組織づくり・人材育成

「社会変革型データサイエンティスト」を育成せよ【後編】――真の即戦力とは

記事内容の要約

  • 「医療・ヘルスケアデータサイエンティスト育成プログラム」は、医学をはじめとする各分野のスペシャリストが参画して策定された
  • プログラム受講者を即戦力人材として育てつつ、いずれは企業のマネジメント層にも受講してもらうことで、会社組織を変革できるような人材を輩出していきたいと考えている
  • デロイト トーマツは、このプログラム開発を通じて得た成果を公開し、社会全体の変革を促進するための人材育成に貢献したいと考えている
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医療・創薬領域のデータ活用を進めるために、デロイト トーマツ グループは「医療・ヘルスケア分野に特化したデータサイエンティスト」の育成プログラム開発を進めている。それは、京都大学との共同研究講座で社会実装まで行うものだ。講師も務めるデロイト トーマツ グループの担当者に、具体的にどのようなプログラムを展開していくのか、話を聞いた。

京都大学との共同研究による育成プログラム開発

京都大学とデロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)は、共同研究として「社会変革型医療・ヘルスケアデータサイエンティスト育成プログラム」の開発を進めている。研究期間は2018年4月1日からの3年間。2018年10月からの半年間で、試行講座を実施してカリキュラムや指導内容の精査をした後に、2019年内に京都大学大学院生、他大学学生、社会人らを対象とした本講座を開設することを予定している。

このプログラムの特徴は、履修後にデータサイエンティストとして何をしたいかという目標を受講者に設定させて、それに応じた基礎・必修・選択・実習の各カリキュラムが配置されていることだ。

カリキュラムは3つの分野にわたって組まれている。1つ目は「経営・社会変革分野」で、デロイトの戦略コンサルティング部隊「モニター デロイト」のライフサイエンス・ヘルスケア領域における戦略策定・組織変革のコンサルティング経験に基づいたマネジメント教育だ。2つ目の「医学・生命科学分野」では、京都大学大学院の医療ビッグデータや創薬AIを活用し、同大学医学部附属病院の医療データを用いた医療データサイエンスの実習や臨床研究を行うことを計画している。そして3つ目の「情報・データサイエンス分野」では、デロイト トーマツと京都大学の教員によってデータアナリティクスのための基礎力強化が図られる。


カリキュラムとユースケースのイメージ

即戦力となる人材を育てたい

「プログラム策定にあたって、京都大学医学部の先生方をはじめ、数多くの各分野のスペシャリストに加わっていただきました。それぞれの専門領域内では完結できなかった研究も、このプログラムを通じて各分野とつながることで、実施できるようになるかもしれない――そんな期待もあって、参画する先生も徐々に増えています」と、モニター デロイトのライフサイエンス&ヘルスケア シニアマネジャーを務める柳本岳史氏は語る。


モニター デロイト ライフサイエンス&ヘルスケア シニアマネージャー 柳本岳史氏

京都大学という教育機関のなかに本プログラムが開設されることで、学生たちの即戦力化に期待できると柳本氏は語る。

「大学時代に学んだことが社会に出てからは通用せず、またイチから学ぶことになるというのはあまりにももったいない話です。これからの企業に求められる人材を考えると、今回のプログラムに接した学生には、即戦力として巣立ってほしいと思います。

そして、自分たちの力で、医療・創薬そのもの、ひいては社会を変えていける人材になってほしい。社会人も本プログラムの対象なので、企業の経営企画部員やマネジメント層にも受講してもらって、会社組織を大きく変革できるような人材を輩出していきたいですね」(柳本氏)

社会変革のために知見は独占しない

デロイトアナリティクス シニアマネジャーの泉晃氏もこう話す。

「医療における治療・投薬を例にとると、『この症例であれば、一般的にはこの手法をとるべきだ』といった具合の全体最適の方法だけではなく、目の前にいる患者さんのパーソナリティーや体調、状態を含めて、個別化された適切な解決方法を医療従事者自らが選択できるようになる。これは医療だけでなく創薬や介護でも同じことですが、医療従事者の方が、自らが身を投じる現場でデータの力を使って“目の前の人”を救えるようになる、それが医療従事者の方がデータサイエンスを学ぶ一つの価値になるのではないかと考えています」(泉氏)


デロイトアナリティクス シニアマネジャー 泉晃氏

現状、この育成プログラムは2019年中の本講座開設に向けてトライアルを続けている段階だが、「このプロジェクトは講座開設が目的ではありません。あくまでプログラムの研究・開発が目的です」と柳本氏は話す。それは、どのような意味なのか。

「私たちは、このプログラム開発で得た知見を独占するつもりはありません。知的財産面の課題などはありますが、なるべくほかの教育機関へオープンに共有していきたいと思っています。総合プロフェッショナルファームである私たちの役割は、社会全体に働きかけて変革を促進すること。今回の人材育成の目的が『社会変革の促進』にあると言っても過言ではありません」(柳本氏)

データの重要性はすでに世間に浸透し、データサイエンティストの育成も進みつつあるが、明確な目的をもってデータを活用できている組織は多いとはいえない。社会の課題に対し、本質的な解決策を講じるデータサイエンティストを育成しようというデロイト トーマツの取り組みは、医療を通じて日本の社会を変えるための重要な一歩と言えるだろう。

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プロフィール

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 モニタ- デロイト | ストラテジー ライフサイエンス&ヘルスケア シニアマネジャー 柳本 岳史氏

ヘルスケア業界全般において、全社戦略、ビジネスモデルイノベーション/創薬イノベーションなど、企業の変革を幅広く支援している。近年は、政府やAMEDなどの公的機関、業界団体などの産官学連携活動や業界全体への支援・働きかけを通じ医療・社会変革の実現に努めている。

有限責任監査法人トーマツ デロイトアナリティクス シニアマネジャー 泉 晃氏

アナリティクス関連技術のR&Dとコンサルティングを担当。主に医療、製薬、介護分野などで、人工知能やIoTといった先端技術の導入を実務的に支援。全社的なデータ活用戦略、組織立ち上げの支援なども行う。またデータプラットフォーム化の実現による新たな価値創出にも取り組む。

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