Dの視点

電通発表「日本の広告費」から読み取れるものとは

  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

2019年2月、電通から「2018年 日本の広告費」が発表された。毎年2月に発表され、「広告業界で見ない人はいない」といっても過言ではない、広告業界の風物詩とも言える調査である。

ところでみなさんは、そんな「日本の広告費」の何を中心に見ているだろうか。

・総広告費は前年比102.2%の6兆5,300億円だった
・そのなかでもインターネット広告は、前年比116.5%の1兆7,589億円だった
・2018年もインターネット広告費は、日本の広告費全体の伸びを大きく上回って成長している

といったように、総広告費や前年比の数値にフォーカスすることが多いのではないだろうか。しかし、ここでは毎年発表される「日本の広告費」の見方として、別の視点をご紹介したい。

インターネット広告にシェアを奪われている媒体は何か

ひとつの例として、「インターネット広告にシェアを奪われている媒体は何か」という点を取り上げる。そのため「景気動向の影響を受ける」、「国内総生産(GDP)と相関する」などといわれる年間の総広告費の推移ではなく、インターネットとそれ以外の広告媒体のシェアの変化に注目していく。

電通が発表する「日本の広告費」の中で、媒体別広告費は「マスコミ四媒体広告費」「インターネット広告費」「プロモーションメディア広告費」の3つに大別している(図1)。


図1. 媒体別広告費(2018年)

この分類で広告費の内訳の推移を見ると、図2のようになる。


図2

図2より、「マスコミ四媒体広告費」と「プロモーションメディア広告費」がシェアを縮小しているのに対して、「インターネット広告費」がシェアを拡大する構造になっている。

これに対して、視点を少し変えて各媒体を分類してみたのが図3だ。広告やコンテンツを載せる「伝達手段」で媒体を分類し、「電波メディア」「掲出メディア」「インターネット」「紙配布メディア」の4つに大別した。


図3

これらの分類で広告費の内訳の推移を見ると、図4のようになった。


図4

こうしてみると、「電波メディア」と「掲出メディア」のシェアは横ばいの一方で、「紙配布メディア」のみが大きくシェアを下げていることがわかる。

図2では「マスコミ四媒体広告費」が減少し続けていることから、テレビなどの「電波メディア」もシェアを下げているように見えるのだが、実はそんなことはない。むしろ、過去10年以上にわたって大きくシェアを下げているのは、「紙配布メディア」なのである。

これは「日本の広告費」を、以下の点に着目したことで得た気づきだった:

・インターネット広告市場はどのように拡大しているか?
・インターネット広告と逆行して「シェアが下がっているメディア」はどれか?
・インターネット広告が拡大しても「シェアを維持しているメディア」はどれか?

そしてこの気づきからは、以下のような仮説が立てられる:

・掲出メディアのシェアが下がらないのは、位置情報・空間というインターネットには代替不可能な側面があるからではないか?
・電波メディアのシェアが下がらないのは、テレビ離れが叫ばれる今でも、リーチやコストパフォーマンスの面で、広告主からの根強い支持があるからではないか?

さらに、掲出メディアや電波メディアに代わってインターネットが提供できる価値について議論を重ねることもできる。

求められるのは、立場や目的の違いに応じた視点

ここで述べたいのは、当然ながら図3の分類と図1の分類のどちらがよいかということではない。羅列された数字をそのまま見るのではなく、立場の違いや目的に応じて視点を変えるべきだ、ということである。

毎年、「日本の広告費」では各媒体の細かな商品区分や広告主の業種ごとの傾向だけでなく、利用方法などの定性的な情報まで言及されている。調査にはたくさんの人が関わっていて、膨大な手間がかかっていることは想像に難くない。そのような調査の背景にある複雑な状況を、“単なる数値の暗記”で終わらせていては、本当の意味で仕事に役立てることはできないのではないか。

スジの良い切り口で、より深く日本の広告市場を理解するためには、調査を見る側にも柔軟な視点が求められると思うのだ。

プロフィール

深谷 太一(フカヤ タイチ)

2011年、ヤフー株式会社に新卒入社。2013年からリサーチアナリシス部にてデータ分析を通した広告販売施策の企画・評価を担当。その後、広告営業として大手ECクライアントほか数社を担当し、データを活用したマーケティングコンサルティングに従事した後、現在は経営企画部にて広告事業全体の分析・評価や市場調査等を担当。

  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

Insight for Dの
ページにいいねしよう!

「いいね!」してInsight for Dの最新情報をチェック

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Insight for Dの公式Facebookページ、Twitterでも最新情報や取材の様子を発信中。