組織づくり・人材育成

正義のホワイトハッカーを育成する! 玉塚元一氏の狙い

記事内容の要約

  • デジタルハーツには、ソフトウェアのバグや脆弱(ぜいじゃく)性を見つけるテスターが多数在籍しており、そのなかには高い素養を持つ者も少なくない
  • セキュリティ業務経験者の事業への参画により、そのスキルや考え方を優秀なテスターたちが習得し、ホワイトハッカーへと成長することが期待されている
  • デジタルハーツは、5Gの実装に伴ってさらに高まると予想されるセキュリティへのニーズに応えることで、安全にデジタルを利用できる環境づくりに貢献しようとしている
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この記事の前編を読む

小売業界からIT業界へと身を転じた玉塚元一氏は、ゲームソフトのデバッグやエンタープライズシステムのテスト、セキュリティ対策を主な事業とするデジタルハーツグループの経営者として、現状を同社の第二創業期と位置づけ、企業の変革に取り組んでいる。第二創業における目標の1つは、エンタープライズ領域でのセキュリティ対策に長けたホワイトハッカー集団を育成し、セキュリティ分野における有能な人材を輩出していくことだ。

玉塚氏は、現在の柱であるゲームのデバッグ事業を土台に、同社をどのようにしてエンタープライズ領域でのセキュリティ支援企業へと変貌させようとしているのか。玉塚氏が、変革の現状とセキュリティ市場の展望について語った。

ゲームのテストやバグチェックで得たノウハウを生かす

デジタルハーツグループは創業から18年、ゲームのデバッグ事業で成長してきました。デバッグというのは、開発中のゲームを実際にプレイして不備や問題点を発見し、メーカーにフィードバックする仕事です。

ゲームのプラットフォームは、据え置き型や携帯型、スマートフォンまで多数あります。しかも各ゲームにはさまざまなシナリオがあり、課金の要素が加わることもあります。非常に複雑かつ厳密性も求められるため、バグや脆弱性の発見といった品質チェックは、根気のいる非常に困難な作業です。加えて守秘性が高いため、機密が保持できる特別な施設で作業を進める必要もあります。

当社では現在、この業務のために全国14拠点に「ラボ」を持ち、そこでは約8千人の登録テスターが仕事をしています。この人材が当社の強みの1つで、ゲーム業界ではそれなりのシェアを持ち、評価もいただいています。

一方、ゲーム業界以外に目を転じてみると、近年はIoTなどの市場拡大でさまざまなシステムやデバイスが増えています。当然これらにもデバッグは必要です。実際、世の中のソフトウェア開発では、多くのコストがデバッグのために費やされています。しかし、日本はこの分野で圧倒的に人材が不足しています。そこで、当社がこれまで培ってきたデバッグ事業の人材やノウハウを生かせるのではないかと考えました。


株式会社 デジタルハーツ ホールディングス 代表取締役 CEO
株式会社 デジタルハーツ 代表取締役 玉塚元一氏

企業セキュリティを担える人材を育成

当社のテスターのなかには、デジタルの領域で非常に高い資質を持つ者もいます。そこで彼らに研修とOJTを行ってスキルを身につけてもらい、ゲーム以外の分野のテストや脆弱性診断も担当できるように育てています。テストの分野では、テストエンジニアの育成に強みを持つ企業とのアライアンスにより教育プログラムを整備したり、セキュリティの分野では、「DHサイバーセキュリティブートキャンプ」と銘打った人材教育プロジェクトを通じ、資質ありと見込んだ人材を育成・戦⼒化しようという取り組みを進めています。

入り口がゲームのデバッグであっても、成長意欲のある人には、しっかりと個々人に応じたタレントマネジメントをしてトレーニングの機会も与えます。自分の能力を開花させて仕事の幅を広げてもらいたいと考えています。

2018年8月、テスターたちの成長意欲を高める一環として、彼らに「JSTQB認定テスト技術者資格」(*1)という認定試験にチャレンジしてもらいました。JSTQBとは、世界110カ国以上で展開される国際的なソフトウェアテストの資格認定団体「ISTQB(International Software Testing Qualifications Board)」の日本における名称です。

結果として、テスターをはじめとする多くのメンバーが合格し、当社グループ全体で、「Foundation Level」という基礎レベルの資格保有者325人、「Advanced Level」という上級レベルの資格保有者8名となりました。これは日本企業としては画期的な人数で、当社はいきなり日本最大級の資格取得者数の企業になったのです。そのおかげでISTQBの認定するPlatinum Partnerにも選ばれました。これは日本で現在5社しか存在しません。

また、セキュリティの分野では、ホワイトハッカーとして本当に活躍できる人材を育てるというのは、簡単なことではありません。現在、セキュリティ事業を推進するための人材は10人ほどいます。外部から招いたセキュリティのプロフェッショナルに社内の人間を育ててもらいながら、新規事業として拡大させることを目指しています。

ホワイトハッカーをどう育成していくか

当社のスローガンは「SAVE the DIGITAL WORLD」です。ゲームのデバッグにしてもエンタープライズシステムのテストやセキュリティの仕事にしても、私たちはクライアントのサービスや商品を裏側から支えて、誰もが安心・安全にサービス・商品を利用できるよう支援する、いわば黒衣(くろご)のような存在だと思っています。ゲームの領域ではすでに十分、黒衣の役割を果たしているので、それをゲーム以外の領域でも確立していきます。特に、企業の情報資産を守るためのセキュリティ対策は重要であり、そこで必要となるのがホワイトハッカーなのです。

ホワイトハッカーには、脆弱性を発見するための高度なスキルが必要なだけでなく、倫理観や道徳心も要求されます。テスターが業務を行うラボの壁には、当社の経営理念とともに社名の由来であるデジタルハーツの「6つの心」というものが貼られていますが、その1つ目は「いかなるときも『正義の心』を貫き通します」というもの。まさに、ホワイトハッカーに一番必要とされるものです。


ラボでデバッグに取り組むテスターたち

では「正義の心」をどう教育するのか。これは難しいことですが、やはり育成される者にとって目標となるべき指導者の役割が大きいと考えています。そのためにも外部から豊富な知見を持つ経験者に参画してもらうことは非常に重要で、ホワイトハッカーとなる候補者には、OJTを通じて、スキルや考え方、倫理観といった必要な要素を身につけてもらうようにしています。

2020年に本格始動する5G(*2)をきっかけに、ソフトウェアの品質維持や機能不全への対処、セキュリティ対策へのニーズは、今よりもいっそう高まるでしょう。企業のデジタルトランスフォーメーションの流れは止めることはできません。企業も個人もすべてがつながる世界では、1つの脆弱性が全体に多大な影響を与えることになります。そのような事態を未然に防ぐ、あるいは的確な危機管理を遂行できる人材の重要性は、必ず高まってきます。当社で「正義の心」を持ったホワイトハッカーを多数育成し、安全にデジタルを活用できる環境づくりに貢献したい。それが私の実現していきたいことの1つなのです。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)JSTQB認定テスト技術者資格(外部サイト)
(*2)第5世代移動通信システム。毎秒10GBという超高速通信と1平方キロメートル当たり100万台以上のデバイスの同時接続が可能となり、本格的なIoT時代の到来が期待される。日本では2020年の実用化を目指して準備が進められている。

プロフィール

株式会社 デジタルハーツ ホールディングス 代表取締役 CEO 株式会社 デジタルハーツ 代表取締役 玉塚 元一氏

大学卒業後、旭硝子株式会社(現:AGC株式会社)へ入社。日本アイ・ビー・エム株式会社を経て、1998年に株式会社ファーストリテイリングへ入社。2002年、同社の代表取締役社長に就任。2005年事業再生や経営支援を行う株式会社リヴァンプを設立し代表取締役に就任。2014年に株式会社ローソンの代表取締役社長に就任。2017年6月から現職。

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