネス創出

グッドラックスリーの挑戦[前編]ブロックチェーンゲームのおもしろさとは

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仮想通貨の根幹技術として、広く知られるようになったブロックチェーン。最近では、農産物の品質保証を行うトレーサビリティーの取り組みにもブロックチェーンを活用する動きが出てくるなど、その応用分野は広がっている。

2018年6月、福岡でスマートフォンゲーム事業を展開する株式会社グッドラックスリーは、国内初となるブロックチェーンゲーム「くりぷ豚(トン)」をリリースした。くりぷ豚とははたしてどのようなゲームなのか。そして、なぜゲーム開発会社がブロックチェーンに着目したのか。株式会社グッドラックスリー代表取締役社長 井上和久氏に話を聞いた。

井上氏

ゲーム作りはノリと縁、そして直感が大事

――本日はよろしくお願いいたします。井上さんはグッドラックスリーを立ち上げる前、コンサルティングファームのドリームインキュベータ(以下、DI)にいらっしゃったと伺っています。

井上和久氏(以下、井上): はい、9年間在籍していました。経営コンサルタントとして、約10業種以上にわたって企業を支援してきました。

――そこからゲーム会社をご自身で立ち上げられたというのは、どのような契機があったのでしょうか。

井上: もともと学生のときから、起業家になりたいとは思っていました。ぼくの高校は、孫正義さんや孫泰蔵さん、堀江貴文さんらがOBに名を連ねていて、彼らの影響が大きかったんです。大学生のときに、孫泰蔵さんの会社でアルバイトとして働かせてもらっていたのですが、当時はまだ起業する実力が足りていないと感じていて。起業する力をつけるために、ベンチャーインキュベーションをしているDIに、新卒で入社しました。

――ゲーム作りのノウハウは、DI時代に学んだのですか?

井上: ベンチャー投資事業の一環で、あるアニメ制作会社に関わったのがきっかけですね。その会社は質の良いキャラクターコンテンツを持っていたので、ゲーム事業の領域でビジネスを拡大できる可能性があったんですが、資金的に、単独でのゲーム開発は難しかった。そこで「それならDIも一緒になってゲームをつくろうじゃないか」という話になりまして。DIにいながらにして、ゲーム作りをすることになったんです。

――そして経験を積んだ後に独立し、グッドラックスリーを創業されたというわけですね。貴社の開発した「さわって!ぐでたま」はシリーズ累計400万ダウンロードを超える人気ゲームアプリです。最初からゲーム開発は順風満帆だったのでしょうか。

井上: いえ、全く(笑)。「さわって!ぐでたま」が苦節9本目にしてのヒットでした。何をどうやったらヒットを創れるかは手探りでした。とにかく打席に立たないと駄目だと思ってゲーム開発を続けてきました。ビジネスで成功するには、特にゲーム作りに関しては、ノリとご縁、そして直感が重要だと思っています。

――ノリとご縁、直感ですか。ちょっと意外ですね。

井上: コンサル出身なのに非論理的な話ですみません(笑)。でも、破壊的イノベーションは、論理からは生まれません。今も重要な意思決定をする際は、ノリと直感を大事にしています。ブロックチェーンビジネスに乗り出したのも、直感が働いたからなんです。

井上氏

ブロックチェーンゲームは従来のゲームと何が違うのか

――貴社が2018年6月にリリースした「くりぷ豚(トン)」は、日本で初めて「ブロックチェーン技術」を活用したゲームアプリとして話題になりました。どういうものか教えていただけますか。

井上: 簡単に言うと、「くりぷ豚(トン)」という豚のキャラクターを育成、繁殖するゲームです。豚同士を交配させると、新しい豚が生まれます。豚には値段をつけて、他プレーヤーに売ることもできます。育てた豚でレースに参加したり、めでたりして楽しめます。


くりぷ豚(トン)
出典:グッドラックスリー

――このゲームでは、仮想通貨を使うそうですね。

井上: 豚を手に入れる際、仮想通貨である「イーサリアム」で実際に購入していただきます。そして、手持ちの豚は取引所に出品して売ることができて、その報酬も仮想通貨で支払われます。ゲームの名称である「くりぷ豚」も、「クリプトカレンシー(仮想通貨)」が由来です。

――実際に売り買いできるという「市場」の概念を持たせているのが、従来型のゲームとの大きな違いですね。それ以外に、従来のゲームとの違いはありますか?

井上: これまでのゲームは、事業者による「サービス終了」の決定にユーザーがあらがうすべはありませんでした。せっかく育てたキャラクターが消えてしまったら、ユーザーは悲しいですよね。でも、たとえ1,000時間かけようとも、1,000万円課金していようとも、サービスが終了してしまえば、すべてがパーになってしまっていたわけです。その点、くりぷ豚は、ブロックチェーン上に記録されているので、データは永遠に消えません。実際のカードやフィギュアなどと同じように、デジタル上のデータでありながら資産にできるようになったのです。これが、ブロックチェーン技術をゲームに活用する際の一番の面白みですね。

――ゲームのデータに資産性を持たせるというのは新しいですね。貴社はどのように収益をあげているのですか?

井上: ユーザーが豚を購入するときの販売収入と、豚を売買するときの売買手数料をいただいています。

――海外には「クリプトキティーズ」という猫を育てるブロックチェーンゲームもありますが、それとは何が異なるのでしょうか。

井上: まず、クリプトキティーズが2Dキャラであるのに対して、くりぷ豚は3Dキャラだという違いがあります。そしてもう1つの大きな違いが、キャラクターの総数。配合によって生まれるキャラクターの種類は、クリプトキティーズは40億通りだといわれていますが、くりぷ豚は3京6,000兆通りも存在します。さらに、レースという遊びも加わり、より豚を育てる喜びが増しています。

――現在このゲームを楽しんでいるユーザー数はどのくらいいるのですか。

井上: ユーザー数というか、豚の数でいうと約2万8,000頭が存在しています。これは交配によって生まれた豚も含みます。いまはアーリーアダプターが遊んでくれている段階ですね。仮想通貨に対するリテラシーをある程度持っていないと遊びづらいゲームではあるので、もっとブロックチェーンゲームというジャンルが世の中に浸透していってほしいですね。

ブロックチェーンゲームを開発した理由

――さきほど「直感が働いたから」とおっしゃっていましたが、ブロックチェーンゲームを構想され始めたのは、いつくらいですか?

井上: もともと私の尊敬する人が、2~3年前から「ブロックチェーンビジネスの時代が来る!」と言っていたんですよ。そして、その方がブロックチェーン関連の記事を「読め!」と、しょっちゅう共有してきて(笑)。いわれるがまま読んでいるうちに「この技術はすごいぞ」と感じ始めたのが2017年です。

――新しい技術に興味を持ってから1年でゲームのリリースまでこぎつけたというのは、かなりのスピードですね。

井上: 現 取締役の畑村と出会えたのが大きいですね。彼はDeNAでモバゲータウン(現Mobage)の立ち上げに関わっていた人物なのですが、福岡で仕事がしたいと言っていて。ランチの機会を設けて話してみると、今一番興味のある分野が、お互いにブロックチェーンビジネスでした。ならば一緒にやろう、と動き始めたのが2017年8月の出来事です。

――世界初のブロックチェーンゲーム「クリプトキティーズ」が登場したのは2017年11月なので、その前から「くりぷ豚」の構想はあったということですね。先を越された悔しさはありましたか。

井上: いや、それはないですね。構想するのと実際に作るのとでは大きな違いがありますから、むしろ、先にゲームとしての形を見せてもらえた喜びのほうが大きかったです。われわれとしては、これからはブロックチェーンの時代だ、と取り組み始めたものの、「本当にプロジェクトをつくれるのか。ビジネスになるのか」と手探りの状態でした。でも、そんなときにクリプトキティーズが登場したので、「よし、やっぱりいける!」と自信を持つことができたのです。

――ブロックチェーンゲームのひとつのあり方を先行して提示してくれたということですね。

井上: はい。なにより、まだ市場自体が競争する段階にはありません。まずはブロックチェーンビジネスに興味をもつ人の数を、事業者側とユーザー側の両面で増やしていく必要があります。1社だけが抜きんでても市場は大きくなりませんからね。競争することより、協調していくことの方が今のブロックチェーンビジネスには必要だと感じています。

井上氏

後編では、ブロックチェーンを活用したプラットフォームの展開をもくろむなど、ゲーム開発にとどまらないグッドラックスリーの取り組みとその狙いについて話を聞く。

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プロフィール

株式会社グッドラックスリー 代表取締役社長 兼グッドラッカー 井上 和久氏

福岡県出身。東京大学工学部卒業。ドリームインキュベータを経て創業。「ブロックチェーン×エンタテインメントで世界最先端を走る」を掲げ、国内初ブロックチェーンゲーム「くりぷ豚」、「クリプトアイドル」、「RAKUN」などを手掛ける。「さわって!ぐでたま」シリーズ累計400万DL突破。地域発企業ドラマ「人生のメソッド」シリーズは、福岡国際映画祭2018上映作品。

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