ビジネス創出
グッドラックスリーの挑戦[後編]ブロックチェーンで実現する楽しい世界
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福岡を拠点にゲーム開発事業を展開する株式会社グッドラックスリー。同社は、国内初となるブロックチェーンゲーム「くりぷ豚(トン)」をリリースするなど、ブロックチェーンの活用を積極的に進めている。
さらにはゲーム開発だけにとどまらず、ブロックチェーンを基盤としたアミューズメントプラットフォームの展開も2019年早々に始めようとしている。グッドラックスリーは、なぜプラットフォーム事業へ乗り出したのか。そして、ブロックチェーンを活用することで、どのような世界を、どのようにして作り出そうとしているのか。株式会社グッドラックスリー代表取締役社長 井上和久氏に話を聞いた。
書き手も読み手も報酬を得られる新たなプラットフォーム
――貴社のブロックチェーンビジネスへの取り組みは、ゲーム開発以外に、アミューズメントプラットフォームでも行われていると伺っています。まもなく展開される「RAKUN(ラクン)」とは、どのようなものでしょうか。
井上和久氏(以下、井上): RAKUNはブロックチェーンを活用した基幹インフラシステムを中心に構築されるエンターテインメントエコシステムです。最終的にゲームやバーチャルスポーツ、アバターやデジタル資産の取引、メディアやコミュニティーといったものがシームレスに楽しめる場所になります。まずはメディアから展開していく予定で、「記事の執筆者」と「記事の読み手」の両方が報酬をうけとれるメディアをつくります。
従来のメディアは、媒体を介して読み手が執筆者に対価を支払うのが当たり前でした。また、これまでのウェブメディアはアフィリエイトなどで収益をあげていたわけです。そうではなく、RAKUNでは、良質な記事を書いた人に対してはもちろん、良質な記事をきちんと評価した人にもトークン(仮想通貨)を与えます。この仕組みにより、広告収益に頼らない、メディアのエコシステムが成立するのです。
――書き手だけでなく、読み手にも報酬を支払うというのは新しいですね。報酬は貴社が支払うのでしょうか。
井上: 誰も支払いません。報酬は、常に新規発行されたトークンで支払われることになり、トークンを発行する主体者はいません。
――どういうことでしょうか。
井上: わかりづらいですよね(笑)。でも、ビットコインも発行者はいません。それと同じなのです。ビットコインの価値は、マイニング(採掘)にかかるサーバー代、電気代などが裏づけになることで担保されて、通貨発行主体のいない経済活動が生まれています。これをトークンエコノミーといいますが、記事に対して「いいね」やコメントをする行為をマイニングに置き換えるのです。「いいね」をするのも、コメントするのも、記事を書くのも、限りある時間を割いて行います。その有限性に対して価値をつけるということなのです。
――なぜこのようなサービスを始めようと思ったのですか。
井上: 海外では、すでにブロックチェーンメディアが話題になっています。そして、そのことをブロックチェーン関連の講演で話してみたら、興味をもった媒体社や事業者が多くいました。それならば、と当社でもブロックチェーンをつかったプラットフォームのRAKUNを開発することにしたのです。
――ブロックチェーンメディアは、従来のメディアとどのように違うのでしょうか。
井上: 従来型のメディアは、いわゆる「中央集権型」ですよね。発信側と受信側が明確に区別されています。一方のブロックチェーンメディアは「参加者全員で作りあげる」ものなので、書き手も読み手も平等です。今の時代、インタラクティブでないコンテンツは盛り上がりません。テレビがつまらなくなったといわれる理由の1つには、一方的な情報発信がまかり通っている面もありますからね。コンテンツの是非をユーザーが正しく評価できるのが、今後のメディアのあり方なのかもしれません。
――「プラットフォーム」ということは、仕組みを提供していくということでしょうか。
井上: そのつもりです。バーチャルな空間でさまざまな仮想体験を楽しめるプラットフォームです。ただ、ブロックチェーンを活用したアミューズメントプラットフォームに興味を持つ事業者は多くいらっしゃいますが、いまいちピンと来ていない方が多いのも実情です。そこで、まずは当社がRAKUNの仕組みによるアミューズメントプラットフォームを始める予定です。「百聞は一見にしかず」ですので、アミューズメントプラットフォームがどういうものなのか提示することからはじめます。
人間の生活を大きく変えるための挑戦
――アミューズメントプラットフォーム作りに取り組まれていますが、本来貴社はゲーム開発会社ですよね。どんなビジョンを持ってブロックチェーンビジネスに取り組んでいるのでしょうか。
井上: レディ・プレイヤー1(*1) という映画をご存じですか? 仮想空間のなかで生活して、ゲームをして報酬を得られる、あの世界観を現実のものにしたいんです。VRやARによって、仮想空間を作り出すことはすでに可能です。そこにブロックチェーンの特徴である、データの資産化とスマートコントラクト (*2)といった側面を組み合わせれば、仮想現実での生活基盤を作り上げることは、決して夢物語ではありません。
極論をいえば、世の中のみんなが遊んで暮らせる時代にしたい。ご飯を食べるだけなら動物でもできますからね、遊びを楽しんでこそ人間らしいと思っています。遊んで報酬が得られるなら誰も文句ないでしょう。その実現に向けた第一歩が、RAKUNです。
――そういった世界を実現させるためには、まずはブロックチェーンビジネスそのものの市場が大きくなる必要がありますね。
井上: そのとおりです。ブロックチェーンは、第2のインターネットといわれるだけあって、世の中のあらゆるものを便利にし、人々の生活を一変させるテクノロジーです。あらゆる業種、産業の人たちがブロックチェーンビジネスに携わるべきなのです。だからこそ、ブロックチェーンメディアを当社だけのものにせずに、プラットフォームとして展開していくのです。
――ブロックチェーンビジネスのステークホルダーを増やしていくためには何が大事なのでしょうか。
井上: まず多くの人に、ブロックチェーンを実際に体験してもらうことです。
――「ブロックチェーンを体験する」とは、具体的にどういうことですか?
井上: ブロックチェーン関連のサービスを使ってみる、ということです。ブロックチェーン関連の講演を聴講する人は、今すごい勢いで増えていますし、僕の講演にもたくさんの方がいらっしゃいます。そのとき僕が言うのは、「僕の講演を聴くよりも、家に帰って仮想通貨の口座を開設したほうが、絶対に理解が進みます」ということ。
――習うより慣れよ、ということですね。
井上: そうです。僕自身が、学ぶよりもまず行動する性格ということもありますが、実際にやってみないと分からないと思います。思い返せば、「インターネット」の黎明期(れいめいき)と同じですね。インターネットを座学で理解しようとすると、実はかなり難しい。でも、今はみんな当たり前に使っていますし、インターネットがどんなものか肌感覚で理解しています。今のブロックチェーンは、1996年時のインターネットと同じような存在なのではないでしょうか。まずはブロックチェーンに興味をもつ同志を増やし、新しいビジネスをともに生み出していきたいと思います。
――ますますのご活躍を期待しています。本日は取材ありがとうございました。
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