Dの視点

【注目のひと】伊藤羊一氏(Yahoo!アカデミア 学長)

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Insight for Dが注目する人物のパーソナリティーに迫る本企画。影響を受けた人物や書籍、過去の失敗、人生哲学などを10の質問から掘り下げます。

今回登場する「注目のひと」は、ソフトバンクアカデミア在籍時に孫正義氏をもうならせたプレゼンによって国内CEOコースで年間1位の成績を修めて、現在はヤフー株式会社の企業内大学「Yahoo!アカデミア」の学長を務める伊藤羊一氏です。

年間200回以上の講演をこなし、2018年に上梓した『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(SBクリエイティブ)は、アマゾンの「ビジネス・経済書」ランキングで10週連続1位を獲得するなど、常にリーダーとしての仕事にまい進する伊藤氏。しかし、銀行員時代には左遷を経験するなど『典型的なダメサラリーマンだった』と自身を振り返ります。さて、伊藤氏はどのような変遷をたどったのでしょうか……?

伊藤氏写真

Q1: 学生(子ども)の頃に打ち込んだことはなんですか?

中学1年生のときから高校2年生になるまで、硬式テニスに打ち込んでいました。当時は、寝ても覚めてもテニス漬けでしたね。その後トッププロになった方々とも対戦していましたよ。

やめたきっかけは些細なことでした。学校のテニス部って、練習よりも球拾いの時間のほうが長いんです。それが嫌で顔を出さなくなったらクビになっちゃった。学外のテニスクラブにも通っていたんですが、部活をクビになったタイミングで、クラブで付き合っていた子にもふられちゃって……。2つの出来事が重なって、自然とテニスから遠ざかりました。

今思うと、なぜテニスにあれほど熱中できたのかは分かりません。でも物事に熱中するきっかけなんてシンプルなものですし、思春期に1つのことに熱中できた経験は今も生きていると思います。

Q2: ご自身の考え方や生き方に影響を与えた人や書物はありますか?

テニスをやめた後は音楽にハマったこともあって、フレディ・マーキュリーとミック・ジャガーにはずっと憧れています。自分のパーソナリティーで人々を巻き込めるってすごいですよね。まさにカリスマだと思います。

2001年頃、趣味として自分で演奏し歌っていた曲をインターネット上に公開していたんです。当時、ベカルタ仙台というサッカーチームのサポーターだったので、チームや選手の応援歌を自分なりに編曲したりして。まだストリーミングサービスもない時代で、そんなことやっている人は、ほとんどいなかったんじゃないかな。僕のホームページがきっかけで、サポーターの間で応援歌の新曲が早々に広まったこともあって、僕にとってインターネットは表現の場みたいなものでしたね。

ビジネスでいえば、3人の人物に影響を受けました。

まず、孫(正義)さんです。対話してあれほど熱量を感じられる方はいません。2人目は、前職(プラス株式会社)時代の会長である今泉嘉久さんです。この方には、ビジネスの何たるか、のすべてを教わりました。ヤフーに転職するときも応援してくれた、良き理解者です。3人目は、現在はヤフーの会長である宮坂学です。当時、社長だった彼から「アカデミアの学長をやってくれ」と言われたのでヤフーに転職したわけで、今の自分のキャリアに大きな影響を与えた人物です。誰に対してもフラットでいられる姿勢を尊敬しています。

Q3: 大きな失敗の経験はありますか? それをどのように乗り越え、何を学びましたか?

新卒で就職した銀行で、頭取に「あなたは辞任すべきです」とメールしたことですね(笑)。

いや、いたって真剣な気持ちで送ったんですよ。同期のメンバーで銀行の将来について熱く話しているうちに、「よし、銀行を変えるために頭取へ直訴しよう!」と盛り上がりまして。しかし、実際にメールを出したのは僕一人だったという……。その2週間後に左遷されました。

でも当時は、メールが原因で左遷されたと気付いていなくて、ただの人事異動だと思っていたんです。数年前に当時の上司と飲んだときに「伊藤くんも大変だったね」と言われて、「え? なんのことですか」って(笑)。なので、その時まで失敗したという認識がありませんでした。

ただ、「レジスタンスを気取ってメールを出すだけでは何にも変えられない」ということは痛感しましたね。物申すには、実力をつけてしっかり結果を残していないとダメだったなと。

そのほかにもいろんな失敗をしましたよ。僕のやったことが、「やってはいけない仕事の例」として全社に通知されたこともありますし。本当にダメな社会人だったので、たいていの失敗は乗り越えられます。

伊藤氏写真

Q4: 毎日の仕事のなかで、一番大事にしていることはなんですか?

「FREE」「FLAT」「FUN」という3つの価値観を大事にしています。

「FREE」は、しがらみに縛られずに、自立しようということ。「FLAT」は、人にレッテルを貼らずに全員をリスペクトしようということ。「FUN」は文字通り、仕事を楽しもうということです。

これはYahoo!アカデミアのスローガンでもあります。この価値観を大事にして仕事に取り組みたいし、そういう人材を育てたいと思っています。

Q5: もし、いま20歳だとしたら、どんな仕事をしようと思いますか?

ミュージシャンを目指すと思います。音楽活動をしていましたが、当時はバンドで飯を食うという発想自体がなかったんです。それが残念でなりません。才能があるかどうかはともかく、思いがあれば、可能性はいつでも、なんでもあるんだぞ、ということを当時の自分に伝えたいですね。

Q6: 気持ちが沈んだ時、どのように気持ちを切り替えますか?

気持ちが沈んだ要因から逃げないようにしています。こういうとかっこいいですが、そもそも別のことで気を紛らわせようと思ってもできない性質なんです。問題の根幹を解決しないと、ずっと気が沈んだままなので、「明けない夜はない」と思って問題と向き合います。

Q7: これまで観たなかでお気に入りの映画はなんですか?

『ボヘミアン・ラプソディ』ですね。応援上映にも行きました。2回以上観た映画は初めてです。これまでクイーンをカラオケで歌うと微妙な空気になりがちでしたが、映画のおかげで歌いやすくなりました(笑)。あとファンではない方が観ても楽しめる点がいいですね。やっぱり偉大なバンドだと思うし、活力をもらえる映画です。

Q8: いま注目していることはなんですか?

フランスに、「ラ・スタシオンF」というインキュベーション施設があるんです。その写真を雑誌で見て、目が離せなくなりました。

僕は今、「リーダー開発」と「インキュベーションのサポート」、そして「プレゼンテーションスキルアップ」という3つの仕事をしています。ただ、この3つの仕事に対して実はつながりを見いだせていなかったんです。たまたま平行して進めているだけの、バラバラの仕事だと思っていました。それがスタシオンFの写真を見たときに、僕の中で点と点がつながったんですよ。周囲からも「羊一さんがやりたいことって、これなんじゃない?」と言われて妙に納得しました。いつか訪れて、自分の目で見てみたいと思っています。

伊藤氏写真

Q9: 10年後、どんな時代になっていると思いますか?

確実にいえるのは、IoTによってあらゆるものがインターネットにつながって、その結果、データが蓄積されてAIが賢くなっているということ。シンギュラリティが起きるかどうかは分かりませんが、「AIに取って代わられる仕事」は出てくるはずです。

ただ、人間にしかできない仕事にはいくつか種類があります。たとえば、問題設定の力が求められる仕事だったり、論理と感性を交えたコミュニケーションが重要な仕事だったり、アートの世界だったり。まぁ、これ自体はよく言われていることですよね。

でもこれらの仕事に必要なスキルって、ちゃんと学ばないと身につかないですよ。つまり、学んでない人は職にあぶれてしまうので、「仕事を作れる人」と「仕事がない人」の二極化が進んでしまうかもしれない。

そうならないように、多くの人に『学び方』を教えたいと思っています。人間だれしもが、トレーニング次第で自分を変えられますから。

Q10: 人生において成し遂げたいことはなんですか?

仕事だけが人生ではないですけど、僕は仕事を通じて多くの喜びと苦しみを味わいました。だからこそ、「FREE」「FLAT」「FUN」を大切にしながらずっと仕事を続けたいし、多くの人に仕事を楽しんでほしい。

昨年上梓した『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』は、おかげさまで20万部を超えました。ありがたい話ですが、日本で仕事をしている人は数千万人もいます。そう考えると、まだまだ届けられていない。中学生でも読める簡単な内容にしているのも、できるだけ多くの人に話を届けたいから。世界中とはいかないまでも、日本中の人に仕事を謳歌してほしい。そのための活動を続けていきたいです。

プロフィール

伊藤 羊一氏 Yahoo!アカデミア 学長

日本興業銀行、プラスを経て2015年4月にヤフー入社。企業内大学Yahoo!アカデミアの学長としてヤフーグループの次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授、株式会社ウェイウエイ代表として、ヤフー以外でも様々な活動に従事する。著作『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』『キングダム 最強のチームと自分をつくる』。

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