データ分析

PayPay100億円キャンペーンの波に乗ったのは誰? キャッシュレス化に与えたインパクトとは

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いまや多くの人がクレジットカードを持ち、コンビニエンスストアなどの支払いに交通系ICカードが使われるのも日常的な光景となった。そうしたキャッシュレス化の波が広がるなか、特にスマートフォンアプリなどで支払う「モバイル決済」が注目されている。この勢いに拍車をかけたのが、2018年12月4日から12月13日にかけてPayPay株式会社が実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」の第一弾だ。さまざまなメディアで取り上げられたのでご存じの方も多いことだろう。

10日間という短期で終了した加入促進キャンペーンだが、このビッグウェーブに乗ったのはどのような人たちだったのだろうか。また、このキャンペーンは日本のキャッシュレス化にどのような影響をもたらしたのだろうか。ヤフー株式会社(以下、Yahoo! JAPAN)のアナリスト、田中祐介と佐々木和生が分析した。

モバイル決済の主な利用者とは?

まず、本キャンペーンについて掘り下げる前に、既にモバイル決済を行っていた人にはどのような特徴があるのかを見ておこう。ここでは2018年8月にYahoo! JAPANが実施した、決済手段に関する市場調査の結果を参照したい。

図1をみると、個人年収が高い層ほど、ふだんからモバイル決済を行っていることが分かる。この傾向は、世帯年収においても同様であった。

図1


【回答者数】15歳以上男女全国居住マクロミルモニタ12万人をwebアンケート調査にて回収、インターネット人口の性年代構成比(2017年12月 通信利用動向調査 総務省調べ)に準じてウェイトバック集計
【集計方法】ふだん利用している支払い方法(コンビニやスーパー、飲食店、その他お店の利用などインターネット以外の利用に限る、かつ複数選択形式)の回答を元に、モバイル決済、電子マネー、クレジットカード、現金の優先順で回答者を区分して集計
・例えば、モバイル決済、電子マネー、現金の3種類を選択していた場合は最も優先度の高いモバイル決済者に区分
・モバイル決済[コード読み取り/Apple Pay/Google Payなど] 電子マネー[Suica/楽天Edy/nanaco/WAON/iD/QUICPayなど] クレジットカード[デビットカードを含む]

また、男女別でみると、女性に比べて男性のほうがモバイル決済を行う傾向にある(図2)。

図2


※集計方法は図1と同様 

年代別では、20代~30代前半のモバイル決済比率が高い。また10代はモバイル決済の比率が高い一方で現金で支払う比率も高い。これは、モバイル決済サービスはクレジットカードによる支払いと連携するものが多いことから、クレジットカードホルダーではない未成年の場合、現金による支払い比率が高くなっているためと考えられる(図3)。

図3


※集計方法は図1と同様 

以上のことから、キャンペーン以前よりモバイル決済を行っていた人については、「高年収」「男性」「若者」といった要素が特徴としてあげられる。

キャンペーンに興味を持ったのはどんな人?

それでは、本キャンペーンに興味を示した人たちにはどのような特徴があるのだろうか。先ほどの市場調査結果に加えて、Yahoo! JAPANのビッグデータを使って紐解いてみよう。まず、キャンペーン期間中に「PayPay」に関連したキーワードで検索した人たちが日ごろどんなことに興味関心を抱いているかを分析したところ、以下の特徴が見えてきた(図4)。

図4


【集計方法】キャンペーン開始前日時点での興味関心カテゴリー別に、キャンペーン期間中のPayPay関連キーワード検索率を集計、検索率が高かったカテゴリーのうち、上位カテゴリーほど大きく濃く表示。
(興味関心カテゴリーはYahoo! JAPANサイト内でのページ閲覧履歴などを元に特定の個人を識別しない方法で推定)
【PayPay関連キーワード】「PayPay」「ペイペイ」「ぺいぺい」のいずれかを含む(部分一致)

図4からわかるように、PayPayについてウェブ検索していた人の興味関心が高いワードとして、「NISA」「ふるさと納税」「格安航空」「法人税」「保険」などがみられる。「法人税」や「保険」といった語句の検索に関しては、控除や節税などに興味があると推測できる。

このほか「Mac」や「タブレット端末」に興味を持つ人は、キャンペーンへの関心度が高いことも分かった。これまで割引がされてこなかったApple製品のユーザーが、商品購入の機会として興味を示したのだろうか。

一方で、全額キャッシュバックの当選確率が高かったことから「射幸心をあおるのでは?」という声もあったが、「パチンコ」や「競馬」などのギャンブル関連に強い興味を持つ人たちがキャンペーンに高い関心を持つ傾向は見られなかった。

一歩進んだ日本のキャッシュレス化

最後に、本キャンペーンに対して、早期に関心を示したのがどんな人たちだったのかを見てみよう。Yahoo! JAPANの検索ログデータをもとに、キャンペーンが実施された2018年12月4日から13日までの期間で、PayPay関連の初回検索が行われたタイミングを決済手段別に見てみた(図5)。

図5


【集計方法】図1のアンケート回答者かつYahoo! JAPAN IDを保有している6.6万人の決済手段別に、キャンペーン期間中のPayPay関連キーワード初回検索日を集計(決済手段区分は図1と同様、集計対象キーワードは図4と同様)

図5をみると、以前よりモバイル決済を行っていた人たちが、PayPayに関して早々に検索したことがわかる。それに比べて、ふだん現金で決済している人たちはキャンペーンが終わるころに初めて検索する割合が高かった。これは、テレビの報道などでキャンペーンの反響を知った後に興味を持ったのではないかと推測できる。

そして、キャンペーンの序盤と終盤でPayPay関連の検索を行ったユーザーの興味関心にどのような違いがあったのかも見てみよう。

キャンペーン開始日にPayPayについてウェブ検索を行った人たちは、「任天堂DS」「PS4」「Wii」「クルマのおもちゃ」などへの興味が高かったことがわかった。具体的に購入したい製品が決まっている人ほど初動で反応したと考えられるが、時期的に子どもへのクリスマスプレゼント需要などが影響したと考えられる。

一方で、キャンペーン終了日にようやくPayPayについて検索した人たちには、「演歌」「ゴルフ」「相撲」などに興味を持つ傾向がみられた。このことから、年配層は波に乗るのが遅かったのではないかと推測できる。

これらのことからまとめると、以前よりモバイル決済を利用していた人たちの特徴となる要素は、「高年収」「男性」「若者」だった。そして2018年12月のPayPayのキャンペーンに高い興味を示したと考えられるのは、比較的「上手にお金と付き合っている」もしくは、「子を持つ親」という人物像が、検索データの分析によって浮かび上がった。

今回のPayPayのキャンペーンは、短期間でありながら、スマホを駆使する若者世代から子育て世帯といった幅広い層にその認知を一気に広げた。すでに第二弾のキャンペーンも開始したPayPayだが、日本のキャッシュレス化を後押しする一種の起爆剤となっていることは間違いない。

プロフィール

佐々木 和生(ササキ カズオ)

2005年ヤフー株式会社入社。ディスプレイ広告の効果測定やマーケットリサーチなどの調査企画設計、データ収集、集計分析に従事。2017年から広告のデータ分析を担当。

田中 祐介(タナカ ユウスケ)

2009年、ヤフー株式会社に新卒入社。2013年からレコメンデーションサービスに特化し、ECサービス・キュレーションサービスでモデル開発・システム開発・サービス運用と幅広い業務を担当。2014年から広告のデータ分析を担当。

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